「JAMPの視線」No.314(2026年1月4日配信)年頭所感
JAMP 大原啓一の視点 2026年1月4日
2026年の新春を迎えるにあたり、我が国の金融・資産運用業界が直面している事業環境の変化と、金融機関が今後取り組むべき経営課題について、私の所感を申し述べ、年頭のご挨拶に代えさせていただきます。
1.仮説から現実へ――資産運用ビジネスを取り巻く構造変化の顕在化
弊社・日本資産運用基盤グループは、「金融ビジネスの最適化」をミッションに掲げ、資産運用事業モデルの改革を通じて金融業界の効率性・生産性の向上に資する「基盤」ソリューションを提供してまいりましたが、2025年は、その必要性が議論や仮説の段階を超え、現実として多くの金融機関の経営を直撃した1年であったと感じています。
新NISA制度の定着により、一般生活者が投資・資産運用に取り組む動きは確実に広がり、制度面から見れば「資産運用立国実現プラン」が掲げた方向性は一定の成果を上げつつあります。一方で、この1年を通じてより鮮明になったのは、インベストメントバリューチェーン全体として見たとき、その果実が必ずしも国内の金融機関に還元されていないという現実でした。
家計金融資産の一部は確かに投資・資産運用へと動き出しましたが、その多くは海外市場や海外運用商品に向かい、国内金融機関の付加価値創出や収益基盤の強化には十分につながっていないケースも少なくありません。加えて、投資信託を中心とした過度な低手数料競争はさらに進み、制度対応・システム対応といった固定費負担が重くのしかかるなかで、「利用者にとっては便利だが、提供者にとっては疲弊する」構造が一段と固定化した1年でもありました。
金融サービスの手数料が低下すること自体を否定するものではありません。しかし、金融そのものが目的ではなく手段である以上、利用者の長期的な資産形成を支えるためのサービス提供主体が、持続可能な形で存在し続けられなければ、その仕組みは長続きしません。価値を提供しているにもかかわらず、価値に見合う対価を得られない状態が常態化しているとすれば、それは健全な競争とは呼べないのではないでしょうか。
2.従来型モデルの限界と、金融機関に迫られる選択
2025年を通じて改めて感じたのは、個人向け資産運用ビジネスにおいて、従来型の商品供給モデルや販売モデルを前提とした延長線上での改善には、もはや限界が見え始めているということです。資産運用会社であれ、証券会社であれ、地域銀行であれ、自らがどこで付加価値を生み出し、どこを他者に委ねるのかという選択を、これまで以上に明確に迫られる局面に入っています。
資産運用会社においては、ミドル・バックオフィス業務の外部化やファンドマネジメントカンパニーソリューションの活用を通じた業態転換が、もはや一部の先進的な取り組みではなく、現実的な選択肢として検討される段階に入りました。また、商品面においても、公開資産のみを対象とした投資商品提供にとどまらず、非公開資産を含めた多様な投資機会の提供や、対面金融機関と連携したアドバイス付加価値の創出など、「商品」単体ではなく「サービス」としての再定義が求められています。
こうした変化は、中堅・中小規模の金融機関にとって、より切実なものとなっています。従来型の事業モデルがコモディティ化するなかで、過去の成功体験や慣行に依存したままでは、生き残ること自体が難しくなりつつあります。事業撤退や再編、廃業といった選択肢は、もはや極端な仮定ではなく、現実的な経営判断として俎上に載る時代に入りました。
地域銀行にとっても、「金利のある世界」の到来は単純な追い風ではありません。金利ビジネスの復活が期待される一方で、預金という原材料を巡る競争はむしろ激しさを増しており、オンライン金融機関や大手金融機関との競争のなかで、地域銀行ならではの存在意義がこれまで以上に問われています。金利というコモディティに依存しない関係性の構築こそが、結果として預金量の維持・拡大につながるという認識は、2025年を通じて多くの現場で共有されつつあるように感じます。
弊社が以前より推進してきたゴールベース型資産運用サービスは、その一つの打ち手に過ぎませんが、地域銀行が地域のお客様と長期的な関係性を築くための有効なアプローチであるという手応えは、2025年を通じてより明確になりました。
3.2026年に向けて――ともに変革を進める仲間として
2026年は、こうした流れがさらに加速し、「変わるか、変われないか」ではなく、「どのように変わるのか」が問われる年になると考えています。事業提携や再編の動きも含め、今後10年、20年の金融業界の姿を決定づける選択が、より具体的に、より迅速に求められる局面に入っています。その鍵となるのは、昨年と同様、「ビジョン」と「スピード」です。
弊社・日本資産運用基盤グループは、金融機関を単なる「サービスをご利用いただくお客様」としてではなく、より良い日本の金融・資産運用業界をともに実現するための仲間・パートナーとして捉え、引き続き事業モデル改革と成長に資する「基盤」ソリューションを提供してまいります。
本年も、業界の皆さまと手を携えながら、遠い山の頂を目指して歩みを進めていければ幸いです。2026年が、金融業界にとっても、そしてその先にいる生活者にとっても、より持続可能で実りある1年となることを祈念し、年頭のご挨拶とさせていただきます。
JAMPメンバーの採用情報
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代表の大原とのカジュアル面談でもいいかな、という方ももっとウェルカムです!!
News Picks ダイジェスト
代表取締役 大原啓一 のコメント
【ETF市場、25年は過去最多52本上場 金や高配当株が人気】
大原のコメント→
東京証券取引所に上場するETF市場がその商品数と運用残高ともに成長している背景として、機関投資家による利用が進んだことに加え、販売戦略を再構築したい資産運用会社による参入が増えたことがあると考えています。
前者としては、記事にもある通り、これまでの私募投信形式での利用ではなく、より透明性が高く、流動性も一定程度期待できるETF形式での利用を選好する地域金融機関が増えたということは感じます。選好の理由としては、「私募投信形式よりもETF形式の方がより現場に近いところで決裁できる」というプロセス的なものも耳にしたことが印象的でした。
一方、後者としては、プロダクトガバナンス規制の強化の流れのなか、販売金融機関(特に対面販売金融機関)が公募投資信託の取り扱い数を絞る傾向がより明確になり、資産運用会社が新商品を販売金融機関に採用されにくくなったことや、日本市場への参入を企図する海外資産運用会社が非効率な販売金融機関開拓のプロセスをスキップし、より直接的に販売ルートを開拓したいという考えを持つようになったこと等があるように思います。
これらの動きは不可逆的なものであるように思われ、来年春頃に予定されると耳にする東京証券取引所の追加的な上場基準の緩和等の後押しもあり、来年以降はよりETF市場の商品数と運用残高が成長することを予想しています。
https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_15767337
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