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「JAMPの視線」No.274(2025年3月30日配信)

次世代の、挑戦する金融へ
日本資産運用基盤グループ メールマガジン【JAMPの視線】


 目次
①JAMP 大原啓一の視点
②JAMPメンバーの採用情報
③NewsPicks ダイジェスト
- 代表取締役 大原啓一
- 主任研究員 長澤敏夫
④インフォメーション



JAMP 大原啓一の視点 2025年3月30日


 3月頭に新オフィスに移転し、当初は茅場町の旧オフィスに行ってしまう等のうっかり間違いもありましたが、ようやく慣れてきました。ランチ事情も安定し、最近は小川町交差点近くの「なぜ蕎麦にラー油を入れるのか。」という創作蕎麦のお店がお気に入りでほぼ毎日そこでお昼を食べています。私は蕎麦と海鮮丼とカレーがあれば幸せなので、今後は海鮮丼とカレーのお店を開拓したいと思います。竹橋や神保町界隈で海鮮丼とカレーのお店のおススメがあればぜひ教えて下さい(神保町はカレーの名店は色々とありそうですが)。

 さて、今週のNewsPicksダイジェストで主任研究員の長澤もコメントしていますが、IFA事業者(金融商品仲介業者)の数が生命保険代理店の兼営が主導する形で増加しているようです。昨年から乗り合い保険代理店の最大手のひとつである「ほけんの窓口」が金融商品仲介業に参入したり、生命保険代理店のイベント等でも金融商品仲介業に関するセッションが増えていたり等、業界としての関心の高まりを肌で感じられるようになってきています。

 弊社が創業間もないころに業界団体である「一般社団法人金融商品仲介業協会」の設立のお手伝いを少しさせて頂いた頃はIFA事業者というと証券会社出身の方々が設立した会社がほとんどでしたが、日本のIFA業界は生命保険代理店の参入が増加し、むしろ生命保険代理店が兼営するIFA事業者が主流になるというのはその当時から私たちが予想するところでした。

 生命保険代理店側の事情としては、日経新聞の記事にも整理されている通り、節税目的の法人向け生命保険商品の課税方法が不利な方向に厳格化されたり、「顧客本位の業務運営」の観点から外貨建て保険商品等の販売に対する規制が強化されたり等、生命保険代理店側の事業環境が大きく悪化したということがひとつにはあるようです。また、生命保険の営業担当者が担当する顧客企業に自由に出入りし、職域営業を活発にしていた時代と異なり、最近では外部の営業担当者が職場内に入り込むことができなくなったことを受け、20‐30代の潜在顧客へのアプローチが極端に難しくなったという事情も耳にします。以前は大手生命保険会社が職域営業で販売した生命保険のプランを見直すというアプローチで乗り合い保険代理店は20‐30代の顧客開拓をすることができていたものが、そのアプローチができなくなり、「資産形成」という新たな切り口でアプローチする必要性が高まった、そんなことを乗り合い保険代理店の幹部の方から教えて頂きました。

 一方、より本質的な理由としてはこちらだと思いますが、顧客である一般生活者の観点からも今後はますます生命保険代理店によるIFA事業者の兼営に対するニーズは高まることを予想しています。以前から繰り返しお話させて頂いている通り、弊社・日本資産運用基盤は、「投資」と「資産運用(資産形成+資産活用)」は異なるという考えのもと、ゴールベースアプローチ的なマネープランコンサルティング及びアフターフォローこそが、一般生活者の「将来に備える」というニーズに対するサービスとして最も重要なものであるという取り組みを進めています。この考えに基づくと、保障機能を提供する保険と資産運用は、金融機能の差こそあれ、お客様の同じ「将来に備える」ニーズに対応するものであり、保険代理店等の金融機関がワンストップで提供する方がお客様に対して網羅的かつ統合的なサービスを提供できるという点で、理想的であるということになります。

 別の観点でいうと、「投資」サービスの提供は「将来に備える」ためのものというよりも、そのニーズが充足されたうえでの「生活を豊かにする」というニーズに対応するためのものであり、保険代理店が担うべき役割としては親和性が低いと考えています。従って、これから保険代理店によるIFA事業の兼営が増えていくなかでも、その辺りの整理を十分にしないままに、「投資」のための投資信託商品やファンドラップ商品等の販売に手を広げるというのは、お客様本位ではないことに加え、自らの強みを活かすことができないもったいないことになりかねません。

 高齢化に伴って老後の生活の設計が重要になる一方、インフレ進行等の金融環境の不透明性の高まりもあり、「将来に備える」ニーズをサポートする金融サービスの必要性が高まっていくことは間違いありません。地域銀行や保険代理店、金融商品仲介業者等、その業態は様々であっても、アドバイザーの担い手が増えることはその意味で喜ばしいことだと思いますが、「投資」と「資産運用」の区別を含め、自分たちがお客様のどんなニーズに対してどのようなサービスを提供するべきなのかをしっかりと整理することが必要だと考えます。



News Picks ダイジェスト(代表取締役 大原啓一)


【静岡銀行、八十二銀行と業務提携へ 山梨中央銀行も参加 - 日本経済新聞】
大原のコメント→
 「金利がある世界」の復活を受け、地域銀行の従来型金利ビジネスモデルを楽観視する見方も一部にはあるものの、実際には金利は本来的にコモディティであり、スマートフォンを起点に県境を越えて定期預金や住宅ローン等の金利サービスの申込みを行なうことが容易になっている現代においては、体力の脆弱な地域銀行の生き残りが更に厳しくなっているというのが実際のところだと思います。
 足もと第四北越FGと群馬銀行、千葉銀行と千葉興業銀行、そして今回の記事の静岡銀行と八十二銀行、山梨中央偽の句との連携等の動きが連続しているのもそのような状況の表れであると思われ、今年はこれらにとどまらずより広い範囲での再編の動きが進むことを予想しています。




News Picks ダイジェスト(主任研究員 長澤敏夫)


【米リテール投資革命(中)運用アドバイザー身近に 資産残高に応じて報酬 個人向け浸透、1.8万社】
長澤のコメント→
 米国では金融機関に属さない独立系金融アドバイザーの存在感が大きく、日本においても今後、販売手数料ではなく残高に応じたフィーベースにより、顧客との利益相反を回避する形で資産運用アドバイスを行うアドバイザーが増加していくものと思われます。
 ただし、日本の個人の間では金融機関への信頼が相対的に高いと思われ、大きな流れを作るには、銀行や証券会社等が動く必要があろうかと思います。販売手数料中心から残高に応じたフィーベースへ、また、販売姿勢についても「商品売り」から資産運用アドバイスを付加価値として提供するビジネスモデルへの転換が、金融機関が真に「顧客本位」となり、顧客との間でWin-Winの関係を構築するには不可欠ではないかと思われます。

【金融商品仲介、担い手多様化 生命保険代理店の進出広がる】
長澤のコメント→
 時代の流れが、相場を語り目先値上がりが期待できそうな銘柄の魅力を売り込む投資商品の販売から、顧客のライフプランをじっくり訊きながら資産運用アドバイスを行うゴールベースアプローチへ変化する中で、こうしたアプローチはもともと生命保険代理店が得意とするところであり、今後ますます金融商品仲介業への進出は増えるのではないかと思われます。
 今までも保険会社には運用商品としての外貨建て等の一時払い保険はありましたが、手数料のコスト負担を考えると効率の良い運用方法ではないとの見方もあり、保険による保障と資産運用を組み合わせてアドバイスを行う流れとなっていくと思われます。