2018.10.04インタビュー

金融業界が抱える構造問題。でも、それを乗り越えた先にもっと創造的な世界がある・後編

日本資産運用基盤株式会社は、高度金融専門性や事業運営ソリューションを提供することで、金融サービスやビジネスのイノベーションを促進することを目指しています。「ワクワクする金融事業のサポートから、専門人材やパートナー企業の輪がさらに広がるような好循環を生み出したい」と代表取締役社長の大原啓一は語ります。

金融専門人材にとっても魅力的な就業インフラでありたい

▲ 日本資産運用基盤はイノベーション発信地である金融コミュニティオフィスFinGATE BASEに入居しています

「金融業界の構造的問題。 でも、それを乗り越えた先にはもっと創造的な世界がある・前編」はこちら
「中編」はこちら

すべての金融事業者にとっての“事業運営インフラ”となることを目指す日本資産運用基盤のコアバリューは、所属する金融専門人材が持つさまざまな高度金融専門性であり、それに基づいてパートナー企業とともに創出するソリューションにあります。

大原    「高度な金融専門性を持った人材にとっても、魅力的な “就業インフラ ”でありたいと考えています。

『自分はこの分野で高い専門性を持っている』と自覚している専門人材は、もちろん報酬なども重要だとは思いますが、それよりもワクワクするサービスやビジネスに携わり、そこで自らの専門性を最大限に発揮できるかどうかを重要視しているように感じています。

ワクワク案件に自らの専門性を発揮できる点に魅力を感じ、さまざまな金融専門人材が業界のあらゆる分野から当社に集まってきています」

また、業種を問わず今後さらに多様な働き方が広がっていくと思われる中、高度金融専門性の確保やその発揮には柔軟な就業形態が欠かせないと私たちは考えています。

大原    「これまで金融業界での専門人材の働き方といえば正社員であることが普通であり、それ以外の働き方は選択肢にもなかったように思います。

ただ、これからはそうではありません。金融業界でもいろいろな働き方が増えてくると予想される中、できる限り柔軟な就業形態を許容することが、金融専門性の確保にもつながりますし、さらにはその専門性を高めること、最大限発揮することにもなります。

雇用契約に基づく正社員、業務委託契約に基づく契約社員、あるいは独立・開業した後、弊社とパートナー企業契約を結んでいただき、ご自身の専門性を発揮していただくのでも良いと考えています。

最終的にユーザーである金融事業者にとっても有益となるよう、金融専門人材にとっても魅力的な “就業インフラ ”であること、そしてそこから好循環を生み出していくことを目指しています」

外部の知見を最大限に活かしたソリューションの提供

高度金融専門性に基づいて開発・提供する事業運営ソリューションも日本資産運用基盤のコアバリューのひとつです。そこには外部パートナー企業との柔軟な連携が欠かせません。

大原    「これも、弊社の柔軟性を重視したスタンスの表れなんですが、まず外部に知見や効率的な機能があれば、それを積極的に活用します。

たとえばシステム開発をする場合は、自分のところでイチから開発するのではなく、すでにノウハウを持っている外部のシステム会社と連携を図り、金融機関が必要とするものを開発していきます。

そして、利用する事業者にとっても、付加価値を提供するパートナー企業にとっても、より魅力的なインフラになるため、開発したものを自分のところで独占するのではなく、オープンにして、誰もが使えるものにしていきたいと考えています」

外部との連携は、システムだけではありません。その他、「個人役務」「法人役務」「投資運用」「経営管理」「人事・組織」といった面も含め、ユーザーである金融事業者が必要とする事業運営リソースを十分に提供するため、所属する人材が持つ高度金融専門性に加え、外部企業でそれらのノウハウを持っているところとパートナー関係を結んで、さまざまな形でソリューションを提供していくのです。

大原    「たとえば、わが国では全国的にこれから信託機能に対するニーズが高まっていくはずです。

高齢化した親からの事業承継や相続など、信託機能を用いることで相続人や被相続人などの関係者の目的達成や利害調整がスムーズに進むにもかかわらず、地方には信託銀行、あるいは信託会社の拠点がほとんどありません。

まさに金融の高度専門性が偏在しているんです。そこで私どもが、信託会社などとパートナー関係を結び、信託専門人材や支援ツールなどを通じた信託機能を地域金融機関に提供することはひとつのソリューションになりうると考えます。

これはあくまでも一例で、他にも大手保険代理店やFP(ファイナンシャルプランナー)ネットワークなどとパートナー契約を結び、地域金融機関などの顧客対面接点に対し、総合的な資産運用の専門性や必要なツールなどを提供するインフラを構築することも可能になるでしょう」

金融専門人材もソリューションも根底にあるのは「オープン」であること

▲オフィスには会社の枠を越えた交流を促す仕掛けが用意されている

専門性を提供する金融専門人材に関する考え方と同様に、ともにソリューションを開発・提供するパートナー企業にとっても、私たちは魅力的な“付加価値提供インフラ”でありたいと考えています。

大原    「ユニークな付加価値や強みを持った非金融事業者とも、パートナーとしていろいろな取り組みを手掛けられればと思っています。

たとえば、これまで金融サービスは手掛けたことがないシステム会社であっても、他にはない技術や強みがあり、それを金融事業分野にも提供してみたいと思っていらっしゃるところは少なからずあると思います。

一方、それをサービス化、事業化するための金融専門性が社内や周囲には存在しないため、断念してしまっている。そんな事業者にとって使い勝手がいいインフラや触媒になれればと考えています。

システム会社に限らず、広告でも、マーケティングでも、ジャンルは何でも良いんですが、非金融部門で、特定のビジネス領域で高い実績を上げているところと、私たちのように高度な金融専門性を持った集団がお互いに手を組んだら、新しいソリューションが生み出せるのではないかと考えています」

もちろん、そうした事業運営ソリューションを提供するに際しても、重要なのは「オープン」であることだと、私たちは考えます。

大原    「これは、本当に自前主義の弊害としか言いようがないのですが、たとえばモバイルアプリの開発ひとつとっても、金融機関は自分のところの独自性を前面に打ち出したがります。

でも、よく考えてみて下さい。金融サービスに独自性はあるのでしょうか。メガバンクと地方銀行と比べたとき、モバイルアプリを通じて提供される金融サービスの内容に、大きな差別化要因があるとはとても思えません。

身もふたもない言い方になりますが、モバイルアプリを通じて活用する主な機能といえば、預金などの各種金融商品の残高や履歴確認と振込・振替、くらいのものでしょう。そう考えると、個別行が独自のモバイルアプリを、かなりの額の投資を行なって開発する意味は、ほとんどありません。

重要なのは、本当に付加価値を創出すべき顧客接点をいかにデザインするか、どんな関係性をお客様と今後築いていくのかに注力することであり、モバイルアプリなどはそのためのひとつのツールに過ぎません」

金融サービスに携わるすべての事業者が、その強みとする付加価値に注力できるよう、必要な金融専門性や事業ソリューションはオープンに誰でも同じように利用することができるというのが重要であり、それが専門人材にとっても、パートナー企業にとっても、より魅力的な“インフラ”になるために不可欠だと私たちは考えています。

金融事業のインフラとしてワクワクの好循環を生み出していく

金融事業者にとって有益な“事業運営インフラ”であるとともに、金融専門人材にとっての魅力的な“就業インフラ”であることやパートナー企業にとっての“付加価値提供インフラ”であることを目指す日本資産運用基盤。具体的には今後どのようにその金融事業支援プラットフォームを構築・発展させていくのでしょうか。

大原    「思い描いている通りにこのプラットフォームを運営していくためには、ユーザーである金融事業者や高度専門性提供者として所属する金融専門人材、パートナー企業などのすべてのステークホルダーにとって有益かつ魅力的である必要があり、決して簡単なことではありません。

一方、金融専門性の提供やパートナー企業とのソリューションの提供を通じ、ワクワクする金融ビジネスを実現できたら、その実績や評判が金融専門人材やパートナー企業の注目を集め、さらにワクワクする案件の実現が可能となるという好循環が期待できます。

金融業界の構造的問題を克服し、私たちの社会や生活をより創造的にするため、この好循環を生み出していきたいと考えています」

従来の店舗を持つ金融機関やネット銀行、オンライン証券のように、金融サービスの利用者の目に直接触れる存在ではありませんが、日本資産運用基盤は、金融サービスに携わるすべての事業者やパートナー企業、専門人材にとっての、インフラとして、触媒として、日本の金融イノベーションを支える重要な役割を担ってまいります。