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「JAMPの視線」No.299(2025年9月21日配信)

JAMP 大原啓一の視点 2025年9月21日

 

 小学校5年生の長男が無事に退院したので、先週末はお祝いに父子ふたりで映画を観に行きました。このところ東野圭吾にはまっている長男のリクエストで公開されたばかりの「ブラック・ショーマン」を観たのですが、なかなか面白かったです。ふたりとも既に原作を読んでいたので、鑑賞後は原作とのストーリーの違いやキャストがイメージにあっていたかどうかなどの話も楽しむことができました。自分が興味のある小説や映画を父子で楽しめるようになったことは嬉しいですね。いつまで一緒に出歩いてくれるか不安でもありますが。

日銀の保有ETF売却開始について

 さて、日銀が異次元金融緩和政策で購入し、保有するETFとREITを2026年初から市場で売却を開始することを決定しました。マイナス金利政策や長短金利操作の解除による異次元金融緩和政策の脱却に舵を切った昨年春から今回のETF売却はある程度は予想されていましたが、実際にその決断の報に接すると感慨深いものがあります。日銀のETF保有額は足もと時価ベースで80兆円を超える規模にまで大きくなっており、保有対象のETFを運用する資産運用会社のフィー収入への貢献も非常に大きく、それら運用会社のみならず、日本の資産運用業界にとっても、日銀頼みではないETF市場の成長戦略の策定がこれからは重要になってきます(既にこれまでも重要な経営課題のひとつとして頭を悩ませられてきたかとは思いますが)。

 ただ、とはいえ当面の売却ペースは簿価ベースで年間3,300億円程度とされており、このペースを前提とすると、全ての保有ETFの売却には100年以上の年月が必要なことになり、最終出口に向かうというにはまだまだ気が早いようにも思います。市場への悪影響を最小限にするための配慮が背景にあることは間違いありませんが、日銀の金融緩和政策からの脱却姿勢が新たなフェーズに入ったというシグナル効果はもちろんあるものの、実際には何か短期的に大きな変化があるかというとそんなことはないように思います。元参議院議員の藤巻健史氏が日経新聞の「異次元緩和、最終出口へ」という一面の見出しに対して「東京駅発大阪行き新幹線で列車の最後尾が東京駅のプラットホームを出る前に『大阪で降りられる方はお降りのご準備をお願いします』と車内アナウンスをするようなもの」という皮肉めいたコメントをX上でされていましたが、まさにおっしゃる通りだなあと感じました。


藤巻健史氏の2025年9月20日のXポスト投稿画像

「ETF埋蔵金」活用プラン

 日銀が保有する巨額のETF資産については、これまでも政府内で少子化対策やこれからの成長産業と期待される半導体関係領域への投資等の財源として活用するプランも検討されてきたということも耳にします。この点について、私としては政府が足もと「資産運用立国」の旗印を掲げ、インベストメントチェーンの活性化に日本の経済成長の期待を寄せているいま、この「埋蔵金」をより積極的にその目的に使ってほしいという気持ちを強く持っており、例えば、全ての日本国民を対象に日本銀行が保有するETFを分配するという勝手な私案を主張したりしていました。ETFを受け取るためにはNISA口座の開設を前提とするとNISA口座が一気に広がりますし、そこでETFを初めて保有する人たちがリスク性資産による資産形成・運用に関心を持つことも考えられますので、間接的に預貯金に偏重している家計の金融資産が投資や資産運用に動き出すきっかけになることも期待されるのではないか、そんなことを考えています。

 日銀のETF売却が開始されるとはいえ、上述の通りその売却オペレーションの完了までには気が遠くなるほどの時間がかかりますので、「埋蔵金」活用の議論もここで断念するのではなく、引き続き日本の社会・経済にとって有益なものになるような議論を政府も踏み込む形で継続して頂きたいと祈念しています。


JAMPメンバーの採用情報

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まずはお話だけでも、という方も大歓迎です!

代表の大原とのカジュアル面談でもいいかな、という方ももっとウェルカムです!!

keiichi.ohara@jamplatform.com


News Picks ダイジェスト

代表取締役 大原啓一 のコメント

【地域銀など金融24社、新興株の二次市場創出へ ファンド期限が到来】

大原のコメント→                                       

 VCファンドの存続期限が迫りつつある一方、投資先スタートアップ企業のEXITが順調には進まないなか、このようなセカンダリーマーケットの整備が金融機関の垣根を越えて進められることは重要であり、前向きな取り組みだと考えます。
 一方、投資先スタートアップ企業の事業が順調に成長しており、セカンダリーマーケットでの取引が売り手VCファンドにとっても許容し得る取引となり、買い手VCファンドにとっても数年後のEXITを期待できるものになれば良いのですが、そうでないケースも多いのではないかとも懸念されます。
 その場合、懸念案件の清算をただ先送りするための受け皿を共同で運営するだけになってしまい、地域銀行等によるスタートアップ企業育成の取り組みそのものを冷え込ませることにもなりかねず、枠組み構築の段階から慎重な議論が必要となると思われます。

地域銀など金融24社、新興株の二次市場創出へ ファンド期限が到来 (ニッキンONLINE | 日本金融通信社)


主任研究員 長澤 敏夫 のコメント

【UCDA、書類の改善手法を伝授 理想科学工業とセミナー】

長澤のコメント→

 以前、UCDAの常務理事の方と対談をさせて頂きました。その際、お伺いしたお話の中で印象に残っているのが、「わかりやすさ」の基準作りでご苦労されたお話です。
 金融商品、保険商品は、ともすれば注意喚起情報や目論見書が非常にわかりにくく、それがお客様とのトラブルの元になっていると考え、「わかりやすさ」の基準を設ければ、わかりやすいものが出来るはずだということになり、「わかりやすさ」の基準作りを始めたそうです。しかし、「わかりやすさ」といっても、実は人によって理解は千差万別で、壁にぶつかったそうですが、逆転の発想で、わかりやすさとは何かについていろいろ議論を尽くすよりも、わかりにくい部分を抽出し、それをひとつずつ直していくことから、始めたそうです。その分かりにくさの一つが、紙面の情報量で、これを測定し、「分かりやすさ」の基準を作ったとのことです。

UCDA、書類の改善手法を伝授 理想科学工業とセミナー (ニッキンONLINE | 日本金融通信社)


【【上場直前】なぜ、ソニーフィナンシャルグループは金融で「感動」を目指すのか】

長澤のコメント→

 遠藤代表執行役 社長 CEOには、私が金融庁で「顧客本位の業務運営」のモニタリングチーム長だった時に色々ご指導いただきました。当時、元長官が常に抱かれていたという「本当の顧客本位とは何か」という疑問に対し、明確な答えを返すことが出来なかったのはひとえに私の力不足と反省しきりですが、現職において、その想いを「感動寿命」というコンセプトに凝縮されたのかと思います。「感動寿命」という言葉は初めて聞きましたが、「お客さまの人生に深く寄り添い、信頼や安心、便利さの提供にとどまらず、人生を心豊かにする「感動」を提供すること」がありたい姿であるというのは非常に感銘を受けました。

【上場直前】なぜ、ソニーフィナンシャルグループは金融で「感動」を目指すのか


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