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「JAMPの視線」No.347(2026年8月25日配信)地域銀行は、資本をどうリレーするのか

JAMP 大原啓一の視点 2026年8月25日 

 ふと気づけば、もう8月も下旬です。小学生の長男と次男の夏休みも最終コーナーに差し掛かり、宿題やら自由研究やらで何やら忙しそうにしています。思い返せば、私自身も学生の頃は、8月中旬には徳島の阿波踊りへ、下旬には高円寺の阿波踊りへ踊りに行くなど、同じ8月でも週ごとに違う彩りがあり、それぞれを楽しみにしていたように思います。いまは毎週のようにさまざまなエキサイティングな仕事の案件に向き合う一方で、夏らしい行事によって季節の移ろいを感じることは、ずいぶん少なくなりました。これからは仕事以外でも、季節を感じられる経験にもう少し目を配る余裕を持ちたいものだな、と子どもたちの夏休みを眺めながら思いました。

「銀行を束ねる」のではなく、「銀行機能をほどいてつなぐ」

 さて、先週のメールマガジンの本コラムでは、「銀行の目利きは、誰の資本を動かすのか」という問いについて考えました。銀行が持つ競争力は、バランスシートの大きさだけではなく、企業との長期的な関係から生まれる情報、案件を早期に発掘する力、審査やストラクチャリング、モニタリングといった「情報生産能力」にもあるのではないか。そして、その能力を銀行自身の預金と自己資本だけでなく、第三者の資本まで動かす力へ変えることができれば、地域金融の姿も大きく変わるのではないか、という問題意識を述べました。

 その直後、非常に興味深いニュースがありました。SBI新生銀行が地域金融機関と「地域成長投資連携協定」を結び、LBO、事業承継、再生可能エネルギー、データセンター、物流、都市・地域開発等の大型案件を共同で手掛ける広域的な仕組みを構築するというものです。8月5日時点では14行が参加し、さらに10行程度が加わる見込みとされています。SBI新生銀行がスポンサーやファンド等とのネットワーク、高度なストラクチャリングやシンジケーション機能を担い、地域銀行は顧客基盤、地域産業への知見、信用判断、資金供給力を持ち寄る。しかも地域銀行は単なる参加行ではなく、案件によって共同アレンジャーとして、初期検討、条件設計、リスク分析等から関与する構想です。一般的には「地域銀行を束ねて第4のメガバンクをつくる動き」と見ることもできるでしょう。それも一つの正しい見方だと思います。ただ、私はもう一つ別のものが動き始めているように感じます。

 複数行による協調融資、とりわけシンジケートローンそのものは、決して新しい金融技術ではありません。大型案件を複数の金融機関が分担して融資することは以前から行われてきました。今回より興味深いのは、一つの銀行の中に垂直統合されてきた金融仲介機能を、金融機関をまたいで組み合わせようとしていることです。案件を発掘し、企業やスポンサーと対話し、リスクを分析し、金融条件を設計し、資金を供給し、リスクを保有し、その後もモニタリングする。大手銀行はこうした機能を大きな組織の中に一体的に持つことで大型案件に対応してきました。これに対して今回の仕組みは、SBI新生銀行と地域銀行がそれぞれの強みを持ち寄るものです。だとすれば、本質は「小さな銀行を集めて大きな銀行にする」ことではなく、銀行の中にあった金融仲介機能をいったんほどき、それぞれ最も適した担い手へ再配置したうえで、もう一度つなぎ直すことなのかもしれません。これは、地域金融における水平分業の新たな形の一つだと思います。

「資金が足りない」の次は、「受け皿が足りない」

 この変化をいま考える意味は、金融業界の内側だけにあるわけではありません。2026年7月29日配信の「JAMPの視線 No.343」で取り上げた「骨太方針2026」と、同日に閣議決定された「日本成長戦略」は、17の戦略分野を軸に大胆な官民投資を進める方向を明確にしています。日本成長戦略では2040年度に国内民間設備投資250兆円を実現する目標が掲げられ、62の主要な製品・技術等について策定された官民投資ロードマップでは、現時点で2040年度までに累計370兆円超の官民投資が想定されています。もちろん、このすべてが地域開発プロジェクトになるわけではありません。しかし、クラウド・データセンター、GX・エネルギー、蓄電池、物流・港湾等、実際に地域へ大規模な設備やインフラを設置するものも数多く含まれており、日本全国でこれまで以上に大規模かつ長期の投資案件が生まれていく方向性はかなり明確になってきました。

 すると、次のボトルネックは「投資資金があるか」だけではなくなります。巨額の投資資金を受け止められる、投資可能な案件と金融仲介構造が地域に存在するのか。 No.343では「資産運用立国は、政策の貯金箱ではない」と書きました。政策的に重要な案件であることと、民間投資として魅力的であることは同じではありません。政府は補助金、保証、劣後資本、税制、規制改革等によって民間資本が参加できる条件を整えることはできますが、最終的な投資判断は民間が独立して行う必要があります。だからこそ、大きな投資パイプラインが形成されようとしている現在、金融側にもそれを受け止める仕組みが必要になります。地域企業やプロジェクトを発掘し、その事業性を磨き、リスクを評価し、第三者の投資家が自ら判断できる「投資資産」へ変換する。私は、これがこれからの地域金融にとって極めて重要な機能になると思います。政策資金を民間投資へ置き換えることではなく、政策の言葉で語られるプロジェクトを、投資家の言葉で評価できる資産へ翻訳する金融仲介機能が必要なのです。

銀行のバランスシートを束ねた、その先の「資本のリレー」

 もっとも、少なくとも現時点で公表されているSBI新生銀行と地域銀行の枠組みでは、資金供給の中心は引き続き参加金融機関のバランスシートです。一行では難しい大型案件も、多数の銀行が参加すれば対応できる範囲は広がります。しかし、GX、データセンター、大型インフラ、地域開発、事業承継等で必要となる資金がさらに巨大化し、期間も長期化すれば、銀行を何行束ねても、最終的には自己資本、ALM、大口与信・与信集中、流動性等の制約から自由になるわけではありません。

 そこで、先週のコラムからもう一歩進めて考えてみたいのが、「資本のリレー」という考え方です。ここでいう「資本」はエクイティだけを指しているわけではなく、銀行貸出、ファンド資金、保険・年金等の機関投資家資金まで、案件の各段階でリスクを引き受ける資金を広く含む意味で使っています。もちろん、資本をリレーするという金融手法自体が新しいわけでもありません。プロジェクトファイナンスでは、開発・建設段階の資金を事業安定後に長期資金へリファイナンスすることは以前から行われており、PEやVCにはEXITがあり、貸出債権にもセカンダリー市場があります。今回考えたいのは、そのリレーを個々の案件で偶発的に行うのではなく、地域金融の新たな事業モデルとして意図的に設計できないかということです。

 例えば、まだ事業リスクが高く、情報の非対称性も大きい案件形成の段階では、企業や地域をよく知る銀行、スポンサー、専門ファンド、必要に応じて政策金融等がリスクを取る。事業が動き始め、経営・運営体制が整い、キャッシュフローやリスクを第三者が評価できる状態になれば、その段階のリスクに適した保険会社、年金、資産運用会社、ファンド等の長期資本へ受け渡す。そして初期段階で使われた銀行やファンドの資本が回収されれば、それを次の案件へ回すことができます。地域への資金供給力を高めるとは、一つの銀行がどれだけ多くの資産を最後まで抱えられるかだけではなく、限られた資本を案件の成熟に合わせて最適な担い手へ渡し、次の案件へどれだけ循環させられるかということでもあるのではないでしょうか。

 そして、この変化は地域銀行の収益モデルにも関係します。自行のバランスシートに貸出資産を長期間保有し続け、その利ざやだけを収益源とするのではなく、案件の発掘、ストラクチャリング、アレンジメント、投資家への接続、その後のモニタリングといった情報生産機能そのものから対価を得る余地が広がります。資本のリレーとは単なるバランスシート管理の技術ではなく、地域銀行の利益プールを「資金を持つこと」から「案件をつくり、資本を動かすこと」へ広げる可能性を持つものでもあると思います。

 ここで、PEIT(未公開株式等対象投資法人)の意味も見えてきます。PEITは案件を生み出す装置でも、開発リスクを消す魔法の箱でもありません。しかし、企業やプロジェクトが一定の段階まで育ち、その事業性、ガバナンス、リスク等を外部投資家が評価できる状態になった後、その企業等への投資をPEITの投資対象として適切に組み込めるのであれば、初期段階の資本から、より長期の第三者資本へバトンを渡す「中継点」の一つになり得ます。上場しても原資産そのものが流動化するわけではなく、投資証券に十分な市場流動性が自動的に生まれるわけでもありません。ただし、原資産に必要な長い投資期間と、一人ひとりの投資家の保有期間を一定程度切り離す可能性はあります。

 だからこそ、地域PEITの価値も「地域版の新しい金融商品をつくる」ことにあるのではなく、地域で生まれた案件を地域内外の長期資本へ接続し、初期資本を次の案件へ戻す資本循環の一部になれるかにあるのだと思います。札幌証券取引所の長野理事長がNIKKEI Financialのインタビューで、再生可能エネルギーやAIデータセンター等を念頭に地域PEITを研究していると述べるとともに、地域には「お金を引っ張ってくる機能」と「そのお金が循環する機能」が必要だとの問題意識を示していることも、この観点から非常に興味深く感じます。

資本はリレーできても、責任は曖昧にできない

 ただし、ここには非常に重要な条件があります。資本はリレーできても、責任までリレーの途中で曖昧にしてはいけない。 まず、「銀行が持ちたくないリスク」と「銀行が持ち続けにくいリスク」は分けて考える必要があります。期間が長い、案件規模が大きい、特定先への集中度が高い、銀行規制上の資本コストが重いといった理由から銀行には長期間保有しづらい資産でも、長期負債を持つ保険会社や年金、十分に分散されたファンド等にとっては、価格が適切であれば合理的な投資対象になり得ます。これが「資本のリレー」が生み得る一つの価値です。一方で、銀行が信用力に懸念を持ち、自行では保有したくない案件だけをファンドや投資家へ渡すのであれば、それは金融仲介の高度化ではなく、単なるリスクの押し出しになりかねません。

 案件を発掘する主体と最終的にリスクを負う主体が異なるほど、責任の設計はむしろ重要になります。誰が案件を発掘するのか、誰が事業を実際に経営・運営するのか、誰が投資判断をするのか、誰が価値を評価するのか、誰がモニタリングを続けるのか。そして案件がうまくいかなかったときに、誰がどのリスクを負うのか。金融の仕組みを整えれば、良い投資案件が自動的に生まれるわけではありません。地域企業、インフラ、プロジェクトを実際に運営し、結果責任を負う経営人材や専門オペレーターがいなければ、どれほど精緻な金融の器をつくっても投資可能な資産にはなりません。また、銀行が発掘した案件へ第三者資本を入れるのであれば、その案件が銀行から独立して投資に値するかを改めて検証する必要があります。系列の資産運用会社が関与する場合には、なおさらです。資産運用会社の役割はグループ銀行の判断をそのまま追認することではなく、投資家の立場からもう一度案件を評価し、価格とリスクを見極め、場合によっては「投資しない」と判断できることにあります。

 適正な価値評価、利益相反管理、案件形成者による適切なリスク保有、透明な情報開示、独立した投資判断。こうした仕組みがなければ、第三者資本への接続は単なるリスク移転になってしまいます。だからこそ、重要なのは新しい「箱」そのものではありません。案件形成から投資、事業運営、長期資本への受け渡し、初期資本の再投資まで、資本の流れと責任の所在をセットで設計すること。 そこまで含めて金融仲介なのだと思います。

地域銀行グループが運用子会社を持つ意味も広がる

 このように考えると、地域銀行グループが資産運用会社を持つ意味も少し違って見えてきます。これまで多くの地銀系資産運用会社は、投資信託商品の企画・運用や、親銀行等の販売チャネルへの商品提供を中核機能として発展してきました。しかし、地域銀行が生産する企業情報や案件を第三者の長期資本へつなぐことが重要になるのであれば、地銀系資産運用会社にはもう一つの新たな役割が生まれ得ます。それは、地域で見つかった「案件」を、投資家が独立して判断できる「投資資産」へ翻訳し、資本のリレーをつなぐ中継点になることです。もちろん、それを必ず地域銀行グループ内の資産運用会社が担う必要はありません。独立系資産運用会社、PE・VC運用会社、インフラ運用会社、開発プロジェクトに経験を持つ商社や専門事業者、外部専門人材等と組み合わせてもよいでしょう。大切なのは、銀行、資産運用会社、事業運営者、投資家を一つの会社の中に押し込めることではなく、それぞれが最も強みを発揮できる場所へ機能と責任を配置することです。

 そして、ここまで考えると、「地域金融」の意味も少し変わってくるように思います。地域で集めた預金を地域企業へ貸すことは、もちろん地域銀行の重要な役割です。ただ、地域金融の「地域性」は、資本がどこに存在するかだけで決まるものではないのではないでしょうか。地域企業との関係を通じて価値ある情報を生産し、案件を発掘し、それを投資可能な資産へ変換し、そのリスクに最も適した資本までつなぐ。地域で生産された情報によって、地域内外の資本を動かす。 それもまた、これからの地域銀行の重要な役割になり得ると思います。

 私たち日本資産運用基盤も最近、地域銀行や地方公共団体、資本市場関係者の皆さまと、地域企業やプロジェクトをどのように第三者資本へ接続し、その資本を循環させられるのか、そのなかで地域PEIT等の仕組みがどのような役割を果たし得るのか、具体的な議論を重ねています。投資信託、私募ファンド、PEIT等の投資ビークルを組成・運営し、必要に応じて資本市場へ接続するための「基盤」の整備も、その一部です。ただ、私たち自身も、新しい金融商品や器をつくること自体が目的だとは考えていません。誰が案件を発掘し、誰が事業を運営し、誰が投資判断をし、誰がリスクを保有し、誰がモニタリングし、それぞれが何の対価を得るのか。そして、一つの案件に使った資本を、どの段階で誰へ受け渡し、どう次の案件へ循環させるのか。その分業構造まで設計されて初めて、「基盤」は本当に機能するのだと思います。

 先週は、「銀行の目利きは、誰の資本を動かすのか」と問いかけました。今週は、その問いをもう一歩先へ進めたいと思います。その資本は、一つの主体が最初から最後まで持ち続けなければならないのでしょうか。これから日本全国で巨大な成長投資が動き始めようとしています。そのとき地域銀行の競争力を決めるものは、預金量や貸出余力だけではないはずです。地域でしか得られない情報から投資可能な案件をつくり、そのリスクに最も適した資本へバトンを渡し、回収された資本をまた次の案件へ回していく。そして、地域銀行自身も、貸出資産を長く保有することで得る利ざやだけでなく、案件の発掘、形成、ストラクチャリング、資本への接続、モニタリングといった「資本を動かす機能」そのものから対価を得る。 地域銀行の利益プールもまた、「どれだけ資金を持ち、貸すか」から、「どれだけ良質な案件をつくり、最適な資本を動かせるか」へと広がっていくのではないでしょうか。銀行のバランスシートを束ねる金融から、資本をリレーし、循環させる金融へ。 その仕組みを今からつくれるかどうかが、各地域に訪れる成長投資の機会を、本当の地域の成長へ変えられるかを左右するのだと思います。私は、その先にこれからの地域銀行グループが担う、新しい金融仲介の姿があるように思います。


JAMPメンバーの採用情報

 日本資産運用基盤グループでは、事業拡大に伴い一緒に働くメンバーを募集しています。弊社にご興味のある方、ぜひ働きたいという方はこちらからお申し込みください。
まずはお話だけでも、という方も大歓迎です!

代表の大原とのカジュアル面談でもいいかな、という方ももっとウェルカムです!!

keiichi.ohara@jamplatform.com


News Picks ダイジェスト

代表取締役 大原啓一 のコメント

【スペースXのIPO、モルガンSに「繰り返し届く贈り物」-まず報酬163億円】

大原のコメント→

 IPOとは、企業価値が創業者や役職員の個人金融資産へ転換される瞬間でもあります。そこで株式報酬管理や投資銀行業務を通じて顧客接点を握っていれば、一回限りの引受手数料を、長期のウェルスマネジメント収益へ変換できる。

 つまり投資銀行業務そのものが、富裕層ビジネスの顧客獲得チャネルになっているわけです。証券会社の利益プールを事業部門別に見るより、一つの顧客関係を法人から個人まで何回収益化できるかで見る方が、これからの金融グループの競争力は分かりやすいのかもしれません。

https://newspicks.com/user/121187/?id=121187&ref=user_121187&sidepeek=news_17313952

【ソニーFG、一部保険商品で解約率高止まり-円安で外貨建てが増加】

大原のコメント→

 貯蓄性保険は保険会社から見れば長期負債ですが、契約者には解約という選択肢があります。金利や為替が動けば、その選択肢の行使確率も変わり、負債側のキャッシュフロー特性まで変わる。

 つまり金利のある世界でALMが難しくなるのは、資産側の債券価格が動くからだけではありません。商品設計や販売によって生まれた「顧客行動のオプショナリティ」が負債側にもあるからです。

 保険、預金、債券、運用商品が同じ顧客資金を奪い合うようになれば、解約率は単なる営業KPIではなく、市場リスクを映す指標として見る必要があると思います。

https://newspicks.com/user/121187/?id=121187&ref=user_121187&sidepeek=news_17313953

【生損保の超長期債買越額が3年ぶり高水準、6月日証協-需要安定の兆し】

大原のコメント→

 ALM上の長期債需要はもちろん残ります。ただ、財務省自身、生保の規制対応需要の一巡を前提に超長期債の発行を減らしている。今回の買いは、金利上昇によって投資対象としての相対価値が改善し、価格が需要を呼び戻した面もあるでしょう。

 そうだとすれば重要なのは、超長期国債が「規制対応等で買われる資産」から「価格が合えば買われる資産」へ近づいていることです。国債管理政策も、投資家需要を所与のものではなく、価格によって動く内生変数として考える必要があるのではないでしょうか。

https://newspicks.com/user/121187/?id=121187&ref=user_121187&sidepeek=news_17313954

【2026年8月、銀行「預金金利」ランキングTOP3。あおぞら銀行、普通金利を「1%」の大台に乗せる】

大原のコメント→

 普通預金1%を「預金者に金利が戻った」という話だけで見ると、銀行経営への影響を小さく見積もると思います。ゼロ金利時代、預金は価格をほとんど意識されない粘着的な負債で、決済口座、メイン取引、銀行の資金調達がほぼ一体でした。金利差が見えるようになると、預金自体が比較される商品になります。

 すると銀行が競うのは預金金利だけではない。給与振込、カード、証券、資産運用など他の利益プールを使って、どこまで預金を維持できるかという「顧客関係全体の採算」の競争になる。

 金利正常化は貸出利ざやには追い風ですが、同時に、これまでほぼ無料だった預金フランチャイズに市場価格を付ける局面でもあると思います。

https://newspicks.com/user/121187/?id=121187&ref=user_121187&sidepeek=news_17254358

【ローソンでJPYC決済を実体験 コンビニのレジで払う円建てステーブルコイン】

大原のコメント→

 「コンビニでステーブルコインが使えた」という新しい決済手段の話より、既存POSにステーブルコイン決済をそのまま接続できたことの方が構造的には面白いと思います。利用者から見た体験が既存のコード決済と同じになれば、ステーブルコインであること自体は表から消えていきます。

 そのとき競争の主戦場はレジではなく、ウォレット、本人確認、発行・保全、交換・清算、決済データを誰が担うかという裏側に移る。つまりステーブルコインは「暗号資産で買い物をする」話というより、銀行口座・決済・カストディ等に束ねられてきた金融機能を再配置する話として見た方が面白い。

 金融のデジタル化は、画面が変わることではなく、裏側の配管を誰が握るかが変わることだと思います。

https://newspicks.com/user/121187/?id=121187&ref=user_121187&sidepeek=news_17314118

【SBI新生の融資連合、狙いはメガの間隙「地方」: NIKKEI Financial】

大原のコメント→

 これまで一つの銀行の中に束ねられてきた「案件発掘・審査・ストラクチャリング・資金供給」を、金融機関をまたいで分業し始めている点が非常に興味深いと感じます。

 ただ、これはまだ「銀行のバランスシートを束ねる」段階でもあります。地域銀行の本当の強みが地域企業との関係や情報生産力にあるなら、その目利きを必ず自行の預金と自己資本で実装する必要はない。銀行が案件形成や初期資金を担い、事業が投資可能な状態になれば、地銀系運用会社が独立して選別し、PEIT(未公開株等対象投資法人)等のビークルを通じて地域外も含む長期資本へ接続する。そうした資本のリレーも考えられます。

 もちろん、銀行が持ちたくないリスクを市場へ移せばよいという話ではありません。独立した投資判断、価値評価、利益相反管理がなければ、金融仲介の高度化ではなく単なるリスク移転になります。

 地域金融の競争力は、これから「どれだけ貸せるか」以上に、良い案件を投資可能な資産へ翻訳し、誰の資本まで動かせるかで決まるのではないでしょうか。

https://newspicks.com/user/121187/?id=121187&ref=user_121187&sidepeek=news_17316402

【メガバンク「超富裕層」争奪 三井住友は営業員2倍、みずほは5割増 - 日本経済新聞】

大原のコメント→

 大手銀行グループの超富裕層部門への人員増を見ていて、むしろ気になるのは、「誰に人間のアドバイスを提供するのか」という金融サービスの経済性です。

 超富裕層なら、資産運用だけでなく、M&A、事業承継、不動産、信託、融資など複数の利益プールが一人の顧客に集まり、高度な専門人材を厚く配置しても採算が合う。これは合理的です。

 ただ、その裏返しとして問われるのは、その他の顧客へのアドバイスをどう成立させるかです。商品販売の収益性が低下するなか、従来と同じ人海戦術では難しい。超富裕層向けではアドバイスを徹底的に「個別化」し、それ以外ではAIやデジタル、共通基盤を使って、良質なアドバイスを「産業化」する。

 大手銀行グループの富裕層シフトは、資産格差を映しているだけでなく、金融アドバイスの提供モデルそのものが二層化していく転換点なのかもしれません。

https://newspicks.com/user/121187/?id=121187&ref=user_121187&sidepeek=news_17315941

【松井証券、IR動画で上場企業支援 100万人に魅力訴求】

大原のコメント→

 興味深いのは、オンライン証券会社がメディア化していることに留まらず、これまで投資家から売買や残高を獲得するためのB2C資産だった顧客基盤が、発行体にとってのB2B資産にもなり始めていることだと思います。

 一般のメディアが提供できるのは主に「認知」までですが、証券会社なら、認知→関心→銘柄検索→売買→保有までを同じ顧客接点の中でつなげられる。将来的な収益機会も動画制作料だけではなく、IR支援、個人株主基盤の形成、IPO後の継続的な認知・理解形成などへ広がり得ます。

 さらに競争力になるのは、登録者数そのものより、どの情報が、どの投資家層のどのような投資行動につながったかを把握できることでしょう。その知見を発行体側へ還流できれば、単なる広告ではなく、企業と投資家の間のディストリビューションそのものを設計する機能になります。

 取引がコモディティ化するほど、オンライン証券会社の次の利益プールは、投資家からだけでなく「投資家にアクセスしたい側」にも広がっていく。そのとき競争力になるのは、単なるリーチではなく、投資家の関心を実際の投資行動や株主形成までつなぐ力なのだと思います。

https://newspicks.com/user/121187/?id=121187&ref=user_121187&sidepeek=news_17323603

【富裕層に投資助言、米ファンドが日本の大手買収へ ニーズ多様化に対応 - 日本経済新聞】

大原のコメント→

 IFA業界再編は、コンプライアンスコストの上昇や富裕層ニーズの複雑化で「規模」が必要になった、という説明はその通りだと思います。ただ、PEが大手IFAを買収する段階まで来たこと自体に、もう一つの意味を感じます。

 担当アドバイザー個人に顧客との信頼やノウハウが帰属したままなら、人が動けば顧客も動き、企業価値はなかなか定着しません。M&Aが本格化するには、顧客理解、提案プロセス、専門家連携、コンプライアンス、継続フォローまでを組織に蓄積し、顧客との関係を会社として継承できる必要があります。

 再編の本質はIFAが大きくなること以上に、資産運用アドバイス業が「個人の力量に依存する仕事」から「継承可能な企業」になれるかなのかもしれません。PE参入は、その転換を測る一つの試金石だと思います。

https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&id=121187&sidepeek=news_17347677


主任研究員 長澤 敏夫 のコメント

【大和証券のファンドラップ、アフターケアが成長エンジン 3人に2人が「リピーター」】

長澤のコメント→

 金融庁では昨年ファンドラップについて重点的にモニタリングを行い、先月公表した年次レポートでは14ページ、2割強のページを割いて、顧客に提供している付加価値の内容や、その発揮状況について論じています。

 その中で、ファンドラップの中核的な価値は、顧客ごとに「設計・管理される資産配分」及び(記事にあるような)「継続的な顧客対応や助言」を通じて、顧客の資産管理と投資判断を一体的に支援する点にあると考えられるとしています。そして、ファンドラップにおいて提供されるサービスの内容が、「形式的・画一的な運用管理にとどまる場合」や、「個別商品の販売後に一般的に行われる定期的な運用報告やフォローアップと実質的な差異が認められない場合」には、顧客が負担するコストに見合う付加価値が提供されているかについて疑義が生じ得ると断じています。

 ファンドラップについては、ここ数年で取り扱い金融機関が拡大している中、順調に残高を伸ばしている先と課題を抱えている先があると聞きますが、顧客の側からみて、これらの付加価値を感じることができているかが、差となって現れているのではないかと思われます。

https://newspicks.com/user/6551307/?ref=user_6551307&sidepeek=news_17324333

【ファンドラップ大手4社の販売額、4〜6月は過去最高 - 日本経済新聞】

長澤のコメント→

 金融庁のモニタリング結果では、ファンドラップの付加価値を検証するにあたり、「バランス型インデックスファンド」や「ラップ型ファンド」との比較が行われています。同レポートでは、これら2つが単なる「商品」であるのに対し、ファンドラップは「運用設計・管理」や「コンサルティング・継続的なアフターフォロー」といった役務を含む「包括的な金融サービス」であると定義づけています。そのうえで、「他の金融商品との比較においては、運用成果だけでなく、提供される役務の内容やその実効性を含めて評価することが重要である」と指摘しています。

 レポート全体としては一見厳しい内容に思えますが、金融庁としては「顧客の安定的な資産形成を支援する観点からは、有効な選択肢の一つとなり得る」として、健全な市場の育成を期待しているのではないかと考えられます。 

https://newspicks.com/user/6551307/?id=6551307&ref=user_6551307&sidepeek=news_17339726

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