
「JAMPの視線」No.283(2025年6月1日配信)
次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】
目次
①JAMP 大原啓一の視点
②JAMPメンバーの採用情報
③NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
④メディア掲載情報
⑤インフォメーション
JAMP 大原啓一の視点 2025年6月1日
今日は小学校5年生の長男が通う小学校の運動会でした。運動会の開催時期が6月頭というのは最近の猛暑化の影響かなあとは思いますが、運営方法がちょっとユニークで驚きました。学年ごとに開催時間が異なっており、自分の学年の運動会以外の時間は通常の授業を受けるという運営で、他の学年の運動会の見学は無いというのです。応援する家族的には自分の子どもの学年の時間帯だけ行けば良いですし、混雑もしないので確かに効率的ではあるのですが、少し味気なさを感じました。
さて、少し前の日経新聞の「金融庁四半世紀」という連載企画のなかで、金融庁のより一層の民間人材登用の必要性が問題提起されており、私自身も将来的に何らかの形で金融庁という舞台で日本の金融行政に自分の知見・経験等を役立てたいという想いを持っているため、興味深く記事を読んでいました。
プロパー職員が大多数を占める他省庁と比べ、金融庁は比較的多様な人材構成になっているというのは、以前から私自身も肌感として感じているところでしたが、金融庁で働く約1,600人の職員のうち約25%が民間出身者で占められているという記事内の記述を読み、改めてその多様性に驚きました。一方、民間から金融庁へという方向だけでなく、新卒で金融庁に入庁し、30代や40代で民間企業に転職する方々もわりかしいらっしゃるように見聞きしており、欧米の事例でよく耳にするいわゆる「回転扉(リボルビングドア)」は、霞が関でもこと金融庁においては、機能している方と言っていいのかもしれません。
しかし、実際に資産運用業界の現場で働き、実際のビジネス案件のみならず、「資産運用立国」の方向性等について金融庁の方々とお話をさせて頂くなかで感じるのは、資産運用業という産業の育成という中長期の政策設計において、どこまで民間人材の経験や視点等が活かされているのだろうかという疑問です。確かに数字の面では民間人材の登用は進んでいるのかもしれませんが、それがどこまで政策当局としてのパフォーマンスに寄与しているのか、その辺りを感じることはなかなか困難です。
せっかくの民間人材を傭兵的に用いてしまっており、中核機能に活かしきれていなかったり、そもそも経済条件が十分ではないため、第一線級の人材を登用できていなかったりという人材の質や運用面の問題というのももしかするとあるのかもしれません。ただ、私が個人的に感じるのは、問題はそれ以前のところにあるのではないかということです。金融庁が自らのミッションを業界監督にとどまらず、金融・資産運用業という産業を育成することにあるということを定義し直し、そこに実ビジネスの経験を有する民間人材をアサインする、そういうことがまだ十分にはできていないように感じます。
以前のメールマガジンでも述べましたが、他の業界では、例えば経済産業省が主催する「半導体・デジタル産業戦略検討会議」のように、日本のデジタル・半導体産業はどうあるべきか等、政府も関与する形で産業設計を国家戦略的に検討するという動きもありますが(それが本当にうまくいっているかは疑問ですが)、金融・資産運用業についても、同じように国家戦略として日本勢がどのようにグローバルプレイヤーに伍していくのかという視点で長期的な政策の方向性を深掘りすることも重要だと考えます。
日経新聞の特集では、「回転扉」の存在のみならず、それをどう機能させるかという視点での問題提起がされていましたが、それに加えて、「何のために『回転扉』を活用するのか」という視点でのそもそもの議論こそが重要なのではないか、そんな問題提起をさせて頂きたいと思います。
News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)
【ドコモが「銀行を持つ」ことでユーザーは何がお得になる? 住信SBIネット銀行が「最高のパートナー」なワケ】
大原のコメント→
携帯電話キャリア各社がスマートフォン接点の顧客エンゲージメントを強化し、そこでの収益性を高めるために金融事業に注力しようとすることは理解できますし、そこでの選択領域としてスマートフォン接点と親和性の低い証券・資産運用ではなく、決済・融資等を重視し、銀行機能に関心を強めているのも合理性があると考えます。
ただ、銀行機能を持つことと銀行を所有することは全く別の話であり、本当に自前でグループ内に銀行を所有し、経営責任まで負う必要があるのかというと正直なところ疑問です。
携帯電話キャリアの存在感をもってすれば、既存の銀行からサービス開発の柔軟性や利用料金等において有利な条件を引き出すような交渉は十分に可能であり、それであれば銀行代理という形でBanking as a Serviceを利用するということが最も効率的・効果的な選択肢ではないかと個人的には考えています。
News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)
【一部地銀、FD資料作成に課題 生保出向者引き揚げで】
長澤のコメント→
多くの金融機関は、金融庁が公表する、顧客本位の業務運営に取組む「金融事業者リスト」に掲載してもらうべく、6月末を目途に自社の取組状況をウエブサイトで公表しています。記事によると公表資料のうち保険関係の記述を保険会社からの出向者に任せていたので作成に苦慮している金融機関があるとのことですが、保険の販売においても出向者が引き揚げ、販売力が低下しているとも聞きます。保険商品の銀行窓販の全面解禁から十数年経っており、出向者への依存から脱却する良い機会となるのではないかと思われます。