
「JAMPの視線」No.281(2025年5月18日配信)
次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】
目次
①JAMP 大原啓一の視点
②JAMPメンバーの採用情報
③NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
④お知らせ・ニュースリリース
⑤メディア掲載情報
⑥インフォメーション
JAMP 大原啓一の視点 2025年5月18日
私は日系資産運用会社の派遣駐在員として2007年8月から2015年3月まで約7年半にわたって英国・ロンドンに駐在しており、現地で欧州の資産運用業界の事業構造のなかで実務経験を積んだことが、日本資産運用基盤で取り組んでいる挑戦の原点にあります。また、欧州の資産運用業界での実務経験に加え、2007年からの様々な大きなイベントを国際金融市場のなかで経験したことや様々な金融業界関係者との交流も、今から振り返ると少なからずいまの私の視点に影響を与えているように感じます。
2007年8月に着任した数日後に発生したパリバショックに始まり、翌年のリーマンショック、欧州ソブリン危機、東日本大震災、アベノミクスなど、7年半の間には様々な大きなイベントがありました。その激動のなかで、私自身もRMBSを組み込んだファンドの清算、毎月分配型投信の人気過熱を背景にした2階建て/3階建て構造の新商品の開発競争、欧米金融当局の超低金利政策を受けての外貨建てMMFの元本割れ回避対応、東日本大震災やアベノミクスの後の日本株への関心の高まりの後押しのなかで欧州・中東地域の機関投資家に日本株運用戦略を提案してまわる営業キャラバンなど、通常の市場環境では経験できなかったであろう様々な経験を積ませていただきました。市場イベントとは異なりますが、UCITS/AIFといった投資ファンド規制の強化や個人向け投資商品販売に関する規制の新設などが進められた時期でもあり、欧州委員会や英国金融当局での規則改正を巡る議論も現地でリアルタイムでウォッチし、調査レポートにまとめたりしたことも、いまの私の血肉になっています。
また、そのような案件に携わるなかで、国籍を問わずに様々な金融・資産運用業界関係者との出会いもありました。欧州や中東のソブリンウェルスファンドで日本株への投資を判断する投資責任者、日本株営業キャラバンで定期的に欧州各国を一緒に弾丸出張してまわったスイスのプライベートバンク会社の営業担当者、ルクセンブルグのファンドアドミ会社の担当者、投資運用を再委託していたヘッジファンドの経営者や運用責任者、業務提携をしていたトルコの運用会社の経営陣など、残念ながら日本に帰国してからは交流はあまりなくなってしまいましたが、様々なバックグラウンドを持ちながら資産運用業界に携わっている方々から多様な視点を教えて頂いたように思います。
こんなことを今さらながらにしみじみと感じたのは、先週公表された第一生命ホールディングスによる英国資産運用会社Capulaグループへの追加出資と持分法適用会社化に関するプレスリリースを目にしたためです。実はロンドンに駐在していた当時、一度きりにはなってしまいましたが、Capulaの共同創業者である浅井将雄氏にお会いし、お話をさせて頂いたことがあり、その時の経験もいまの私に何らか影響を及ぼしているように感じます。
当時の私は、「日本の資産運用業界の将来は自分にかかっている」「自分が何とかしなければ」という何の根拠もない思い込みに押し潰されそうになっており(←ほんと我ながらイタいですね、今もあまり変わってないですが・・・)、思い詰めた挙句、あろうことかCapulaの公式HPの代表連絡先から何の面識もコネクションもない浅井氏へ面談の申込みをお送りしたのです。そんな失礼なコンタクトであったにも関わらず、浅井氏はご多忙のなか私との面談のために時間を割いてくださいました。
面談当日、緊張で心臓がバクバクしながら、日本の資産運用業界がなぜ国際的に地位が低いのか、なぜCapulaのような資産運用会社が日本に登場しないのか、どのようにすれば英国のように一国の経済をけん引するような産業として成長できるのかなど、色々な青臭い質問をぶつけてしまいましたが、そんなものに対しても、嫌な顔をせずにひとつひとつ丁寧にお話を頂きました(デスクの上に「年金情報」が置いてあったことなど、つまらないことをいまも妙に覚えています)。
加えて、別れ際に「君とは今日はじめて会ったばかりで僕は君の人となりはわからないし、君も僕の考えが十分に理解できなかったかもしれない。ただ、これから会う回数を重ねることでより深く理解し合うことができるかもしれない。また会いましょう」という優しい言葉をかけて頂いたことは、感動とともにいまも私の当時の記憶の中心にしっかりと残っています。恥ずかしながら、気後れしてしまったため再度の面談をお願いすることをその後ずっとしそびれてしまい、浅井氏とお会いしたのはそれっきりになってしまったのですが、業界をけん引するリーダーとはどうあるべきかということを学ばせて頂いたように思います。
日本に帰国したのはつい最近のように感じますが、改めて考えると、2015年春に日本に帰国してから今年でちょうど10年になります。10年間で何ができたのか、日本資産運用業界に何か役に立てているのか、まだまだ手ごたえも自信もあまり持てていませんが、欧州に駐在していたあの約7年半で経験したことや培った価値観、視点などをもとに、自分なりにこれからも試行錯誤してまいりたいと思います。
(*)ここ最近の本コーナーは、最初にプライベートの生活を中心とする日記的なもの数行から始め、「さて」として本題に入るという構成でさせて頂いているのですが、「最初の数行も楽しみにしています」「むしろそっちしか読んでない」というご意見がある一方、「最初から本題に入った方が良い」というご意見も頂いており、今後は色々と試してみたいとなと考えています。「どっちでもいーよ」というのが大多数のご意見のようにも思いますが、こちらの試行錯誤もあたたかく見守って頂ければ幸いです。
News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)
【ありあけキャピタル、池田泉州HD株を5%取得 大量保有提出】
大原のコメント→
今年3月の千葉興業銀行株式の千葉銀行への売却以降、ありあけキャピタルの動向に対する注目度がいままで以上に高まっていることを感じます。
従来型金融サービスの付加価値のコモディティ化が進むなか、長年の取引関係に基づく顧客基盤と対面接点等の戦略資産を有する地域銀行に可能性を見出しているところは、同社と弊社・日本資産運用基盤は共通しているように勝手ながら感じています。
一方、ありあけキャピタルの投資先を見てみると、当然ながら全ての地域銀行を等しく評価するのではなく、当該地域銀行が所在する地域の経済規模やその先行きが豊かであるところを大前提としているように見受けられ、変革を通じた果実の獲得可能性が大きなところを選別しているように思います。
地域銀行が外部株主との対話を通じて新たな事業モデルや成長戦略を構築する動きを強い関心をもって観察したいと思います。
News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)
【地銀、外貨保険の業績評価変更 手数料重視から脱却 販売目標撤廃も】
長澤のコメント→
外貨建て保険については、過去何度も業績評価体系の見直しに関するニュースが出ており試行錯誤が続いているように見えます。こうした中、販売手数料に収益依存したビジネスモデルは、収益性の低下が著しく、それを補う回転売買も既に過去のものとなりつつあります。ほとんどの金融機関が、お客様本位とする経営理念を掲げているとは思いますが、顧客本位の営業と金融機関の収益の両立を果たし、顧客との間でWin-Winの関係を構築するためには、預り資産ビジネスそのものを、商品の販売から資産運用アドバイスへと提供付加価値を変化させることが必要であり、それに見合った業績評価体系にすることで頻繁な見直しから脱却できるのではないかと思われます。