
第54回「投資運用関係業務受託業者」利用のすすめ(3)
日本資産運用基盤グループのJAMPフィナンシャル・ソリューションズ株式会社(*)は、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに当局の動向などをまとめ、発信しています。
2024年5月15日に成立し同月22日に公布された「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律」の大テーマは「投資運用業者の参入促進」ですが、今回はその施策の一つである「投資運用関係業務受託業制度」を理解して、投資運用業の規制緩和の恩恵を享受しようの第3回(最終)です。
第1回では、投資運用業者の参入促進、アドミ業務(投資運用関係業務(「計理業務」又は「コンプライアンスのための業務」)に係る業の任意登録制と規制緩和、アドミ業務の種別・内容について、前回は、投資運用業者が人的要件緩和を受ける際の注意点等について説明いたしました。今回は、投資運用業に係る規制緩和に関連して、金融商品取引業登録申請書の記載事項の追加項目と、既存の投資運用業者でも対応が必要となる事柄について説明させていただきます。
1.金融商品取引業に係る登録申請書記載事項の追加項目
投資運用業に係る規制緩和に関連し、金融商品取引業(投資運用業)の登録申請書記載事項に以下の3点が追加されます。(なお、(2)(3)は「投資運用関係業務受託業制度」に係るものではありません。)
(1)「ミドル・バックオフィス業務に係る業の創設」に関連して、アドミ業務を委託する場合(委託先が任意登録を受けたアドミ業者(以下「アドミ業者」)か否かを問わない)は、
①その旨
②委託先の商号等
③委託するアドミ業務の内容
などを記載する必要があります。なお③は、アドミ業務((1)計理の①②、(2)コンプラの①~③(*第52回「3.アドミ業務の種別・内容」をご参照)のうち、どの業務を委託するかについても記載することになります。
そのほか、アドミ業者にアドミ業務を委託して要件緩和を受けようとするときは、その旨と委託するアドミ業務の「監督者の氏名」等も記載することになります。
(2)「投資運用業の登録要件緩和」に関連して、投資運用業に関して顧客から金銭又は有価証券の預託を受けず、かつ、自己と密接な関係を有する者に預託させない場合には、その旨。
(3)「運用(投資実行)権限の全部委託を可能とすること」に関連して、運用権限を委託する場合(全部委託か一部委託かを問わず)、当該委託に係る業務の監督を行う部門を統括する者(以下「運用委託業務監督部門統括者」)の氏名 (なお「運用委託業務監督部門統括者」は、登録申請書の記載事項である「重要な使用人」の1類型として新設される予定。)
2.登録申請書記載事項の追加に伴い必要となる手続
1,の登録申請書記載事項として追加された事項については、既に金融商品取引業者として登録されている事業者(登録事業者)においても手続が必要となることがあります。
(1)「ミドル・バックオフィス業務に係る業の創設」関連として、
現にアドミ業務を委託している登録事業者(委託先がアドミ業者か否かを問わず)は、その旨・委託先・委託内容等の変更届出(施行日から6月以内)が必要となります。投信委託会社の中には計理業務を委託している会社が多いと思われますので、ご注意ください。なお、アドミ業務とは一定の継続性・能動性が求められる業務ですので、例えば、個別の紛争対応やアドホックな研修、委託者の求めに応じたアドバイザリー等の委託については、届出不要です。
(2)「投資運用業の登録要件緩和」関連として、
投資運用業に関して顧客から金銭等の預託を受けない場合は、その旨の届出が必要です。 特に、資本金・純財産額要件の緩和を受けたい登録事業者の場合には、施行日から6月以内に変更登録申請書の提出が必要となります。しかし、資本金・純財産額要件の緩和を受ける予定のない登録事業者の場合には、必ずしも6月以内に変更登録申請を行わなくとも問題はないようです。(今後、他に変更登録の必要が生じた際に併せて申請することで足りるようです。)
(3)「運用(投資実行)権限の全部委託を可能とすること」関連として、
現に運用権限の一部を委託している登録事業者は、運用委託業務監督部門統括者の氏名の届出が必要となります(施行日から6月以内)。ただし、これまで重要な使用人として位置づけられている「運用を行う部門を統括する者」や「金融商品の価値等の分析に基づく投資判断を行う者」が、運用委託業務監督部門統括者を兼務している場合には、この届出は不要となります。
(JAMPコメント)
今号では、この度の金商法改正に伴い追加で必要となる手続きについて説明させていただきました。当初はやや煩雑な手続きが必要ですが、委託するアドミ業務の監督者(主に内部管理部門の役員など)さえ確保できれば、自社でアドミ業務を行う経験者を確保する必要がなくなることは、とても有益な改正です。
筆者の周囲にいる多くのアドミ業務経験者も筆者と同様 髪に白いものが目立ってきている昨今、この制度の導入は資産運用立国を目指す我が国投資運用業界の救世主たりえるものと認識しています。この機に、アドミ業務の外部委託についてぜひご検討されたらいかがでしょうか。
当社は、国際金融都市を目指している東京都とも協力し、金融商品取引業に関する登録申請手続き、及び金融商品取引業者等の内部管理体制強化に関する様々なご相談に対応しています。ご不明な点等ございましたら、是非当社までお問合せ下さい。
(*)今号より、本メルマガの発信元は、日本資産運用基盤グループのJAMPフィナンシャル・ソリューションズ株式会社が引き継いで行わせていただくことになりました。引き続きよろしくお願いいたします。