「JAMPの視線」No.316(2026年1月18日配信)投資商品のオンチェーン化の方向性
JAMP 大原啓一の視点 2026年1月18日
昨日は小学校5年生の長男が町内会のスキー合宿に出かけ、妻も近所のママ友たちとの集まりに参加していたため、幼稚園年長の次男とふたりという珍しい組み合わせで過ごしていました。子どもが大きくなると、週末も全員で揃って過ごすということがだんだん少なくなるんだなとしみじみ思いながら、晩ご飯は次男も大好きなぎょうざの満洲で食べました。今月のフェアメニューは大原イチオシの天津飯で、しかも関東風・甘味あんか関西風・旨味あんが選べるという新企画です。2月2日までの期間限定フェアメニューですので、お近くの満洲にお急ぎください。
新企画では2種類の天津飯を選ぶことができます
セキュリティートークンを活用した個人投資家向けPE投資商品
さて、先週の日経マネーオンラインでSBI証券や東京海上アセット等が共同開発した「東京海上・日本プライベートエクイティ戦略ファンドST」が紹介されていました。同商品は複数のプライベートエクイティファンドに投資をする商品で、セキュリティートークンを活用することによって個人投資家が小口でプライベートエクイティに投資をすることができるという点に新規性があるということで注目を集めています。この商品に関するプレスリリースは昨年9月に公表されていますし、同商品は弊社・日本資産運用基盤もETFホワイトレーベルサービスで応募している東京金融賞に応募されていることもあり、以前から接する機会が多かったのですが、改めて今回の日経マネーオンラインの記事を読んで、この商品が意味するところを考えてみました。
昨年8月24日の「JAMPの視線 No.295」でも投資商品のオンチェーン化(セキュリティートークンの活用)が今後の資産運用サービス・ビジネスに与える影響について考察してみましたが、今回のこの商品でのセキュリティートークンの活用の意味合いを頭の中で整理することにより、自分のなかでの理解が改めて進んだように感じます。
最初にこの商品を目にした時、「プライベートエクイティの小口化投資商品は確かに個人投資家のニーズはあるだろうけれど、別にセキュリティートークンを使わなくても実現できるんじゃない?セキュリティートークンの活用自体が目的のための活用なんじゃない?」という失礼な印象を持ってしまいました。ただ、東京金融賞でのプレゼンテーションを何回も拝聴しているうちに、「確かに小口化自体はセキュリティートークンを使わなくても実現できるだろうが、使った方が効率的かつサービス利便性は向上する」「それに留まらず、将来の同種の投資商品の標準形をセキュリティートークンで作ることが目的なのだ」という理解に変わってきました。
セキュリティートークン活用の理由
これはあくまで私の勝手な推察でしかなく、SBI証券等の関係者のご意見を詳細にお聞きしたものではないのですが、私なりに今回の商品にセキュリティートークンを用いたのには以下のような理由があり、この方向性は今後の資産運用サービス・ビジネスのオンチェーン化の方向性のひとつを指し示しているのではないかと整理をしています。
(理由①:小口化×管理コストの問題)
今回の商品は個人投資家向けのものですので、将来的に投資家が何千人や何万人にまで多くなった場合、その名義管理や持ち分管理、譲渡制限管理、分配・税務処理等の運営管理作業の負担が非常に多くなってきます。この点、アナログの管理ではなく、セキュリティートークンを活用すると、投資家の名簿はブロックチェーン上の台帳で管理することになり、持ち分比率が自動計算されたり、分配計算や権利確定が容易になったり等、運営管理コストを大幅に小さくすることが可能となります。
(理由②:投資知識・経験を有する投資家のみへの販売先管理の問題)
プライベートエクイティへ投資をする商品であるがゆえに、投資対象が複数のプライベートエクイティファンドに分散されているとはいえ、本来的に高い投資リスクをはらむのみならず、長期の解約制限期間が設けられている等、投資知識・経験が豊かではない一般の個人投資家には向いていません。そのため、販売会社であるSBI証券では「SBI証券が本商品への投資に適合すると想定するお客様」として独自の適合性基準を設け、販売先を制限することとしています。セキュリティートークンを活用することにより、投資知識・経験を有する一定基準以上の投資家のみにたいして販売するという販売先管理を技術的に担保する形で厳格に行うことができるメリットがあります。このあたりの厳格な販売先管理、適合性の確認の運用がなければ、そもそも今回のような高リスクの投資商品を個人投資家に販売することは、技術的に開発可能かどうかとは別の理由で実現は困難かと思われます。
SBI証券が設けている独自の適合性基準(同社HPより)
(理由③:将来的な持ち分流動化の可能性)
この理由③はあくまで私の想像ではありますが、最も重要なものではないかと思います。現時点で公表されている今回の商品の説明を見ると、原則として15年間の信託期間の間は解約ができないとされていますが、セキュリティートークンを活用することにより、将来的には相対での売買や大阪デジタルエクスチェンジ等のセキュリティートークン取引所での売買等、セカンダリーでの流動化は可能です。金融商品のオンチェーン化に積極的なSBI証券が今回の商品企画を主導されていることから見ても、当然ながら将来的にそのような流動化まで見据えていると想像するのは飛躍し過ぎてはないのではないでしょうか。
プライベートアセット投資の民主化における活用意義
「JAMPの視線 No.295」での考察において、「確かに既に実現しつつあるように不動産関連商品のデジタル化を通じ、当該セキュリティートークンが個人のお客様の投資対象として存在感を高めるという意味での変化は一部にあるのでしょうが、資産運用業界のコアな領域での変化が大きくなるには相当の時間がかかるように思います」とコメントをしましたが、現在の資産運用業界のコアが上場株式などの流動性の高いパブリックアセットを投資対象とする商品・サービスであるという前提においては、その考えはいまも変わってはいません。
ただ、足もと機関投資家の需要が先行する形でプライベートアセットの存在感が高まっていくなか、プライベートアセットを投資対象とする投資商品の個人投資家向け小口化(=民主化)が進むことは間違いなく、そこでの商品・ビジネスの標準形はセキュリティートークンを活用したものになっていくであろうということも、今回の商品について考えを巡らせる過程ではっきりとした形で思うようになってきました。
プライベートアセットを投資対象とする投資商品の開発・運用の支援ということでは、弊社も投信ビジネス支援の一環でPEIT(未公開株対象投資法人)ホワイトレーベルサービスを提供していますが、今後のこのような動きを見据え、セキュリティートークンに対応するプライベートアセット用投資ビークルの設計・運営管理まで準備をしなければならないと改めて感じました。
JAMPメンバーの採用情報
日本資産運用基盤グループでは、事業拡大に伴い一緒に働くメンバーを募集しています。
弊社にご興味のある方、ぜひ働きたいという方はこちらからお申し込みください。
まずはお話だけでも、という方も大歓迎です!
代表の大原とのカジュアル面談でもいいかな、という方ももっとウェルカムです!!
News Picks ダイジェスト
代表取締役 大原啓一 のコメント
【ETF市場、国内外の新規参入急増へ 「ホワイトレーベル」が後押し】
大原のコメント→
東京証券取引所に上場するETF市場がその商品数と運用残高ともに成長している背景として、機関投資家による利用が進んだことに加え、販売戦略を再構築したい資産運用会社による参入が増えたことがあると考えています。
前者としては、これまでの私募投信形式での利用ではなく、より透明性が高く、流動性も一定程度期待できるETF形式での利用を選好する地域金融機関が増えたということは感じます。選好の理由としては、「私募投信形式よりもETF形式の方がより現場に近いところで決裁できる」というプロセス的なものも耳にしたことが印象的でした。
一方、後者としては、プロダクトガバナンス規制の強化の流れのなか、販売金融機関(特に対面販売金融機関)が公募投資信託の取り扱い数を絞る傾向がより明確になり、資産運用会社が新商品を販売金融機関に採用されにくくなったことや、日本市場への参入を企図する海外資産運用会社が非効率な販売金融機関開拓のプロセスをスキップし、より直接的に販売ルートを開拓したいという考えを持つようになったこと等があるように思います。
これらの動きは不可逆的なものであるように思われ、来年春頃に予定されると耳にする東京証券取引所の追加的な上場基準の緩和等の後押しもあり、来年以降はよりETF市場の商品数と運用残高が成長することを予想しています。
https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_15813493
【一部地域銀、 〝信金へ優先出資〟案浮上 業態超えて経営下支え】
大原のコメント→
今後このような地方部での金融機能提供のための地域銀行と信金・信組との事業連携はより進んでいくことを予想しています。
例えば、数日前も北海道の北洋銀行の津山頭取が時事通信のインタビューにコメントされていましたが、同行は人口減少が進む北海道の地方部での事業継続のため、共同店舗の運営も視野に入れた信金との事業連携の深化を考えているようです。
(以下、時事通信インタビューより引用)
北洋銀行の津山博恒頭取は13日までに時事通信のインタビューに応じた。津山氏は人口減少が続く北海道の地方部でサービスを維持するには「信用金庫とのアライアンス(連携)が一つの柱になる」と指摘した上で、共同店舗の設置を視野に入れていることを明らかにした。信金との統合については「今、目の前にあるわけではない」としながらも「選択肢としてはあり得る」と語った。
同行は現在、信金の店舗内に共同窓口やATMを設置するなど、連携強化を進めている。津山氏は「金融の仕組みは道内にしっかり残していかないといけない」と強調。特に、行員を確保し切れない地方部でさらに連携を深める考えを示し、「将来的には共同店舗の運営も必要になってくる」と話した。
(引用終わり)
https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_15854714
主任研究員 長澤 敏夫 のコメント
【好調 変額保険、新NISAに対抗 株高で後押しも】
長澤のコメント→
金融庁が是正を求め販売しにくくなった外貨保険の代替として変額保険を販売しているのであれば、金融商品販売を巡る金融庁と販売金融機関のいたちごっこはまだまだ続かざるを得ないように思われます。金融庁としては、個別商品にかかる問題点の指摘から経営陣の取組みに対するモニタリングに軸足を移そうとしているように思われますが、まだまだ時間がかかりそうです。
https://newspicks.com/user/6551307/?ref=user_6551307&sidepeek=news_15840068
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