
第50回「金融商品取引業者の事業報告書」について
株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーション株式会社は、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに当局の動向などをまとめ、発信しています。
今回は、「金融商品取引法第47条の2」(※1)の規定によって、投資運用業などの金融商品取引業者(第一種業者については同第46条の2が適用されますのでご注意ください)に、その作成と当局への届出義務が課されている「事業報告書」についてご説明します。
(※1)金融商品取引法第四十七条の二(事業報告書の提出)
金融商品取引業者は、事業年度ごとに、内閣府令で定めるところにより、事業報告書を作成し、毎事業年度経過後三月以内に、これを内閣総理大臣に提出しなければならない。
当該「事業報告書」は、決算書(貸借対照表や損益計算書などの計算書類)だけでは読み取ることが難しい会社の事業内容や役員・従業員に関する情報などを補足説明する役割も担っており、そのフォーマット(記載内容)は「金融商品取引業等に関する内閣府令第182条」(※2)に規定されています。
なお、会社法第435条(計算書類等の作成及び保存)によって、全ての株式会社に作成が義務付けられた「事業報告書等」は、法令上は別のものですのでご留意ください。
(※2)金融商品取引業等に関する内閣府令第百八十二条(事業報告書)
法第四十七条の二の規定により金融商品取引業者が提出する事業報告書は、別紙様式第十二号により作成しなければならない。(以下省略)
別紙様式第12号(※3)は、「1 業務の状況」と「2 経理の状況」に分かれていますが、「2 経理の状況」は、ほぼ決算書等の内容です。
(※3)2FH00000074821.pdf (出展:e-Gov法令検索)
「1 業務の状況」は、「(1) 登録年月日及び登録番号」を始めとして枝番を含めると30項目近くあり、この中から行う業務が該当するものに記載する訳ですが、どこに何を記載すれば良いのかを正しく判断するためには、金融商品取引法の正確な理解はもちろんのこと、様式に記載された多数の「注意事項」の読みこなしが求められます。
一例をあげますと、「(23) 適格投資家向け投資運用業等の状況 ①運用財産の状況」の「(注意事項) 」には、「『うち法第2条第8項第15号に掲げる行為に係るもの』の欄の金額は、『うち法第 63条第1項第2号に掲げる行為に係るもの』及び『うち附則第48条第1項に規定する業務に係るもの』に該当するものを除く。」などと記載されており、かなり難解な内容となっています。
なお、第二種業と投資助言・代理業については、関東財務局のホームページに記載例が掲載されていますので、参考にしていただければと思います。
最後に、事業報告書の当局への届出方法は、「金融モニタリングシステム(FIMOS)」を利用することになり、この認証にはデジタル庁が提供する法人・個人事業主向け共通認証システムであるGビズIDプライム・メンバーアカウントの取得が必要です。
(JAMPコメント)
そもそも事業報告書は、当局や株主・投資家等が、当該年度の金融商品取引業等の営業状況等を的確に把握するための重要な資料であり、その提出は金融商品取引業者としての基本的な報告義務ですから、正確に作成し、かつ期限内に確実に提出することが必要です。
なお当局は、提出された事業報告書の内容をきちんと見ています。
例えばですが、「投資運用業」と「投資助言・代理業」の両方を登録している金融商品取引業者が、長期に亘って投資運用業しか行っていない場合などに、当局から投資助言・代理業への今後の取組方針を確認されると言う様な事例があります。
このような確認やそれに伴う当局との折衝が、金融商品取引業者として今後のビジネス展開を見直すための良い機会になる可能性もありますから是非前向きに捉え、例えば事業報告書の「当期の業務概要」への記載内容も、実態に即した正確な記載を心掛けていただければと思います。
最後に、金融商品取引業者が、事業報告書の作成・当局への届出を行わなかった場合には、当局から業務改善命令(事業報告書の提出、再発防止策等の改善策の実施、及び財務局への報告等)が発出される可能性がありますし、更にその業務改善命令にも違反して、業務停止命令が発出された事例も存在しますので、くれぐれも疎かにしないようご留意ください。
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