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「JAMPの視線」No.311(2025年12月14日配信)証券業務基盤監理株式会社

JAMP 大原啓一の視点 2025年12月14日 

 先週後半は北海道出張だったのですが、金曜日の北海道は大雪で、なんと東京に戻る飛行機が土壇場で欠航になってしまいました。1時間半遅れで搭乗できてほっとしたのもつかの間、結局は滑走路までは出たものの、管制塔から離陸許可が出ずに欠航という判断になってしまいました。金曜日夜に予定されていた会社全体の忘年会への参加はかなわず、忘年会で上映されたという今年の振り返りのスライド動画をホテルでみながらひとりで涙を流していました。来年2月上旬に札幌の雪まつりに家族で観光に行く予定ですが、その時は天候が落ち着いていますように!

土曜日は更なる欠航リスクを避けるために新幹線を乗り継いで東京に帰りました

証券・資産運用業界に広がるミドルバックオフィス業務集約化の動き

 さて、日本証券業協会が主導する形で証券会社のミドルバックオフィス業務を集約する「証券業務基盤監理株式会社」を設立する動きが公表されたり、SBIグローバルアセットマネジメントがグループ内運用会社のミドルバックオフィス業務を集約する新会社を設立することを発表したりと、にわかに証券・資産運用事業領域の事業効率性・生産性の向上のための動きが盛り上がっているように感じます。創業からずっとその必要性を訴えてきた私たち・日本資産運用基盤としては、「基盤」仲間が増えることの嬉しさも含め、ようやく日本の金融業界があるべき方向に向かって動き始めたことを感慨深く感じます。

「証券業におけるミドル・バックオフィス業務の効率化 に向けた取組みについて」資料

 足もとのこのような動きに対しては、メディアの方々から「事業運営費用の削減が目的ですか。その効果はどれくらい見込めますか。」「個人投資家の費用負担が更に低くなることが期待されますか。」といったご質問を多くいただきます。また、「日本資産運用基盤が掲げてきた方向性にはなるものの、ビジネス的には競争が激しくなって大変ではないですか。」というご質問も頂いたりします。そこで今回のメールマガジンではそのようなご質問に対してコメントさせて頂きつつ、この流れについての私見を述べさせて頂きたいと思います。

単なる費用削減が目的であってはならない

 まず、ミドルバックオフィス業務の集約の目的のひとつとして、証券・資産運用事業に係る費用の削減があるのは間違いありません。両事業領域で提供付加価値のコモディティ化と「利潤(酸素)の蒸発」の流れが止まらないなか、事業として成立させるためには非高付加価値業務領域での効率化と費用削減の実現無しには、中小規模の金融機関はいうまでもなく、今後は大手金融機関ですら事業継続・成長が困難になるのは避けられないでしょう。その意味で非高付加価値業務であるミドルバックオフィス業務を外部もしくはグループ内で集約し、自社のリソースを高付加価値業務領域に厚く配賦するというメリハリを利かせた事業運営を行うことは極めて合理的だと考えます。

 ただ、このミドルバックオフィス業務の集約が単に費用削減だけを目的とするものであっては、業界全体としての「利潤(酸素)の蒸発」の流れを打ち返すには不十分であると考えます。重要なのは、費用や配賦リソースの削減幅そのものを生き延びるためだけの利潤(酸素)の源泉とするのではなく、そこで生まれた余裕をもって新たな提供付加価値の創出につなげることです。さもなくば、過去数十年にわたっての手数料収入の低下に対し、システムインフラ等の運営費用の低下等を活用し、やっとのことで利ザヤの確保に四苦八苦してきた従来型事業モデルの延命を繰り返すことになってしまいます。

 私たち日本資産運用基盤がいつも主張している通り、証券・資産運用事業モデルがブローカレッジ事業モデルの第1フェーズからポートフォリオマネジメント事業モデルの第2フェーズを経て、資産運用アドバイス事業モデルを中心とする第3フェーズへと移行する流れのなか、ミドルバックオフィス業務の集約化で生まれた余裕は、単なる延命に用いるべきではなく、事業モデルの抜本的改革にこそ活用されるべきである。これが私の考える足もとの動きの業界的意義です。

日本資産運用基盤が考える証券・資産運用事業領域のパラダイムシフト

事業モデル改革をサポートするための日本資産運用「基盤」

 また、業界全体で広がるこのような動きに対する日本資産運用基盤の貢献(競争力)という質問に対する解もここにあります。私たち日本資産運用基盤は事業支援「基盤」としての役割は、非高付加価値業務の集約「基盤」という表現でご紹介頂くことが多いために混同されがちなようにも思いますが、弊社が実現しようとしている貢献は、高付加価値サービスと生産性の高い事業運営の両立を実現するための新しい事業モデルの開発・移行へのご支援です。上述のように、単なる費用削減による延命をご支援することに私たちの狙いはありません。

 例えば、弊社のゴールベース型資産運用ビジネス支援サービス「GBASs」も、日本版ファンド・マネジメント・カンパニーを用いた資産運用会社のご支援も、最終的に目標としているのは、従来の証券・資産運用領域の事業モデルを抜本的に構造から改革し、ご支援先の金融機関がこれまでになかった新しい付加価値の創出・提供に注力することができるような環境の実現です。単に投資商品を販売するのではなく、お客様の人生により踏み込んだ資産運用アドバイスを提供する。投資運用業務に係る高度専門性を投資信託やETF、PEIT(未公開株式対象証券投資法人)のような形態でサービス化・事業化する。私たちの事業支援「基盤」はこれまでにない新たなサービス・事業モデルの実現のためにあり、その意味で例えば日本証券業協会やSBIグローバルアセット、その他の金融機関の同様の取り組みと競合するものではなく、連携することが期待されるものと整理しています。

以下、余談です

 親しくさせて頂いている一部の方々にはお話させて頂いたことがありますが、私が約8年前に日本資産運用基盤の設立を企画し始めたとき、最初に構想していたのは日本資産運用基盤に様々な地域銀行や証券・資産運用会社等に資本参加していただき、業界全体の「公器」的存在として運営することでした。もちろんそんなことは夢物語にしか過ぎず、結局は自分の自己資金でひとつの民間企業として立ち上げることになり、いま振り返るとまさにそのやり方が良かったなあと感じますが、今回の日本証券業協会が主導する証券業務基盤監理株式会社という「公器」的存在の設立の報に接し、もしかすると将来的に資産運用業協会による日本資産運用基盤の買収等もあるかも!?等の妄想にふけってしまいます。


JAMPメンバーの採用情報

 日本資産運用基盤グループでは、事業拡大に伴い一緒に働くメンバーを募集しています。
弊社にご興味のある方、ぜひ働きたいという方はこちらからお申し込みください。
まずはお話だけでも、という方も大歓迎です!

代表の大原とのカジュアル面談でもいいかな、という方ももっとウェルカムです!!

keiichi.ohara@jamplatform.com


News Picks ダイジェスト

代表取締役 大原啓一 のコメント

【FUNDINNO、東証グロース市場へ上場 未上場企業の成長支援】

大原のコメント→

 家計金融資産がスタートアップ企業の成長資金として活用され、その成長の果実が還流する流れを起こすというビジョンには共感しますが、機関投資家に比べて目利き力が乏しい個人投資家に対し、専門家によるゲートキーピングやリスク管理、銘柄分散等を伴わない形で個別銘柄への投資を推奨する仕組みには疑問を感じます。
 個人投資家に対する投資機会の提供としては、クロスオーバー投資運用戦略の公募投信であれ、PEIT(未公開株対象証券投資法人)であれ、上述のような機能を備える形で行われるべきであると考えます。
 ただ、あくまで余裕資金での「投資」という位置づけであり、一般の生活者はまず「将来に備える」ための「保険」や「資産運用」が基礎としてあり、そのうえで「投資」を考えるという順番で取り組むという金融教育が前提としてあってしかるべきでしょう。

https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_15643148


【地方の預金奪い合い ネット銀行6行40兆円突破・地銀は越境で対抗】

大原のコメント→

「金利のある世界」復活で銀行セクターは全般的にポジティブな恩恵を受けるというイメージを持たれがちですが、実際には金利というコモディティの水準競争が激化し、銀行間での金利引き上げによる預金獲得競争で体力の削りあいが進んでいくことは避けられません。ただ、この金利引き上げ競争の先には明るい未来はないと懸念します。
 法人・個人のお客様にコモディティではない独自の付加価値をどのように提供するのか、また、経済活動のインフラとしての存在感を金融・非金融の両面でどのように大きくするか、まさに金融機関としての付加価値が強く求められるようになることは間違いありません。
 その意味で、「金利引き上げで預金顧客をかき集め、そこに投資商品を販売」するのではなく、「資産運用サービスでしっかりとした付加価値を提供し、金利引き上げ競争に陥ることなく顧客を囲い込む」ことが今後は銀行の成長戦略のコアになると予想します。

https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_15646046


主任研究員 長澤 敏夫 のコメント

【金融機関の投信窓販、金利高でも販売姿勢不変 顧客は預金へシフト】

長澤のコメント→

 昨年春以降、金利ある世界となる中、個人預金が減少している銀行が増加していることもあり、預金獲得を優先し、資産運用ビジネスへの対面営業のリソース配分を見直す動きが出ているとも聞いておりましたが、投信販売に対するスタンスに変化がない金融機関が多かったのには安心しました。預金獲得強化といってもお願い営業が通じる時代でもなく、資産運用アドバイスなどを通じた顧客からの信頼度の向上なくして預け替えしていただけることはないのではないかと思われます。先日地域金融機関の経営者の方が、メインバンクであれば、金融商品を買って普通預金が一時的に減っても、すぐに他行からの預金で埋め合わされるとおっしゃっていたのが印象的でした。

https://newspicks.com/user/6551307/?ref=user_6551307&sidepeek=news_15664965



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