第68回 当局届出事項の落とし穴6
「日本資産運用基盤株式会社」を親会社に持つ「JAMPフィナンシャル・ソリューションズ株式会社」は、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。
今回は、5年前に大変ご好評をいただいた「当局届出事項の落とし穴シリーズ」の第6回として、「業務の内容及び方法を記載した書類(以下「業務方法書」と言います)」の変更届出に関する注意点をお伝えします。ポイントは、「業務方法書に記載した別紙規程を改定した場合には、業務方法書の変更届出が必要となる」という点です。
実は当該変更届出の注意点は、2021年4月の第5回 JAMPコンプラ・メルマガ「当局届出事項の落とし穴2」でも紹介したのですが、先般2026年4月28日に資産運用業協会から発出された「法令等違反事例集」によりますと、なんと「最長18年に及ぶ変更届出未提出」と言う法令違反が発生していましたので、再度このテーマを取り上げることとしました。
1.業務方法書とは
金融商品取引業者は登録の際に、登録申請書の添付書類として「業務の内容及び方法として内閣府令で定めるものを記載した書類」の提出を求められます。これがいわゆる「業務方法書」であり、金融商品取引業者において最も重要な社内規程の一つと位置付けられています。業務方法書の記載内容に変更があったときは、遅滞なく当局に届け出る必要があります。
2.変更届出の落とし穴
実は、業務方法書の記載内容自体に変更が無くても、変更届出が必要になる場合があります。例えば業務方法書の「○については別紙○規程に定める」と言う記載がある場合は注意が必要です。具体例として「当社が苦情等を受付けた際は、別紙『苦情等対応規程』に則って対応する」との記載があるとします。その場合には、この「苦情等対応規程」を改定すると、当局への業務方法書の変更届出が必要となります。その理由は、この苦情等対応規程が、業務方法書と一体として構成される社内規程であるからです。本来は、苦情等対応規程の内容は業務方法書の記載事項なのですが、全てを記載すると文量が多過ぎて却って判りづらいため、「〇については別紙〇規程に定める」と言う記載方法が認められており、その場合の当該社内規程は業務方法書の一部であるとされている訳です。
3.届出漏れの防止策
上記の届出漏れ等を防ぐ具体的な方策の一つとして、直接業務方法書に必要な内容を全て書き込んで、「〇については別紙〇規程に定める」と言う記載方法を一切採用しないという方法はあります。確かにこの方法であれば、社内規程を改定するたびに「これは業務方法書の別紙規程ではないか?」と確認する必要は無くなります。しかしながら、社内規程の改定箇所が業務方法書本文に記載されている場合には、いずれにせよ業務方法書の変更届出は必要になりますし、多くの文量を業務方法書にすべて書き入れることも、あまり現実的ではないように思われます。
重要なことは、直接業務方法書本文に記載すべき内容なのかそれとも別紙規程とすべき内容なのかを自らが的確に判断し、それらを適切に使い分けることです。そうすれば、より内容が濃くかつ理解し易い業務方法書を作成することが可能となり、業務全体に関わる内部管理態勢の強化にもつながります。 なお、「別紙〇規程」ではなく「別に定める〇規程」であれば、その規程は業務方法書の一部ではないとされていますので、業務方法書の必須記載事項ではない内容について社内規程を参照させる場合には、「別紙規程」ではなく「別に定める規程」と記載することが一般的です。
4.業務方法書の変更について
別紙規程の改定に限らず、組織体の変更や投資対象の拡大など、業務方法書の内容を変更すること自体は珍しいことではありません。ただし重要な内容の変更については、いきなりGビズIDで当局に変更届出を提出するのではなく、当局に対して事前相談を行うことが通常です。
例えば、投資一任業を行う投資運用業者が投資信託委託業に新規参入する場合などは、追加的な体制整備が必要であり、役員や重要な使用人を変更するケースもありますので、変更後の人的構成などについてあらかじめ当局の確認をいただいておけば、よりスムーズに進められると思われます。
5.業務方法書の策定について
新規に金融商品取引業の登録をされる場合や、既存の金融商品取引業者であっても新規業務に参入される場合などには、業務方法書の策定や変更が必要になり、金融商品取引法に規定された必要記載事項等を確認し対応されることになると思います。
できればその際に、金融商品取引法本来の趣旨である投資家保護の観点に立って、なぜそれらの項目を業務方法書に記載する必要があるのか、業務方法書の本来の目的は何なのかというところまで深堀していただければ、必要十分な内容の業務方法書の策定に繋がり、変更届出漏れなどの防止に寄与することになると思われます。
(JAMPコメント)
日本投資顧問業協会及び投資信託協会(現資産運用業協会)から発出される法令違反事例集は、投資運用業者等が同じ内容の法令違反を起こさぬように、具体的な防止策を策定する際の非常に有用な資料です。その法令違反事例の中では当局届出書の「提出遅延」の件数が比較的多いのですが、過去分を確認する限りその殆どが3~5か月程度の遅延であって、今回のような「未提出」の事例は極めて稀です。
では「遅延」か「未提出」かの判断はどのように行われるのでしょうか?通常は個別事例ごとに実態に即して実質的に判断される訳ですが、その際の観点は次のようなものと思われます。
(1)当局届出書の提出業務に関する、当時の内部管理態勢(社内規程や組織体制等)の構築状況?
(2)提出遅れや提出漏れが、役職員の故意なのか過失なのか、それともシステム上の問題なのか?
(3)当局等が指摘する前に、内部監査などによって発見され自主的に是正し、当局に報告済みか?
(4)速やかに再発防止策が策定され、それが実態として企図したとおりに機能しているかどうか?
これらが総合的に判断される訳ですから、仮に担当者がミスを発生させたとしても、①短期的には第1線である担当者の上席者が気づき、②短~中期的には第2線であるコンプライアンス部などが気づき、③中~長期的には第3線である内部監査部が気づく、と言う本来的に自浄作用が働く内部管理態勢を普段から構築しておくことが最も重要と考えます。
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