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「JAMPの視線」No.309(2025年11月30日配信)投資一任報酬内蔵型投信モデル

JAMP 大原啓一の視点 2025年11月30日 

 地元の公立小学校の6年生の社会の授業の一環で「働いている人に仕事のことを聞く」というプログラムがあり、講師をしてくれる保護者を探しているらしく、「応募してみたら?」と妻に勧められました。私(日本資産運用基盤)の仕事の内容は金融業界で働く人にすら理解してもらうのは難しいのに、小学生相手にわかりやすく話ができる自信はまったくありません。ただ、自信がないことはあまり深く考えずにとりあえず挑戦してみることにしているので、応募することにしました。仮に依頼があったらどうしようといまから不安に感じています。

GBASsの強みの源泉:投資一任報酬内蔵型投信モデル 

 さて、弊社のゴールベース型資産運用ビジネス支援サービス「GBASs」ではそのソリューションの裏側で「投資一任報酬内蔵型投信モデル」という独自の仕組みを用いています。この投資一任報酬内蔵型投信モデルについて、色々な金融機関の皆さまから「なぜそんな仕組みを用いているの?」「他のファンドラップではなぜ用いられていないの?」というご質問をよく頂きます(弊社に出資を検討されているベンチャーキャピタルのキャピタリストの方々からは「他の類似会社が同じモデルを真似したら優位性がなくなるのでは?」という質問を頂いたりもします)。そこで今回のメルマガでは改めてこの投資一任報酬内蔵型投信モデルについてご紹介をさせて頂きたいと思います。

  投資一任報酬内蔵型投信モデルは、不評なこの長ったらしい名称そのままなのですが、通常の投資一任(ファンドラップ)サービスでは投資一任報酬を投資対象の専用投資信託の外側で徴収するところ、当該専用投信の信託報酬の一部として代行徴収する(=投資一任報酬を投資信託の信託報酬に「内蔵」する)という仕組みです。また、通常のファンドラップサービスではお客様ごとに複数の専用投信を組み合わせ、お客様ごとにポートフォリオを構築するのに対し、私たちのGBASsでは、ひとつの投資一任契約で組み入れるのは1銘柄の投資一任報酬内蔵型投信のみであり、複数の銘柄を組み入れるということはしていません。この「投資一任報酬を投資対象の専用投信の信託報酬に『内蔵』する」ということと、「1銘柄の投資一任報酬内蔵型投信のみを投資対象とする」という2点が、私たちのGBASsの特徴であり、優位性の源泉のひとつであると考えています。

 ちなみに後者の「1銘柄のみを投資対象とする」という点については、私たちの思想や投資一任報酬内蔵型投信モデルを理解していない方々からは、「ああ、単なるラップ型投信ですね」という誤解を受けることも少なくありません。ただ、ラップ型投信というのは「ラップ」という表現を冠しつつも通常のバランス型投信の一種であるのに対し、私たちのこの仕組みはお客様と投資一任契約を締結し、付加価値を提供するれっきとした投資一任運用サービスであり、ラップ型投信と呼ばれるバランス型投信ではないということ、念のために改めて付言させて頂きます。

 なぜこんな奇妙な仕組みを考案し、用いているのかというと、私たちが掲げるゴールベース型資産運用サービスのサービス思想や、日本中の様々な金融機関の皆さまと連携するというビジネスモデルを実現するには、このモデルが最適だからです。

投資一任報酬内蔵型投信モデルの必要性①:サービス思想の実現のため 

 まず、サービス思想の実現という点に関してですが、私たちは「お客様の『将来に備える』をサポートするのが本当の資産運用サービスである」という思想のもと、お客様ごとにカスタマイズする必要があるのはポートフォリオではなく、プランであるという考えを持っています。例えば、あるご家庭は老後に備えてこれから65歳まで毎月3万円ずつ積み立てる、別のご家庭は少し早めにリタイヤするために60歳まで毎月5万円ずつ積み立てるという風に、お客様ひとりひとりの「将来」に合わせてプランをカスタマイズすることができなければ、私たちが思い描く本当の資産運用サービスにはなり得ません。

  この点、お客様ごとにひとつひとつポートフォリオを構築する従来のファンドラップのやり方では、少額でサービス利用を開始したり、数千円単位や数万円単位で細やかに積立・取崩しのプラン調整をしたりすることが困難ですが、私たちのGBASsのように投資対象が1銘柄の専用投資信託のみとすると、少額のサービス利用開始も積立・取崩しも自由自在です。また、現行のNISA制度ではポートフォリオリバランスのたびに年間の投資上限枠を浪費してしまいますが、GBASsでは専用投資信託の中でポートフォリオリバランスが完結しますので、そのような上限枠浪費の問題は発生せず、NISA制度を100%活用してお客様の「将来に備える」をご支援することが可能となります。

 投資一任報酬内蔵型投信モデルを用いたGBASsだからこそこのようにサービス思想を余すことなく実装することができますし、逆にいうとこのモデルを用いずに「将来に備える」ゴールベース型資産運用サービスの実現はほぼほぼ不可能だと考えます。

投資一任報酬内蔵型投信モデルの必要性②:柔軟な地域金融機関連携のため 

 次に、日本中の様々な金融機関の皆さまと連携するというビジネスモデルの実現という点についてですが、投資一任報酬内蔵型投信モデルを用いることにより、通常のファンドラップサービスに比べて金融機関の導入コストが圧倒的に低くなり、連携のネットワークが広がりやすいというメリットがあります。

 通常のファンドラップサービスの運営システムを構築・運営しようとすると、噂によると数十億円から場合によっては百億円以上の費用がかかると耳にしたことがありますが、その要因として、お客様ひとりひとりにポートフォリオを構築し、運用をしなければならないこと、そのポートフォリオごとに定期的に投資一任報酬を計算し、徴収する仕組みをシステム的に構築しなければならないというのが大きいと考えています。また、そのようなポートフォリオ運用は通常の投信口座や証券総合口座では対応できないため、特別な口座管理対応も口座システム側で必要になることも頭が痛い問題であろうと思われます。

 この点、投資一任報酬内蔵型投信モデルを用いたGBASsの場合、お客様が何万人、何十万人になろうと、投資運用担当者が担当しなければならないのは5種類程度の専用投信のみであり、そこの業務工数やシステム対応は必要ありません。投資一任報酬の計算・徴収については、上述の通り当該専用投信の信託報酬の一部として代行徴収されるため、投資一任運用会社側での業務負担はほとんど発生しません。また、日本中の地域金融機関の皆さまと連携する上では必須となりますが、地域銀行等のアドバイザー金融機関側でお客様のお金をお預かりするための口座管理対応についても、口座内で保有するのは1銘柄の専用投資信託のみとなりますので、既存の投信口座や証券総合口座をそのまま利用することができ、口座管理システムの改修も小さいものとなります。従って、アドバイザー金融機関が利用する投信・証券総合口座管理システムがどのシステム会社のものであっても、対応可能です。こんなファンドラップサービスは他には存在しません。

 証券会社や信託銀行等の金融機関がファンドラップサービスを新しく始める際や地域銀行等と連携する際に発生する事業開発・運営コストを圧倒的に小さくすることができる。これが投資一任報酬内蔵型投信モデルのビジネスモデル面における大きな意味合いです。

単に仕掛けだけを模倣しても意味はない 

 では、なぜこんなにメリットばかりの投資一任報酬内蔵型投信モデルが他のファンドラップサービスや類似会社の事業支援ソリューションでは用いられていないのでしょうか。本モデルの開発者のひとりとして、私はこのモデルの素晴らしさには大いに自信を持っているため、もっと真似されても良いと思うのですが(実際には真似されると弊社のビジネス的には困りますが)、実際にはそのようなことにはなっていません。仕組みだけわかっても実際に金融商品取引業務として導入するために必要な社内規程や業務運営体制整備等に独自のノウハウが必要とされることも障壁としてはもちろん存在するのですが、最も大きいのは全ての根底にあるサービス思想なのだと考えます。

  説明させて頂いた通り、弊社GBASsの仕組みの根底にあるのは、「お客様の『将来に備える』をサポートするのが本当の資産運用サービスである」という思想であり、お客様ごとにカスタマイズする必要があるのはポートフォリオではなく、プランであるという考えです。この思想を持たず、お客様にカスタマイズしたポートフォリオ付加価値を提供しようとする従来型のファンドラップサービスが投資一任報酬内蔵型投信モデルを導入したとしても、確かに事業開発・運営コストの削減等の効果はあるかもしれませんが、そもそものサービス世界観がばらばらになってしまいます。「木に竹を接ぐ」という表現がまさに的確なように感じます。

  弊社・日本資産運用基盤は、サービス思想から具備する機能まで一貫していることを特徴とするこの独自のGBASsの提供を通じ、パートナーである金融機関の皆さまのゴールベース型資産運用サービス事業の発展をこれからも全力でご支援してまいります。

以下、余談です

 私が約10年前にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問(現・マネックスアセット)を創業し、ゴールベース型資産運用サービスを開発した時にこの投資一任報酬内蔵型投信モデルを考案したのは、私が20代の頃に公的・私的年金基金向けの投資顧問ビジネスに携わらせて頂いたおかげだと考えています。

 年金基金向け投資顧問ビジネスでは、小規模の私的年金に対して効率的な投資運用サービスを提供するために、年金私募投信と呼ばれる1銘柄の私募投信を投資一任契約の対象として活用するということが一般的であり、当該私募投信の信託報酬と外側で発生する投資一任報酬との水準調整などの工夫も講じられていました。

 この経験に加え、ロンドン駐在時代のゴールベースアプローチとの出会いやバンガードからのサービス哲学の学び等、全てが投資一任報酬内蔵型投信モデル、ひいては現在のGBASsにつながっているように思います。スティーブ・ジョブズ氏が「Connecting the dots」という名言を残されていますが、今回のメールマガジンを執筆しながら、改めて自分のこれまでの様々な経験のつながりの延長線上にGBASsがあることを感じました。

JAMPメンバーの採用情報

 日本資産運用基盤グループでは、事業拡大に伴い一緒に働くメンバーを募集しています。
弊社にご興味のある方、ぜひ働きたいという方はこちらからお申し込みください。
まずはお話だけでも、という方も大歓迎です!

代表の大原とのカジュアル面談でもいいかな、という方ももっとウェルカムです!!

keiichi.ohara@jamplatform.com


News Picks ダイジェスト

代表取締役 大原啓一 のコメント

【山梨中央銀、「有償」金融教育 広がる 「無償の風潮変えたい」】

大原のコメント→

 金融・資産運用サービスに関しては無償もしくは低報酬が当然という風潮が強いように感じる今日この頃ですが、付加価値に対してしっかりと対価を請求するという山梨中央銀行の姿勢は素晴らしいと思います。
 「資産運用立国」というのは資産運用サービスの受益者のみの利益を尊重するものではなく、サービスの提供者である金融機関もともに潤うというWinWinの関係が大前提であると考えており、このような考え方が今後も広がっていくことを祈念しています。

https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_15571537

主任研究員 長澤 敏夫 のコメント

【地銀、円建て保険割合上昇 25年度上期44%に】

長澤のコメント→

 外貨建て保険については、金融庁の指摘によりターゲット型保険の販売がやりにくくなったことも、地方銀行における円建て保険への回帰に一役買っているのかと思います。一方、大手銀行においては、24年上期までの金融庁のデータを見ると外貨建て比率が上昇傾向にあったので足元の動向が気になるところです。また大手証券は9割以上が外貨建てであり、こちらは富裕層等への通貨分散投資の商品としての位置づけとなっているのではないかと思われます。

https://newspicks.com/user/6551307/?ref=user_6551307&sidepeek=news_15572111


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