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第62回「AI法と投資運用業の今後(1)」

 「日本資産運用基盤株式会社」を親会社に持つ「JAMPフィナンシャル・ソリューションズ株式会社」は、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに、当局の動向などをまとめた「JAMPコンプラ・メルマガ」を発信しています。 

 今回から3回シリーズで、昨年5月28日成立・6月4日(一部9月1日)に施行された「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(以下、「AI法」)と投資運用業界を取り巻く今後を検証していきたいと思います。

1. AI法の概要(今回)
2. AIを巡る我が国の金融当局の動き(今回)
3. 最近の投資運用業界におけるAIの利用(次回以降)
4. AI利用にともなう諸問題(同上)
5. AIファンドと顧客本位の業務運営(同上)
6. 投資運用業界の近未来予想図(同上)

1. AI法の概要

 AI法には、金融業界をはじめとした事業者や国民に対する「責務」について定めた条項が存在しているものの、適正性の確保や人工知能基本計画・戦略本部創設について等、その大宗は政府・内閣に向けた我が国におけるAI活用のための基本法的な位置づけとなっている。

 ちなみに事業者の責務としては、第7条において、「人工知能関連技術を活用した製品又はサービスの開発又は提供をしようとする者その他の人工知能関連技術を事業活動において活用しようとする者は、基本理念にのっとり、自ら積極的な人工知能関連技術の活用により事業活動の効率化及び高度化並びに新産業の創出に努めるとともに、第四条の規定に基づき国が実施する施策及び第五条の規定に基づき地方公共団体が実施する施策に協力しなければならない。」とされています。また国民の責務としては、第8条において、「国民は、基本理念にのっとり、人工知能関連技術に対する理解と関心を深めるとともに、第四条の規定に基づき国が実施する施策及び第五条の規定に基づき地方公共団体が実施する施策に協力するよう努めるものとする。」とされているにとどまっています。第10条では、「国は、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。」とあります。(下線は筆者、以下同じ)

2. AIを巡る我が国の金融当局の動き

1. 金融機能の更なる発揮を促し、持続的な成長に貢献する

(3)デジタル技術を用いた金融サービスの変革への対応

 デジタル技術を用いた金融サービス・取引の健全な発展は、社会問題の解決や生産性向上に寄与し得る。とりわけ、現在、国内外で預金・株式・債券等様々な資産のトークン化、ステーブルコインの流通など、グローバルに金融サービスの変革が加速しつつあり、金融庁や金融機関は、技術革新に向き合い、チャレンジをすべき状況に直面している。こうしたデジタル技術による金融サービスの健全な発展が、我が国の社会課題の解決等に寄与するよう、官民の連携の強化等を図る。特に、暗号資産、ステーブルコイン等については、欧米などのグローバルな動向を踏まえつつ、我が国における金融サービス等のイノベーションの活性化や信頼ある提供に資するよう、必要な政策を進める。(中略)

ちなみに、「2024事務年度 金融行政方針」においては、

Ⅰ.金融のメカニズムを通じて持続的な経済成長に貢献する

3.デジタル技術を用いた金融サービスの変革への対応

 AI やブロックチェーン等、デジタル技術を用いた金融サービス・取引が急速に広がっており、 社会経済全体に大きな影響を及ぼしつつある。こうした中、利用者保護やシステムの安全性を確保しつつ、各金融機関による特色ある金融サービスの提供を促すことで個人や企業にとっての利便性を高め、社会全体の生産性向上につなげられるよう、以下の施策に取り組む。

(1)生成 AI やフィンテック等の新たな展開に向けた対応

 金融分野においても、生成 AI をはじめとするAI は業務効率化や新たな金融サービスの創出等を通じた生産性向上につながることが期待される一方、利用者保護や金融システムの安定・信頼の確保の観点から潜在的なリスクも指摘されている。こうした点を踏まえ、金融機関における健全かつ効果的な AIの積極的な利活用を慫慂するためのディスカッション・ペーパーの策定を行う。(以下、省略)

でした。なお、このディスカッション・ペーパーは、昨年3月4日に金融庁から公表されております。https://www.fsa.go.jp/news/r6/sonota/20250304/aidp.html その概要には、

Ⅳ-3 金融庁としての対応:金融庁としての今後の対応の方向性

「規制の適用の明確化」において

 ・個人情報保護、ITガバナンス、モデル・リスク管理、サイバーセキュリティの順で明確化を求める声が多数
 ・いずれの論点においても、AI利用の有無に関わらず適用される既存の法令や監督指針、原則、ガイドライン等が存在していることから、まずはこれらに沿った対応を金融機関等に促していく
 ・生成AIの特性に起因する新たな課題等にも配意しつつ、AI活用に係る規制要件が十分明確になっているか、既存の規制・監督上の枠組みでリスクに十分対応できているかといった観点から、今後検証を行う
重大な規制上のギャップが特定された場合には、法令による規制は事業者の⾃主的な努力による対応が期待できないものに限定して対応していくべきとの政府方針を踏まえ、まずは原則やガイドラインの改定等を検討

といった記述がなされています。

(JAMPコメント)

 国内の多くの企業でごく自然にビジネスに利用され始めてきている生成AIですが、企業や組織によっては、その利用に関するルールやマニュアルも特段定めることなく、利用者である役職員の常識に依拠した利用を容認しているところもあるのかと思われます。インターネットの利用がいつのまにかビジネスに定着したのと同様、生成AIの利用もさらにビジネスの領域で一般化されるものと思われますが、上述したガイドラインにあるように、当面、金融当局としては「法令による規制は事業者の⾃主的な努力による対応が期待できないものに限定して対応していくべきとの政府方針」を受けての動きとなると思われます。だからこそ、「事業者の⾃主的な努力」については、早急な対応が望まれるところです。




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