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「JAMPの視線」No.282(2025年5月25日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】


 目次
①JAMP 大原啓一の視点
②JAMPメンバーの採用情報
③NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
④インフォメーション



JAMP 大原啓一の視点 2025年5月25日


 地方への出張が連続していたり、プライベートでも自宅の引っ越しがあったりでバタバタしていたせいか、先週後半はかなり久しぶりに体調を崩して寝込んでいました。つい最近までは、夜中までたくさんお酒を飲んだ後、朝まで自宅で仕事し、そのまま出社とかしても平気だったのですが、さすがに年齢的に無理がきかなくなってきているのかもしれません。食事中に目の前でいきなり失神して倒れたりすることがないよう、今後はこれまで以上に体調管理にも気をつけたいと思います。

 さて、昨年5月末の金融商品取引法改正で新設された「投資運用関係業務受託業」が今月頭からいよいよスタートしました。資産運用会社のミドルバックオフィス業務の外部委託を促進するための施策であり、「資産運用立国実現プラン」の目玉のひとつと位置付けられているため、どんな事業者が登録を申請するかに資産運用業界の注目が集まっています。ただ、登録自体は任意であり、無登録であってもミドルバックオフィス業務の外部支援自体は可能であるため、ひとえに事業上のメリット・デメリット次第と思われます。 

 資産運用会社のミドルバックオフィス業務のうちアドミ業務と総称される業務、特に外部委託の主な対象となる投資委託業のアドミ業務(投信計理業務、ディスクロージャー業務、ドキュメンテーション業務等)については、既にこれまでもNRIプロセスイノベーションや三菱UFJ信託銀行等が提供してきているものです。「投資運用関係業務受託業」に登録する事業者の支援を受けることで資産運用会社側が得られる人的構成要件の緩和の効果も限定的であると思われ、改めてそのようなサービスプロバイダーが「投資運用関係業務受託業」に登録する事業上のメリットは小さいように感じます。
 実際、同サービスのプロバイダー最大手の一角であるNRIプロセスイノベーションは、業界の噂ベースではありますが、登録しない方針であると耳にします。一方、先週の日経新聞の報道によると、大手信託銀行はそろって登録する方向で検討をしているようです。事業的な効果というよりも、「資産運用立国」を推進する政府・金融庁への賛同の意を具体的行動で表現することが主な目的でしょうか。

 投信委託会社の国内籍投信のアドミ業務の外部委託については、NRIプロセスイノベーションと三菱UFJ信託銀行の2強で勢力図はほぼ決まっている印象はありましたが、先日の三井住友信託銀行と大和証券グループの提携により、三井住友信託銀行の同領域での存在感が今後は高まっていくことも予想されます。今回の「投資運用関係業務受託業」の新設とそこへの姿勢表明的な登録をきっかけに、日本の投信アドミレイヤーのインフラが「2+1社」を中心に高度化され、その前向きな効果がそれ以外のPE/VCやPEIT(未公開株対象証券投資法人)といった非公開投資ビークルのアドミレイヤーのインフラ高度化にも波及することが期待されます。

 一方、資産運用会社のコンプライアンス業務の外部委託サービスについては、日経新聞の記事ではコンサルティング会社や法律事務所がコンプライアンス業務の外部委託サービスで登録することが想定されると書かれていますが、少なくとも私が側聞する範囲では、法律事務所は金融庁の監督下に入ることへの慎重姿勢が強く、現時点で登録に積極的とは言いがたいように見受けられます。新興・外資系の資産運用会社のコンプライアンス業務の外部支援はこれまで主に法律事務所が担ってきた経緯がありますが、彼らが登録を見送るのであれば、実際に登録するサービスプロバイダーはほとんど出てこない可能性もあります。

 コンプライアンス責任者は金融商品取引業者において「重要な使用人」として位置付けられており、本制度により人的構成要件が緩和されることの意義は大きいと見込まれます。従って、「投資運用関係業務受託業者」への需要は大きくなると思われる一方、体制が脆弱な新興運用会社に対してコンプライアンス責任の一端を担うことの事業リスクも無視できず、事業性の判断は容易ではありません。

 このような状況下、弊社・日本資産運用基盤は、「投資運用関係業務受託業」のコンプライアンス業務の外部支援カテゴリーでの登録を行なう予定です。どのような事業上のメリットや負担、リスク等が見込まれるかを慎重に検討した結果、先週の弊社取締役会で登録申請することを機関決定しました。まずは弊社グループ内に複数ある金融商品取引業子会社のコンプライアンス機能を集約するために同ライセンスを活用しつつ、段階的に外部向けのサービス提供を進めていく方針です。

 上述の通り、「投資運用関係業務受託業」のうちコンプライアンス業務の外部支援については、一定程度の事業メリットは見込まれる一方、弊社が負う負担やリスクも相応にあると思われることに加え、制度自体も新しく、当局対応負担等も読み切れないという不透明感があることは事実です。ただ、資産運用業界の事業構造のアンバンドリングを通じた生産性向上は弊社が創業時から提言してきたことであり、自意識過剰かもしれませんが、今回の金商改正はそうした提言を踏まえてのものという側面もあると考えています。それであれば、今回の「投資運用関係業務受託業」制度を率先して登録し、その制度の使い勝手や資産運用業界への効果を自ら検証し、運用実績や実務課題等を当局に還元するのも弊社の役割であると判断しました。

 弊社・日本資産運用基盤は、「金融ビジネスを最適化する」をミッションとし、我が国の金融・資産運用ビジネスの効率性・生産性を向上させる「基盤」ソリューションを、資産運用会社や証券会社・地域銀行等の金融機関向けに設計・提供しています。今回の「投資運用関係業務受託業」への登録とその機能強化はその一環です。創造的かつ構造的なアプローチの取組みにご関心をお持ち頂ける資産運用会社のコンプライアンス業務担当者の皆さまにおかれましては、ぜひ弊社採用窓口もしくは大原までご連絡いただけますと幸いです。一緒に日本の資産運用業界の次世代インフラを構築・運営しましょう。



News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)


【【フジテレビ】あの大株主がめっきり無口になった事情】
大原のコメント→
 ダルトン・インベストメンツがフジメディアホールディングスに投資をし始めたのは足もとの不祥事騒動の前からなので、本記事が憶測するレオスキャピタルワークスのような「マーケティング」目的ではないと思われますが、結果的にダルトンが昨年秋に立ち上げた公募投信は、不祥事騒動でフジメディアホールディングスに世間の注目が集まるなか、大きく残高が増加していますので、後付けながら「マーケティング」効果は出ているように思います。




News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)


【地銀、「最善の利益」対応に差 外貨建て保険販売で】
長澤のコメント→
 一般に商品開発を行う際には販売対象顧客を想定すると思いますが、保険に限らず金融商品の場合は、誤解を恐れずに言えば、ある程度お願い営業が通るような親密顧客への販売が多かった時代が続いたため、そういった見込みリストの顧客が想定顧客となってしまって、他方、組成会社の方も販売会社が売りやすい商品を、という発想になっていたと思います。
 今回の外貨建て保険の想定顧客という話も急に出てきたわけではなく、4年前から「重要情報シート」に記載が求められ、それを顧客に説明する流れになっていたはずですが定着せず形骸化してしまったため今回の強化策となったと理解しています。
 外貨建て保険を含む運用タイプの保険の販売において、相続人へ遺す資金なのか、生前贈与や年金の補完として定期金受取が目的なのか、様々な機能や特約がある中、顧客と販売商品のミスマッチを回避する取組みは、苦情抑制のみならず、契約者の家族との持続的な取引関係の構築にも不可欠であり、販売会社としても、やらされ感を抱くことなく自分事として、安定した顧客基盤と収益の確保に不可欠なものとして捉えることが必要ではないかと思われます。