2021.01.01お知らせ

年頭所感

 2021年の新春を迎えるに当たり、大きな転換期を迎える我が国の金融業界について、日頃の所感の一端を申し述べ、年頭のご挨拶に代えさせていただきます。

 弊社・日本資産運用基盤グループは、「金融ビジネスの最適化」をミッションに掲げ、金融業界が抱える非効率性を解決するための事業プラットフォームの運営を行っていますが、昨年は金融業界が各所で大きな転換期を迎え、これまで長年にわたって水面下に潜んでいた様々な非効率性が顕わになった1年であったように感じています。

 まず、証券・資産運用業界においては、株式売買委託等手数料や投資信託の信託報酬の無料化の動きが進み、従来型のリテール金融事業モデルがもはや終焉を迎えつつあることが明らかになりました。情報通信技術や金融技術の発達を背景に、サービス付加価値が既にコモディティ化してしまっていたところ、このような状況は避けられなかったとも言えます。

 しかし、リテール金融機関の多くは、このような事業環境の変化に対して、柔軟にその事業モデルを転換することに苦心しているように見受けられます。既存事業モデルを簡単に捨てられないことに加え、新たな事業モデルに必要なリソースをすべて自前で揃えることを尊ぶという旧来の価値観が変化の妨げとなっているように思われます。

 また、地域銀行を巡っても、人口減少や低金利環境の継続等を背景に、合併・経営統合等の「再編」に関する思惑は従来から活発でしたが、菅新政権の政策方針を受け、改めてその問題意識が業界全体として強まったように感じます。

 ただ、地域銀行の「再編」については、単に地域銀行同士が合併・経営統合等を行なう「再編A」のみならず、他の金融業態とお互いの強みを活かして連携するような「再編B」も同時に進みつつあります。地域銀行が抱える非効率性は、同じ地域銀行との連携のみでは解決できないという認識の拡がりが背景にあると思われ、この「再編B」の動きは今後も更に広がっていくことが予想されます。

 「国際金融都市・東京」構想に関する取り組みも新たな局面を迎えました。過去数年にわたって東京都が主導する形で進められてきた同構想ですが、こちらも菅新政権の政策方針を受け、日本全体として取り組むべき課題へと新たに位置づけられることになりました。

 税制改正や海外人材の招致促進等の諸施策が盛んに論じられていますが、より根本的な問題は、日本の金融業界の非効率的な事業構造ゆえ、他のアジア諸国に比べ、資産運用会社等の事業運営コストの負担が大きく、更には、新興・海外資産運用会社が機関投資家等からの資金運用を受託する障壁が高く、事業利潤の獲得と成長が見込めないことにあると考えています。この非効率性の解消なくしては、多様な金融機関や専門人材等が活発に活動する国際金融都市構想の実現はあり得ません。

 今年2021年は、金融業界が抱えるこうした非効率性が、より具体的な問題として金融機関の経営を阻んでいく状況になることを予想しています。金融機関は、証券会社や資産運用会社、地域銀行等の業態に関係なく、新たな付加価値を創出し、事業生産性を高めるために、根本的な事業モデルの改革に取り組むことから逃れられない1年となるでしょう。既存の金融機関の統廃合を含め、業界地図を塗り替える大きな再編が進むことを予想しています。

 弊社は、引き続き金融業界の事業プラットフォームとして、非効率性を克服し、事業モデルの改革に取り組む金融機関に対して、ソリューションを提供してまいりたいと思います。本年も何卒一層のご支援、ご指導を賜りますようお願い申し上げます。

2021年1月1日

株式会社日本資産運用基盤グループ 

代表取締役社長   大原啓一