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「JAMPの視線」No.340(2026年7月5日配信)AIが奪うのは、営業員の仕事ではなく逃げ道である

JAMP 大原啓一の視点 2026年7月5日 

 先週半ばに札幌を訪問し、当社の株主・事業パートナーである平和不動産が運営するFinGATE札幌のオープニングセレモニーに参加してきました。5月にも札幌市のイベントに登壇し、国際金融都市構想の実現に向けた熱気を感じてきたばかりですが、今回もその勢いを改めて実感しました。パネルディスカッションでは、新興資産運用会社や金融スタートアップの経営者の皆さまが札幌にオフィスを開設する可能性について話されていましたが、私自身も思わず「当社も将来はぜひ札幌オフィスを作りたい」と言い出しそうになりました。いつか実現できるように頑張ります。

AIが変えるのは「提案」ではなく「接点」である

 さて、少し前の日本経済新聞等のメディアで、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクを含む計28社が、AIを活用した資産運用アドバイスの共通基盤を構築するという記事が掲載されました。その記事を読まれた地域銀行の方から、当社が資産運用会社や地域銀行等の金融機関の皆さまと推進するゴールベース型資産運用サービスにどのような影響があるのか、というご質問をいただきました。

 私は、資産運用アドバイス業務へのAI活用は、中長期的に非常に重要な動きだと受け止めています。なぜなら、金融機関のリテールビジネスが、従来の商品販売型から、データやテクノロジーを活用したアドバイス・伴走型モデルへ移行していく流れが、いよいよ本格化していることを示しているからです。そしてそれは、私たちがゴールベース型資産運用サービスで目指してきた方向性とも重なります。

 ただし、この動きを「AIが営業員を代替するのか」という問いで捉えると、本質を見誤ります。資産運用アドバイスにおいて、人間の介在は本来、コストではなく付加価値です。お客様の不安を受け止め、人生の選択に寄り添い、納得感を持って行動を後押しすることは、対面金融機関が持つ重要な価値です。

 一方で、人間が介在するからこそ、担当者によってカウンセリング、説明、アフターフォローの品質にばらつきが生じます。良い担当者に出会えば質の高い相談ができるが、そうでなければ商品販売に戻ってしまう。この「アドバイス品質のばらつき」こそが、対面金融機関が資産運用アドバイスを事業として広げるうえでの大きな制約のひとつでした。

 AIが本当に変えるのは、単なる商品提案ではありません。お客様が疑問を持った瞬間に相談できること、同じ質問を何度でもできること、面談前後の理解を補えること、そして相談内容がデータとして蓄積され、次の対話やサービス改善につながることです。つまり、AIアドバイザリーの本質は、営業員を置き換えることではなく、金融機関とお客様の接点を再設計することにあると私は考えます。これは単なる効率化ではなく、リテール金融のチャネル設計そのものの変化です。

「オルカン一択」の先にある本当のアドバイス

 AIによる資産運用相談に対しては、「結局、低コストの全世界株式インデックスを勧めるだけではないか」という見方もあります。これは一面では正しいと思います。長期・分散・低コストという原則は、AIが導入されても大きく変わるものではありません。

 しかし、ゴールベース型資産運用サービスにおいて、お客様に提案すべきなのは「ポートフォリオ」のみではなく、人生の目標や将来の資金ニーズを踏まえた「マネープラン」です。「ポートフォリオ」は「マネープラン」を実行するための構成要素の一つにすぎません。

 老後の生活資金に備えるといっても、何歳で仕事を辞めるのか、退職後にどのような生活を送りたいのか、ご家族に病気や介護の問題が生じたときにどう支えるのか、相続や住宅、教育資金とどう整合させるのか。こうした問いは、合理的な数値計算だけでは完結しません。

 AIは、必要資金を計算し、将来シミュレーションを提示し、選択肢を整理することはできます。しかし、お客様が本当に行動を変えるかどうかは、合理性だけでは決まりません。信頼関係に基づく納得感があって初めて、ナッジとして有効に機能し、お客様は不安を乗り越えて行動できます。少し挑発的に言えば、AIは良いアドバイザーを不要にするものではありません。悪いアドバイスが許される余地を小さくするものです。

金融AIで難しいのは、答えではなく責任である

 金融業界でAIを活用する際に最も難しいのは、AIがどれだけ賢い答えを出すかではありません。その答えを、金融商品取引業務の中で誰がどう使い、誰が説明し、誰が責任を持つのかです。AIが作成したマネープランを、誰がお客様に説明するのか。お客様の理解や意向を誰が確認するのか。将来の前提が変わったとき、誰がマネープランの見直しをサポートするのか。相場が大きく下落したとき、誰が不安に寄り添うのか。投資一任契約の勧誘・締結・運用・モニタリング・継続フォローを、どのような業務プロセスとして管理するのか。

 ここを曖昧にしたままAIを導入すると、見た目は新しくても、実態は従来型の商品販売の焼き直しになりかねません。金融業界では、新しい言葉と新しい画面に包まれた、古い商売が時々生まれます。AIアドバイザリーも、使い方を誤れば「高度化された商品販売支援ツール」に留まってしまう可能性があります。

 金融AIの本質的な論点は、予測精度や推薦精度だけではありません。アドバイスプロセスをどのように標準化し、記録し、監督し、お客様本位の業務運営として継続できるかです。つまり、AIの問題である前に、業務設計とガバナンスの問題なのです。

対面金融機関の価値は、AIでむしろ高まる

 私は、AIの進展によって地域銀行や証券会社等の対面金融機関の価値が失われるとは考えていません。むしろ、正しく使えば、その価値は高まると思います。

 地域銀行には、地域のお客様との長年の接点があります。預金、融資、住宅、相続、保険、事業承継など、お客様の人生や家族、地域に根ざした関係性があります。この関係性を、従来型の商品販売に使えば信頼は毀損されます。しかし、AIやデータを活用して、より質の高いカウンセリングと継続的な伴走に昇華できれば、それはネット証券や非金融チャネルには簡単に真似できない強みになります。

 実際、当社がご支援するゴールベース型資産運用ビジネス支援サービス「GBASs」のご支援残高は、先月半ばに1,200億円を突破しました。もちろん、この数字だけで何かを語り切れるわけではありません。それでも、アドバイザー金融機関やプラットフォーム金融機関の皆さまとともに、従来の商品販売型ビジネスを超えた新しい資産運用サービスのあり方を模索してきた取り組みが、少しずつ形になり始めていることの表れではあると感じています。

 当社のゴールベース型資産運用ビジネス支援サービス「GBASs」は、単なる診断ツールやポートフォリオ提案システムではありません。アドバイザー金融機関がお客様に対して、人生の目標や将来の資金ニーズを踏まえたゴールベース型のコンサルティングを行い、その内容を投資一任契約の勧誘・締結、運用、モニタリング、継続フォローまで含めた金融商品取引業務として実際に運営するための事業基盤です。

 今後、AIはこの基盤の中に当然取り込まれていくべきものだと思います。現場のアドバイザーの品質を平準化し、提案の抜け漏れを防ぎ、フォローの継続性を高め、お客様ごとのマネープランをより動的に見直していく。その意味で、AIはGBASsの敵ではなく、GBASsを進化させるための重要な部品です。

 資産運用アドバイスの未来は、営業員かAIか、という二択ではありません。お客様との信頼関係を持つアドバイザーと、アドバイス品質のばらつきを抑えるテクノロジーをどう組み合わせるかです。AIは人間を置き換えるのではなく、人間が本来発揮すべき価値に集中できるようにするものです。もっと言えば、AIは営業員から「商品を売る」という逃げ道を少しずつ奪い、「お客様の人生に向き合う」という本来の仕事に引き戻すものなのかもしれません。そこに、地域銀行等の対面金融機関の次の可能性があるのだと思います。


JAMPメンバーの採用情報

 日本資産運用基盤グループでは、事業拡大に伴い一緒に働くメンバーを募集しています。弊社にご興味のある方、ぜひ働きたいという方はこちらからお申し込みください。
まずはお話だけでも、という方も大歓迎です!

代表の大原とのカジュアル面談でもいいかな、という方ももっとウェルカムです!!

keiichi.ohara@jamplatform.com


News Picks ダイジェスト

代表取締役 大原啓一 のコメント

【仮想通貨業界で相次ぐトップ交代 「AI畑」人材も: NIKKEI Financial】

大原のコメント→

 暗号資産業界そのものについては、当社事業との直接的な関係は必ずしも大きくありませんが、記事の最後にある、フィンテックのスタートアップへの投資マネーが成長性だけでなく収益性を厳しく見極める局面に入った、という指摘には強く共感します。

 この数年で、金融スタートアップを取り巻く環境は大きく変わりました。低金利・過剰流動性のもとでは、ユーザー数、取扱高、将来の市場規模といった「成長ストーリー」だけで一定の評価を得られた時期もありました。しかし足元では、単に市場が大きい、テクノロジーが新しい、ユーザー体験が優れているというだけでは不十分で、その事業がどのタイミングで、どのような収益構造で、持続的に利益を生み出せるのかが厳しく問われています。

特に金融領域では、規制対応、コンプライアンス、顧客資産保護、大手金融機関との接続、既存インフラとの整合性が避けて通れません。創業初期には、既存金融を壊す、置き換えるという物語が分かりやすかった一方で、事業が次のフェーズに入ると、むしろ大企業、金融機関、規制当局との橋渡しができる人材や組織能力が重要になります。

 金融スタートアップの多くが、完全に独立した立ち位置だけで成長し続けることは、以前より難しくなっていると感じます。今後は、独立性や中立性を保ちながらも、大手金融機関や事業会社の顧客基盤、信用力、資本力、業務インフラをどう活用するか。そして同時に、成長性と収益性をどう両立させるかが問われる局面だと思います。

 フィンテックは「面白いことをしている会社」から、「金融の実務と収益構造に耐えられる会社」へと選別される段階に入ったのだと思います。派手なビジョンだけでなく、規制、提携、収益化、ガバナンスを含めて事業を組み上げられるか。そこに、これからの金融スタートアップの本当の勝負があるように感じます。

https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_17025454

【Investors piled into ETFs at a record pace in the first half of 2026.】

大原のコメント→

 米国上場ETFへの資金流入が過去最高ペースで進んでいるというニュースは、ETFが単なる低コストのインデックス商品ではなく、投資家のテーマ選択、地域分散、リスクテイクの主要な器になっていることを示していると思います。

 特にAI、ロボティクス、半導体、宇宙、インフラといったテーマに資金が流れている点は象徴的です。投資家はもはや「投信かETFか」ではなく、「自分の投資テーマをどの器で表現するか」という発想で商品を選んでいます。

 一方で、資金が集まるETFと集まらないETFの差はますます大きくなります。ETFは上場すれば自然に育つ商品ではありません。投資家認知、流動性、板の厚み、マーケットメイク、継続的なプロモーションが一体となって初めて市場の中で育ちます。ETFは作る商品ではなく、育てる市場である。日本でもこの発想が重要になると思います。

https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_17027170

【Japanese stocks hit by biggest foreign weekly selloff since March as tech rally cools】

大原のコメント→

 外国人投資家による日本株の売り越しは、短期的には相場材料の一つにすぎませんが、日本市場の構造を考えるうえでは示唆的です。

 日本株が海外投資家から注目されること自体はもちろん良いことです。しかし、海外マネーは機動的です。AI関連株への期待や円相場、金利、グローバルなリスク選好によって、短期間で流入も流出もします。

 資産運用立国を本気で目指すのであれば、海外投資家に買ってもらうだけでは不十分です。国内の家計金融資産が、預金から投資へ、さらに短期売買ではなく長期保有へと移っていく必要があります。

 そのためには、NISAの制度整備だけでなく、投資家が長期でリスクを取り続けられる商品、アドバイス、販売・運用インフラが必要です。

 日本市場の本当の安定性は、外国人投資家がどれだけ買うかではなく、国内の長期資金がどれだけ市場に根づくかで決まるのだと考えています。

https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_17027195

【アセットマネジメントOne、プライベート・インフラ・ファンドを設定へ】

大原のコメント→

 プライベート・インフラのようなオルタナティブ資産が、国内の富裕層向けに広がっていく流れは自然だと思います。上場株式や債券だけでは得にくいリターン源泉や分散効果を求める投資家にとって、インフラ、プライベートエクイティ、プライベートデットなどの選択肢が増えることは意味があります。

 ただし、ここで重要なのは「個人にもオルタナティブを提供できるようになった」という単純な話ではありません。むしろ、商品の高度化に伴って、運用会社や販売会社の説明責任が一段重くなるということです。プライベート資産は、上場商品と異なり、流動性、価格透明性、評価方法、運用期間、解約制限などの論点があります。これらを十分に理解しないまま、分散効果や安定収益だけを強調すると、将来の顧客不満につながりかねません。

 資産運用ビジネスが成熟するほど、商品ラインアップは高度化します。しかし、高度な商品を扱うほど、顧客理解、適合性確認、継続的な説明、ポートフォリオ全体の中での位置づけが重要になります。オルタナティブの民主化とは、単に買える人を増やすことではありません。難しい商品を、きちんと理解し、納得して、長期で保有できる投資家を育てることだと思います。

https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_17027217

主任研究員 長澤 敏夫 のコメント

【生保乗り合い代理店、手数料高い販売に傾斜 金融庁調べ】

長澤のコメント→

 乗り合い代理店には、複数の保険を勧める比較推奨販売が義務付けられておりますが、自らが受け取る手数料水準が高い商品を販売しているとなれば、比較推奨販売が十分機能していないということになり、手数料の開示に向けた議論が一気に進むのではないかと思われます。既に金融機関代理店では、手数料の顧客向け開示が進んでおり、そちらとの平仄を合わせていくことも必要かと思われます。

https://newspicks.com/user/6551307/?ref=user_6551307&sidepeek=news_17004910

【変額保険、運用次第で受取額が増減 高額手数料に注意】

長澤のコメント→

 変額保険は、(私募)投資信託での運用に保障機能が加わったものですが、運用に係る信託報酬の他にも、保険関係費用などのコストがかかるので、自分に本当に必要なものは何かを考えることが重要かと思います。運用と保障を分けて考え、保障も欲しいのであれば、投資信託と共済などの掛け捨ての保険の組み合わせでも良く、金融庁でもこういった組み合わせ商品は、それぞれ単品でも購入可能なものなのか説明することを求めています。

https://newspicks.com/user/6551307/?id=6551307&ref=user_6551307&sidepeek=news_17005417


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