2020.06.29インタビュー

対談連載【金融ビジネス/最前線の変革者達 No.8】 ほけんの窓口グループ株式会社執行役員営業本部金融アライアンス事業部長 三田隆嗣氏 「お客さまに安心と安全を提供するという理念にそって新たなリテール金融のビジネスモデル創りを推進」

三田隆嗣氏(ほけんの窓口グループ株式会社 執行役員営業本部金融アライアンス事業部長)

聞き手:大原啓一(株式会社日本資産運用基盤グループ 代表取締役社長)

「ほけんの窓口」は、生命保険、損害保険を合わせて40社以上の保険会社が扱っている保険商品を取り扱っている乗合代理店です。また保険ショップも直営店だけでなく、地域銀行を中心とした銀行とのアライアンスも展開しています。今回は、その金融アライアンス事業部を率いている三田隆嗣事業部長を訪ねました。今後、保険代理店としてどのようなビジネス戦略を考えていらっしゃるのか、お話を伺いました。

金融アライアンス事業部設立の経緯

大原  ほけんの窓口というと街にある保険ショップを真っ先にイメージするのですが、それ以外にも保険業界の事業インフラとしての役割を担われているのではないかなどと勝手に思っています。たとえば地域銀行と連携して地方の生活者向けの保険サービスの提供基盤を拡充するとか、システム面で保険業界の事業効率化を進められるとか、非常に幅広いことをされていると思うのですが、そのなかで金融アライアンス事業部はどのような役割を担われているのかということから、教えていただけますか。

三田  来店型の保険ショップが、銀行と提携している店舗も含めて767店舗あります。保険ショップの運営という点ではリーディングカンパニーです。

そして、私が事業部長を務める金融アライアンス事業部は、おもに地域銀行を中心にして全部で25行、84拠点に対して、保険募集の品質向上に関連したさまざまな企画、推進、運営を通じて支援させていただいている部署、ということになります。

大原  この部署が出来たのはいつですか。

三田  もともと部として出来たのが2010年ですね。私がこの会社に入社したのも2010年です。この事業を推進するために、前職からこちらに転職してきました。

大原  前職はどちらにいらっしゃったのですか。

三田  コンサルティング会社です。金融機関の主にリテール戦略面でのお手伝いをしていました。そのコンサルティング会社で所属していた部署が、リテール戦略に関するコンサルティングのなかでほけんの窓口と地域銀行の提携を仕掛けていました。それが縁で、かれこれ10年くらい経ったわけですが、まさか自分がほけんの窓口に転職して、そこで地域銀行との提携などに関わるようになるとは、夢にも思いませんでした。当時は2,3行しか提携先が無くて、部も無かったのですが、徐々に提携先を増やしていこうという話はあったので、新たに部署を作りました。

最初は戦略営業開発部という部署を立ち上げ、金融機関以外の異業種との提携も手掛けておりましたが、その後、徐々に銀行が増え、いよいよ銀行を専門に見る部署として金融アライアンス事業部が立ち上がったのが2015年のことです。

地域銀行とほけんの窓口の提携目的

大原  地域銀行はどういう目的があって、ほけんの窓口との提携を考えたのでしょうか。

三田  地域銀行の目的は資産形成層へのアプローチです。特にリテールに関しては富裕層、準富裕層で年配の方が中心である一方、年齢が若い資産形成層の顧客が少ないと言う問題を抱えていました。この資産形成層を取り込んでいくうえで、保障性保険との親和性が高いと考えられたことに加え、前々からの課題として地域銀行では、ライフプランを中心にしたリテール金融を中期経営計画に盛り込んでいたこともあり、この2つの課題解決を目指して、保障性保険を中心としたリテール戦略を展開しようとしたのです。金融商品のなかで、お客さまがライフプランを共有する必然性が最も高い商品が保障性保険だと考えてます。

ただ当時、銀行が販売していた保険商品は一時払いが中心だったので、保障性保険を販売するためには、どうしてもコンサルティングのノウハウが必要でした。そこで注目したのが、いわゆる来店型保険ショップを運営する乗合代理店だったのです。

すでにこの頃から複数の乗合代理店が、店舗で複数の保障性保険を中心とした募集を行っていたのですが、そのなかで保険募集の経験者、未経験者に関係なく標準化された教育研修を行い、きちんとライフプランを組み立てながら保険の募集を行っていた乗合代理店が、ほけんの窓口でした。

ほけんの窓口は、当時からお客さまの意向を踏まえ複数の商品を比較してお選びいただくマーケットイン型のコンサルティングを行っていて、どのお店のプランナーも同じ品質でそれができるように標準化された教育研修システムを独自開発して持っていたので、保険募集のノウハウを吸収したいと考えていた地域銀行との連携がスムーズに行われました。

大原  一方、ほけんの窓口としては何を目的に地域銀行と協業しようとしたのですか。

三田  当時、ほけんの窓口は一介のベンチャー企業に過ぎませんでした。今でこそ700店舗を超える保険ショップを運営していますが、当時はまだ100店舗前後しかなく、信用度と知名度を上げる必要がありました。この点、地域銀行は地元で高い信用力を持っていたので、そこと協業出来れば、ほけんの窓口のブランド、信用力を向上させられるのではないかという期待がありました。加えて、ほけんの窓口の社員が地域銀行に派遣され、そこで保険募集のノウハウを伝える形になるため、社員自身も銀行というしっかりした組織のなかでさまざまな機会に触れることで、経験値や成長を高めることが出来ます。

大原  地域銀行との提携店舗を運営するにあたって、直営店と違った難しさはありますか。

三田  直営店はまさに私たちの本業ですから、私たちが持っているお客さまへの想い、理念、それを実現するための施策をストレートに表現できます。

これに対して銀行の場合はそれとは違い、あくまでも募集主体である銀行の環境・ルールのなかで、いかにして私たちが持っているノウハウや知見を最大限に生かせるかというところで、カスタマイズする部分が大きくなっていきます。

ただ、アライアンス事業は、双方の価値を共有して新たな価値を創造し、お客さまに提供することが醍醐味だと考えていますので、その生みの苦しみと同時に楽しさを感じていてます。

異業種との提携はどこまで進むのか

大原  ほけんの窓口というと、理念(『お客さまにとって最優の会社』)を非常に重視していらっしゃいますよね。銀行と提携店舗を運営するにあたっては、この理念も一緒に移植すると考えて良いのですか。

三田  銀行の行員の方々には2カ月間、うちの中途採用の社員と一緒に研修を受けていただくのですが、多くの方が理念に共感して下さいます。もともと行員の方々もお客さまの役に立ちたいという意識を強く持っていらっしゃいますから、そこを非常に徹底しているうちの理念に共感される部分が非常に大きいですし、高い評価もいただいております。

大原  地域銀行との提携店舗も、ほけんの窓口の理念に則って運営されているのですか。

三田  そうです。今でいうフィデューシャリー・デューティーを重視した理念を打ち出しているわけですが、これまでの銀行はどうしても商品ありきの部分があったので、理念とのギャップをどう埋めていけばよいのかという点で、銀行の人たちも、ノウハウを提供している私たちも悩む部分は大きかったのですが、最近は少しずつ変わってきて、お客さまに寄り添った形でサービスを提供していかないと支持されなくなるという危機意識みたいなものが、現場に広がってきました。その結果、理念を共有できるようになってきたのは事実です。また、それに伴いお客さまからの感謝も増えていると感じています。

大原  提携先の大半は地域銀行ですが、他の金融機関と提携する可能性はあるのでしょうか。

三田  実はかつて証券会社とアライアンスを組んでいた時期もあったのですが、うまく行きませんでした。当時は日経平均株価が8,000円前後まで下がっている時で、証券会社もいろいろ新しい取り組みをしなければならないという思いが強くなっており、そのなかでアライアンスの話が浮上し提携したのですが、その後、株価が順調に値上がりしてくると、いつの間にかストックよりもフローを追求するスタイルに戻ってしまいました。

ここが銀行と証券会社の違いですね。銀行はもともとストックビジネスであり、そこは保障性保険の募集を中心とするうちのビジネススタイルと同じなのですが、証券会社はフローを重視するカルチャーが濃いので、そこにストックビジネスを導入しようとしても、なかなかうまく行きません。DNAが違うというか、言語が違うという印象を強く受けました。結局、証券会社とのアライアンスは2年程度で終わりました。

大原  そうなると、証券会社出身者のIFA(独立系金融アドバイザー)が保障性の高い保険を販売するのは難しいということかも知れませんね。

三田  肌感覚で申し上げると、少し難しいかも知れませんね。一時払いの貯蓄性保険ならフロービジネスと親和性があるかもしれませんが、保障性はなかなか難しいと思います。ただ、お客さまからすると保険は一つであり、貯蓄性も保障性も一時払いも平準払いも関係ないですね。これは、単なる保険の種類であり、支払い方法であり、完全に売り手側の論理ですね。本来はライフプランに応じて貯蓄性や保障性の必要性を語るべきです。

大原  最近、大手百貨店の高島屋が金融サービスの提供を開始しました。ほけんの窓口が百貨店などと組んで、保険商品の提供を行うことなどもありえますか。

三田  当時、戦略営業開発部があった時代には、異業種も含めてさまざまな展開を検討していました。それこそ百貨店や各種販売店、あるいは結婚関連といった異業種とのアライアンスも検討しましたし、実際提携したケースもあります。私たちはお客さまに安心と安全を提供することをモットーにしていますので、それに則って必要と思われるものがあれば、さまざまな異業種とのアライアンスは、個人的な意見としてこれからも十分に考えられると思います。

大原  逆にほけんの窓口で、投資信託や住宅ローンを取り扱うということは考えられるのでしょうか。

三田  お客さまの要望、意向にそってサービスの中身を作り込んでいますから、そのなかで必要とあれば、投資信託や住宅ローンなどのラインナップを増やすこともあるかもしれません。ただ投信は、先ほどのストックとフローの話にもありましたが、我々のビジネスになじむかどうか個人的には少し考える必要があると思います。資産形成層のお客さまが多いことを考えると、NISA、iDeCoといった切り口の方が良いかもしれません。

実際、お客さまも今、老後の心配をしている人が増えていて、変額保険とNISA、iDeCoなどを総合的に比較して何が自分に合っているのかといった相談が多くなってきましたし、ライフプランを策定していくなかで住宅ローンを持っている人はそれも含めて検討する必要がありますから、保険の見直しから住宅ローン、あるいはNISA、iDeCoなどへ展開させていくことも十分に考えられます。すでに提携している一部の銀行でワンストップの店舗展開がスタートしていますし、今後も増えると思います。

保険を販売する環境整備の本質とは

大原  保険代理店向けに保険募集事業支援ソリューションを開発して、アライアンス金融機関に提供しようとされていますが、今後この手のビジネスインフラの開発・提供にも力を入れていくのですか。

三田  ビジネスインフラをひとつの事業にしていくというよりも、提携行とお客さまに必要な環境を一緒に作っていくうえで必要とされる要素という位置づけです。我々はベンダーではないので、それを売っていくら稼ごうということではなく、銀行の店舗に来られるお客さまのために保全も含めて、本当の意味で総合的に保険を提供していく環境を構築できるように、提携行と一緒に力を合わせてやっていく。そのなかで餅屋は餅屋ですから、私たちが出来ることを最大限やっていくということです。

大原  保険代理店が今、抱えている課題は何でしょうか。

三田  もともと私たちのような広域代理店が出来る前というのは、小さい規模の代理店が林立していて、体力的にもガバナンス的にもお客さまのデータを含めてメンテナンスできる環境ではありませんでした。当然、保険会社の立場としては、保険の募集行為は代理店に任せるけれども、データのメンテナンスなどについては自分たちが責任を持って行うという構図になっていたと思います。

ただ、我々のような広域代理店が出てきて、改正保険業法によって体制整備が整えられた時、ガバナンスやコンプライアンスの面でも、また体力的にも管理できる素地を持った代理店が出てきました。そのような環境下で、お客さまに近い代理店がお客さまをお守りするために、保険会社とのデータ連携を密にしていくことはとても重要なことです。ただ、まだそのデータ連携に関しては課題が多くあります。お客さまのことを考えれば、業界としてそこをうまくまとめていく必要はあると思います。

大原  お客さまと接するほけんの窓口のライフパートナーは、保全対応をどのようにされていますか。

三田  そうですね。最終的な保全手続きは、保険会社が行いますが、お客さまが最初に保険の相談をされたのが我々の店舗のライフパートナーーだった場合、そこには当然、お客さまとの間の信頼関係が生まれます。ですから、最初のお問合せは我々の店舗やカスタマセンターに多くあります。

お客さまの側も、特に給付金の手続きに関していえば、手術をされるとか、誰かが亡くなるとか非常に不安な状況のもとで行わなければならない。そうなった時、お客さまとしてはやはり信頼できる人に相談したいはずですから、常に適切な対応が取れるよう、ライフパートナーにはきちんと保全対応を含めた募集実務の研修も行っています。

たとえば夫を亡くした奥様から給付金について電話の問い合わせがあったとしましょう。奥様は精神的にパニック状態に陥っているわけです。その時、しかるべき給付金請求の仕方をお客さまが少しでも安心できるようにしっかりと説明できるようにするには、日ごろからの心構えや準備が必要です。そのための研修をしっかり行うようにしています。

大原  システムやデータを整えるだけでなく、お客さまの気持ちを汲み取った対応も含めて環境を整備していく必要があるということですね。今日はありがとうございました。