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第71回 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案について (第3回「企業のサステナビリティ情報の開示・保証」)

 「日本資産運用基盤株式会社」を親会社に持つ「JAMPフィナンシャル・ソリューションズ株式会社」は、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。

 前々回から、2026年4月10日付で第221回国会に提出された「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「本改正案」といいます)をテーマに取り上げており、全5回シリーズを予定し、以下のテーマにて本改正案を掘り下げています。本改正案は7月15日に国会で可決・成立されていますが、今回は、「企業のサステナビリティ情報の開示・保証」を取り上げます。

第1回「改正案の全体像と位置付け」
第2回「暗号資産に係る規制の見直し」
第3回「企業のサステナビリティ情報の開示・保証」(今回)
第4回「スタートアップ企業への資金供給の促進」(予定)
第5回「有価証券に関する不公正取引規制等の見直し」(予定)

1.サステナビリティ情報の共通開示基準を導入

 気候変動や人的資本等に係る企業のサステナビリティ情報は、投資家が中長期的な企業価値を評価する上で重要な情報とされており、日本では2023年3月期から上場企業等に対してサステナビリティ情報の開示を義務付けていますが、具体的な基準に基づいておらず、企業間比較が難しいことなどが課題として指摘されていました。

 こうした状況を踏まえ、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2025年3月にサステナビリティ開示基準を公表しており、本改正案は、この新たなSSBJ基準に準拠して有価証券報告書を作成することを義務付けるものです。

 上記の開示義務は、プライム市場に上場する時価総額の大きな企業から段階的に適用していくことが予定されています。具体的には、時価総額3兆円以上の企業について2027年3月期から、1兆円以上の企業について2028年3月期から、5,000億円以上の企業について2029年3月期から、それぞれ運用が開始される予定です。

 現在も多くの企業が気候変動や人的資本等に係る取組み等を開示していますが、記載方法や指標等が企業ごとに異なるため、投資家の投資判断に十分活用されているとは言い難い面があります。今回の制度整備により、情報の比較可能性や信頼性が向上すれば、サステナビリティ情報そのものの価値が高まり、企業分析や投資判断において活用が進むことが期待されます。

2.「基準」と「保証」の両輪で利用価値を高める

 もう一つ興味深いのは金融庁が保証制度の整備を重視している点です。本改正ではSSBJ基準による開示の義務化に加えて、その翌年からは第三者保証が義務付けられます。また、保証業務実施者には登録制度が導入され、人的体制や品質管理体制の整備、独立性確保などが求められます。

 ここで注目したいのは、サステナビリティ情報の保証制度には、財務情報に対する監査制度とよく似た構造が採られていることです。今回の保証制度の導入は、サステナビリティ情報に財務情報と同等の信頼性を付与することを目指すものと言え、投資家が企業のサステナビリティ情報をどのように評価し、活用していくのかが今後の注目点となります。

3.サステナビリティ情報の活用と映し出される企業の実態

 今回の制度改正は、企業に新たな基準に基づく開示義務を課す制度であると同時に、投資家が企業のサステナビリティ情報をこれまで以上に活用しやすくする制度でもあります。比較可能性や信頼性が向上すれば、気候変動や人的資本等に係る情報についても、投資判断における重要な分析対象となっていくでしょう。

 もっとも、投資運用会社や投資助言会社にとって重要なのは、個々のESG項目の数値や評価だけではありません。その企業がサステナビリティ情報を適切に収集・管理し、経営判断に反映できているかという点も重要な評価対象になると考えられます。

 例えば、気候変動や人的資本等のリスクに関する情報をどのような体制で収集・分析し、その結果をいかに経営戦略や事業運営に反映しているかといった点は、企業の内部管理態勢やガバナンスの成熟度を映し出します。その意味で、今回の制度改正は、サステナビリティ情報の開示を通じて、企業のガバナンスや経営実態をこれまで以上に可視化するものともいえるでしょう。

4.企業価値評価の新たな判断材料

 現在、ROE、利益成長率、PBRなど多様な財務指標が活用されていますが、サステナビリティに関するデータが継続的に蓄積されれば、気候変動対応と資本コストの関係、人材育成投資と利益成長率の関係、離職率と企業価値の関係、ガバナンス体制と不祥事発生率の関係などについて、より精緻な分析が可能になるでしょう。

 特に、気候変動対応や人的資本等に係る大量の定性情報(企業戦略等の非財務情報)については、AI等を活用した分析が進展し、新たな知見が得られることが期待されます。AIおよびその活用が日進月歩する中、サステナビリティ情報が企業の将来価値評価に欠かせない判断材料になるのもそう遠くないように思われます。

(JAMPコメント)

 サステナビリティ情報の比較可能性と信頼性が高まれば、投資家の着眼点や分析手法も大きく変化していくでしょう。近年頻発する自然災害や気候変動リスクに関する情報と組み合わせることで、防災インフラ、地域再生、被災地復興等に取り組む企業やプロジェクトを発見し、資本を供給する新たな投資機会につながることも期待されます。

 今回の制度改正によって提供されるサステナビリティ情報の価値を引き出せるかどうかは、投資家がその情報をいかに読み解くかにかかっているといえるでしょう。そして、そのような情報を企業価値評価や資本配分に生かしていくことこそ、我々資産運用業に携わる者に求められる役割ではないかと考えます。


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