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第52回「投資運用関係業務受託業者」利用のすすめ(1)

株式会社日本資産運用基盤グループのJAMPビジネス・イノベーション株式会社は、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに当局の動向などをまとめ、発信しています。

2024年5月15日に成立し同月22日に公布された「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律」の大テーマは「投資運用業者の参入促進」ですが、今回はその施策の一つである「投資運用関係業務受託業制度」を理解して、投資運用業の規制緩和の恩恵を享受しようの第1回です。

1.投資運用業者の参入促進
今回の金商法改正の大きな目的である「投資運用業者の参入促進」に係る改正事項は、以下の通りです。

(1)①投資運用業者から「計理業務」又は「コンプライアンスのための業務」(あわせて「アドミ業務」)を受託する業者の任意登録制度【改正金商法第66条の71等】を創設し、
   ②投資運用業者がアドミ業務を、当該登録業者に委託した場合には、投資運用業の登録要件の内、人的要件【改正金商法第29条の4第1項第1号の2 等】が緩和される。

(2)投資運用業者が金銭等の預託を受けない場合は、資本金・純財産額要件【改正金商法第29条の2第1項第5号の2、政令案第15条の7第1項4号】が引下げられる。

(3)①投資運用業者が、ファンドの運営(企画・立案)に特化し、様々な運用業者へ運用(投資判断・実行)を委託することができるように、運用権限の全部委託が可能【旧金商法第42条の3第2項の廃止】となりましたが、
②運用権限を委託する場合、委託元が運用の対象や方針を決定し、委託先を管理することが義務付けられることになりました。【改正金商法第42条の3第2項】

2.アドミ業務に係る業の任意登録制と規制緩和
アドミ業務に係る業の任意登録制度とは
(1)投資運用業者等から委託を受けて、投資運用関係業務(「計理業務」又は「コンプライアンスのための業務」)(アドミ業務)を、業として行う者の任意的登録制度を創設し、
(2)新規に投資運用業を行おうとする者は、任意登録を受けた業者(以下「アドミ業者」)に「アドミ業務」を委託する場合には、登録時に投資運用業の登録要件(人的構成要件)の一部が緩和されることになりました。また、この緩和策は既存の投資運用業者も変更登録を行うことで恩恵を受けることが可能になります。
  
3.アドミ業務の種別・内容
改正金商法第2条第 43 項で定義された「投資運用関係業務」は、金商業者向け監督指針改正案Ⅵ-3-1-1(7)①において
(1)運用対象財産の評価額の計算に関する業務
①投資信託財産に係る計算及びその審査(投資信託財産の基準価額の算出、当該算出に向けた投資信託の設定・解約の集計、資産の約定照合、利金・配当金等の計上等を含む。)
②上記①のほか、運用対象財産の評価額の計算のための業務

(2)法令等を遵守させるための指導に関する業務
①法令等遵守の観点から定期的な業務実態の把握、課題の指摘及び対応策の検討その他関連する業務
②コンプライアンスに関する社内規則その他マニュアル等の案文作成・管理
③コンプライアンス研修の定期的な企画・実施その他コンプライアンスに関する情報の提供
と説明されています。

次回は、投資運用業者が要件緩和を受ける際の注意点等について説明をさせていただきたいと考えております。


(JAMPコメント)

我が国の投資運用業界の参入障壁の高さの象徴と言われてきた、ミドル・バック オフィスの人的要件の厳しさ及びその要件を備えた人材確保の難しさが、今回の規制緩和により、多少なりとも投資運用業者の参入促進に寄与するものと考えます。
ただ、ミドル・バックオフィス業務を外部委託したとしても、顧客(投資家)に対する責任は、委託元である投資運用業者が負うことに変わりありません。
参入障壁の壁がなくなったわけではありませんが、従来よりも低くなったことを理解したうえで、任意登録を受ける投資運用関係業務受託業者の利用につきご検討されたらいかがでしょうか。


当社は、国際金融都市を目指している東京都とも協力し、金融商品取引業に関する登録申請手続き、及び金融商品取引業者等の内部管理体制強化に関する様々なご相談に対応しています。ご不明な点等ございましたら、是非当社までお問合せ下さい。