
第60回「金融商品仲介業と投資助言業の兼業について」
「日本資産運用基盤株式会社」を親会社に持つ「JAMPフィナンシャル・ソリューションズ株式会社」は、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。
今回は、既存のIFA企業が「金融商品仲介業と投資助言業の兼業」を目指し、投資助言・代理業の登録申請を行う際の、要検討事項等をまとめました。
1.利益相反発生リスク
金融商品仲介業と投資助言業を兼業すること自体は法令違反ではありませんが、各々の「収益構造」と「顧客との立ち位置」が全く異なると言う構造的な要因から、この二つの業を同時に営むことには、潜在的な利益相反発生リスクが存在しています。
(1)「収益構造」と「顧客との立ち位置」
①金融商品仲介業
一般的なIFAの主な収益は、証券会社から支払われる仲介手数料です。その源泉は、顧客が証券会社に支払う有価証券等の取引手数料ですが、IFAが顧客から直接仲介手数料を受け取る訳ではありません。従って、顧客に対する立ち位置は、証券会社の商品を販売しその取引手数料等から収益を得る「販売者側の立場」となります。
②投資助言業
一般的な投資助言業者の主な収益は、顧客から直接受け取る助言報酬です。証券会社への仲介行為などは行えませんので、顧客に対する立ち位置は、有価証券等の取引に関する「アドバイザーの立場」となります。
(2)潜在的な利益相反発生リスク
利益相反の発生リスクを極小化するためには、あらかじめ管理の対象となる取引類型を整理しておくことが重要です。以下は、金融商品仲介業と投資助言業を兼業する場合に、利益相反発生の可能性がある取引類型の一例です。登録申請の際には、利益相反管理規程などに想定しうる取引類型を全て記載し、その管理方法を定めることが通例です。
①利害対立型
金融商品仲介業の顧客AからX株式の買い申し込みを受ける一方で、投資助言業の顧客Bに対してX株式の売却を助言する場合など。
②競合取引型
金融商品仲介業の顧客AからX株式の買い申し込みを受け、投資助言顧客Bに対してもX株式の買い入れを助言する場合など。
③情報利用型
金融商品仲介業の顧客AからX株式に関する情報を入手し、投資助言顧客Bに対して当該情報を利用して、X株式に関する助言を行う場合など。
2.利益相反防止態勢
利益相反発生リスクを極小化する方策においては、「担当者の分離」「顧客の分離」「情報管理の徹底」「手数料体系の見直し」「顧客説明の徹底」などがポイントになります。もっともこれらの内のどれか若しくは全てを採用すれば良いと言う訳では無く、ビジネスモデル等に応じて最適な組合せを検討することになります。
(1)担当者の分離
金融商品仲介業と投資助言業の担当者を明確に分け、同一の役職員に両方の業務を行わせないと言う方策です。これによって、同一の担当者が一方の業務から得た情報を、もう一方の業務に利用で来る可能性が小さくなることなどが期待できます。
(2)顧客の分離
金融商品仲介業と投資助言業の顧客を明確に分け、同一の顧客に対して両方の業務を行わないと言う方策です。これによって、同一の顧客からの実質的な報酬の二重取りも出来なくなりますし、仲介業における過度な勧誘行為や、不適切な投資助言が抑制されることなどが期待できます。
(3)情報管理の徹底
金融商品仲介業と投資助言業において取得する顧客の売買動向などの情報が、他の担当者等に伝わらないように、厳格なアクセス権限を設定したり、各部署の部屋を分けるなどの徹底した情報遮断措置を実施すると言う方策です。
(4)手数料体系の見直し
例えば金融商品仲介業では、顧客が証券会社に支払う取引手数料の一部を仲介報酬として証券会社から受け取るのでは無く、顧客が証券会社に支払う口座管理手数料の一部として証券会社から受け取る方式に変更すると言う方策です。この報酬体系であれば、金融商品仲介業として高額な仲介報酬を得るために、助言業として敢えて手数料の高い金融商品の購入を助言すると言うケースを防止することが期待できます。
(5)顧客説明の徹底
例えば顧客に対して、金融商品仲介業と投資助言業を兼業している旨と、各々の業務内容・取引条件・仲介手数料の仕組み・助言報酬の体系・その他の注意点などを、詳細に説明し十分に理解いただくと言う方策です。そのためには、効率的で漏れが無い説明管理態勢の構築が必要です。
3.JAMP所見
前述のとおり、金融商品仲介業と投資助言業を同時に営むことは法令違反ではありませんが、厳格な利益相反防止態勢の構築等が求められますし、それらは形式的なものでは無く実態として利益相反取引を適正に管理し、その発生を防止できることが必要です。
では実質的に兼業は不可能かと言うとそうでは無く、現在も適切に稼働されている事例はいくつもあります。それらの企業は、新しいビジネスモデルなどの創出や、社内体制・報酬体系・外部支援態勢などの創意工夫によって、「本当に質の高い助言を顧客に届けたい」「発注行為などの顧客の手間を省いてあげたい」「優れた投資判断の成果を顧客に享受して欲しい」などの、顧客本位の熱い思いを結実させた好事例であると考えております。
当社は、国際金融都市を目指している東京都に協力して、金融商品取引業に関する登録申請手続き及び金融商品取引業者等の内部管理体制強化等に関する国内外の方々のご相談に対応させていただいております。初回の無料相談等につきましても、遠慮なく当社までお問合せください。