2019.02.01インタビュー

地域金融機関の強みを生かした 個人資産運用ビジネスへの取り組み

「金融業界の最適化」をミッションとし、金融専門人材(ヒト)やその他事業運営リソース(モノ)の最適配置を通じ、金融業界の構造的問題の解決を目指す日本資産運用基盤。投資運用や地域金融のプロフェッショナルであるディレクターの小松が、地域金融機関の資産運用ビジネスの課題やその先にある成長可能性を語ります。

経験がモノを言う 課題解決を可能にする日本資産運用基盤の専門人材

▲金融マーケットの動きは毎朝欠かさずチェック。日本資産運用基盤のコンサルタントになってからも変わらない習慣

金融機関コンサルティング部ディレクターの小松正宏は、複数の金融機関、資産運用会社を経て、日本資産運用基盤に入社しました。

日本国債のトレーディング業務、自己資金運用、投資信託の商品企画、公募投信営業など、関わってきた金融ビジネスは多岐に渡りますが、キャリアの中心は「投資運用」です。

資産運用ビジネスにたずさわった長年の経験があるからこそ、日本資産運用基盤を舞台にして、何ができるのかが見えているのです。

小松    「いわゆる長信銀系金融機関で、地域銀行相手に日本国債を販売するトレーディング業務を経験した後、系統中央機関で自己資金運用を担当しました。それからふたつの資産運用会社で商品企画や機関投資家向け営業、公募投資信託の販売金融機関向け営業に従事してきました。

このように自己資金の運用、機関投資家や個人投資家に対する運用商品の企画・提案まで、資産運用ビジネスを通じてさまざまな投資家や金融機関とのやり取りを積み重ねた経験から、今の地域金融機関が本気で注力するべき事業は何なのか、それに注力できない事情がある一方で、われわれが協力できることがあるとしたら、それは何なのかが見えてきました。

それを、地域金融機関の経営・事業支援に生かしたいと思います」

日本資産運用基盤は、小松のように現場での経験を豊富に持っているプロフェッショナルがコンサルタントとなり、それぞれの専門性や経験をフルに生かしてノウハウを提供するからこそ、地域金融機関にとって本当に必要とされる課題解決を可能とするのです。

地域金融機関の資産運用ビジネスの活路を考える 情報不足と頻繁な異動の壁

地域金融機関と称される金融機関の数がどのくらいかご存知でしょうか。2018年12月時点において地方銀行、第二地方銀行、信用金庫、信用組合の合計が511です。ちなみに5年前の2013年12月時点の数字が529ですから、この5年間で18減ったことになります。

地方経済が年々縮小していくなかで、当然のことですが、地域金融機関の経営環境も厳しくなっています。はたして、地域金融機関に活路はあるのでしょうか。

地域金融機関の資産運用ビジネスにはふたつの軸があります。ひとつは自己資金運用であり、もうひとつはお客様向けに提供している資産運用商品です。そして、これらふたつに対して、日本資産運用基盤はいくつかの問題意識を持っています。

小松    「地域金融機関の資産運用ビジネスについては、特にふたつの問題が深刻だと考えています。まず、情報の非対称性です。

たとえば地域金融機関が自己資金を運用しようとした場合、まず運用に用いる商品を提供する資産運用会社を選定します。しかし、地方に所在する中小の地域金融機関は、資産運用会社を選べるだけの十分な情報を持っておらず、資産運用会社からの提案も限られているのが実情です。

結局、地方でも積極的な営業活動を展開する一部の大手証券会社、メガバンク系列の運用会社が自社の運用商品を提供するわけですが、地域金融機関からすれば極端に選択肢が限られてしまいます」

小松は、人事に関しても問題意識をいだいています。

小松    「地域金融機関が個人向け資産運用ビジネスを展開するうえで大事なことのひとつは、取扱商品の選定と管理です。しかし、金融機関は人事異動が頻繁なので、ひとつのセクションを10年単位で担当する人がいません。

それはつまり、プロフェッショナルが育たないということです。しかも、投資信託の商品採用・管理担当業務は、銀行の本業である融資業務等と比較するとその仕事を長く続けたがらないのが正直なところだと思います。

資産運用会社からプロフェッショナルを出向者として受け入れている金融機関も一部にはあると聞いてます。しかし、あくまでも出向ですと継続性がなかったり、どうしても自社商品に対するバイアスがかかったりしてしまう傾向は否めないと思います。

結果、お客様に提供する商品ラインナップに偏りが生じる可能性があります」

専門性の偏在・情報の非対称性から生じる問題にソリューションを

▲代表の大原啓一との関係は、以前勤めていた日系大手資産運用会社時代から約15年にもなる

日本資産運用基盤は、アドバイザーもしくはゲートキーパーになることで、地域金融機関の自己資金運用及び個人向け資産運用ビジネスが抱える課題にソリューションを提示します。

地域金融機関が自己資金運用をおこなうにあたって大事なのは、自己資金運用事業の位置づけを明確にし、事業戦略に応じた最適な運用計画と全天候型のポートフォリオをきちんと組んで運用することです。ところが実際はそうなっていません。

なぜなら、そこで必要となる投資運用の専門性や商品情報が不足しているからです。結果、場当たり的な、相場を追いかけるような運用をしていたり、お付き合いの深い資産運用会社の言うことだけを聞いて投資していたりするケースが多々見受けられます。

まさに情報の非対称性や専門性の偏在による弊害です。

小松    「われわれ、日本資産運用基盤がアドバイザーもしくはゲートキーパーになれば、専門性の偏在や情報の非対称性によって生じる諸問題を解決できます。

たとえば、東京を拠点にしているさまざまな資産運用会社の情報をわれわれが収集し、それを地域金融機関に効率よく共有すれば、より幅広い選択肢からパートナーとなる運用会社を選べるようになるはずです。

また地域金融機関が個人に販売する資産運用商品についても、われわれが各資産運用会社にヒアリングをし、個人の資産運用に適していると思われる投資信託・保険商品の情報を提供すれば、商品ラインナップに偏りが生じるという問題も解決できるでしょう」

課題解決に向けて、ヒトとモノの提供方法をアップデート

日本の金融機関には、すべての業務、機能を自前で揃えようとするあまり、業務が非効率になり、競争力が後退してしまうという問題があります。

日本資産運用基盤は、同社に所属する金融プロフェッショナルが持つ知見を、コンサルティングや人材派遣として地域金融機関に提供し、その分、地域金融機関が本業に専念できる環境を築くお手伝いをします。

小松    「地域金融機関の一番の強みは、地元に根差した信頼関係やブランドに基づき、企業・個人のお客様に対面でさまざまな提案ができることにあります。

リスク管理やマネロン対策、システム構築、さらに言えばお客様に提供する資産運用商品の選定など、そうした強みに直結しない分野については、積極的に外部のプラットホームに任せ、対面のコンサルティング営業などに注力して差別化を図っていく。これがこれからの地域金融機関のあるべき姿でしょう。

たとえば個人を対象にした資産運用ビジネスでは、個人に販売する資産運用商品の選定よりも、個々のお客様がどういう人生ゴールを設定していて、それを達成するために、どういう資産形成のプランを立てるかをコンサルティングする。これは、お客様と対面で接する地域金融機関だからこそできる仕事です。

ただ、現時点においては、あまりにも雑多な業務をおこなっているあまり、その強みを発揮できていません。そこで私たちは地域金融機関を対象にして、個人のお客様にコンサルティング営業をおこなう際に必要とされるノウハウを提供するための教育研修も、おこなっていきたいと考えています」

また、各種課題の解決に向けて、各種高度専門性の提供というヒトの切り口だけでなく、今後はモノの提供にも力を入れていく方針です。

小松    「モノとは地域金融機関が強みに集中するためのシステムやアプリケーション等の事業運営リソースのことです。

たとえば、多くの地域銀行が保険商品をお客様に販売・提供しているものの、実は保険商品販売管理システムが整備されておらず、販売した後にお客様が保有する保険契約がどうなっているのかを把握するための情報基盤を持ち合わせていません。

従って、個人のお客様の資産計画をサポートする立場にありながら、実際にお客様が保有する保険契約がどうなっているのか、その都度お客様に尋ねなければならないというおかしな状況が発生しているのが実情です。

こうした状況に対し、各地域金融機関が個人資産運用ビジネスに注力し、付加価値を提供することができるよう、パートナー企業と連携して様々なシステムやアプリケーション等の事業運営リソースを開発したり、提供したりしたいと考えています」