「JAMPの視線」No.328(2026年4月12日配信)「親塾」から見える資産運用の本質
JAMP 大原啓一の視点 2026年4月12日
先週木曜日に我が家の次男の小学校の入学式がありました。不思議なことに、入学式ではなく、入学式の翌日から次男が早起きし、ランドセルを背負って登校班の集合場所に向かう後ろ姿にじーんと来てしまいました。小学校6年生になった長男が登校班の班長を務めており、ちょっと恥ずかしそうにしつつも、得意げに色々と次男に教えてあげながら一緒に登校する様子を見ていると、「君らもうずっとこの年齢のままで成長しなくていいよ」みたいなことを思ってしまいますが、現実にはそうはいかず、数年も経つともう相手にしてくれないんでしょうね・・・。

中学受験における「伴走」の重要性
さて、先週のメルマガ冒頭で最近は小学校6年生の長男の中学受験に向けて「親塾」と称した伴走を頑張っているお話をさせていただきましたが、実際に取り組んでみて改めて感じるのは、中学受験において重要なのは単に勉強を教えることではないという点です。
もちろん、算数や理科といった個別教科の理解を深められるように教えることも必要ですが、それ以上に重要なのは、学習全体の設計だと考えます。具体的には、志望校というゴールに対して、現在の学力とのギャップをどのように捉え、そのギャップを埋めるために、今月・今週・今日何をすべきかを計画に落とし込み、それを実行し、振り返り、修正していくというプロセスです。
特に小学生にとっては、この「ゴールから逆算した設計」を自ら行うことは非常に難しい。模擬試験等によって自分の立ち位置や弱点が可視化されたとしても、それを踏まえて学習計画を再構築することは容易ではありません。したがって、親や家庭教師の役割は、知識を教えること以上に、このプロセスを共に設計し、伴走することにあります。実際に私自身も2月末から息子とこのような形で取り組んでいますが、少しずつその効果が出てきているように思います。
ゴールベース型資産運用との共通点
この「伴走」の構造は、ゴールベース型資産運用サービスと極めてよく似ています。従来の資産運用は、どの金融商品を選ぶか、どのポートフォリオが優れているかといった「商品」や「結果」に焦点が当たりがちでした。しかし、実際の資産形成において重要なのは、将来のゴールと現在の資産状況とのギャップをどのように認識し、それを埋めるためのプロセスを設計し、継続的に見直していくかという点です。
多くの個人にとって、自らこの設計を行うことは容易ではありません。そもそも老後の安心・安全な生活というゴールの実現にはどれくらいの資産を何歳までに形成する必要があるのか、そのためには毎月どれくらいを積み立てるべきなのか、どの程度のリスクの投資運用を行なうべきなのか、実際の資産形成の進捗が計画とずれた場合にどのように修正すべきか等、こうした意思決定は、知識だけでなく、継続的な判断と修正が求められます。これはまさに、中学受験における学習プロセスと同じ構造です。ゴールと現在地をつなぎ、その間のプロセスを設計し、定期的に振り返り、必要に応じて軌道修正する。この一連の流れこそが価値の源泉であり、個別の「商品」や「手段」はその一部に過ぎません。
つまり、ゴールベース型資産運用サービスの本質は、優れた金融商品を提供することではなく、お客様のゴール達成に向けたプロセス全体を設計し、継続的に伴走することにあるのです。
伴走者としての地域銀行の可能性
この観点に立つと、金融機関の役割も大きく変わります。従来は、ポートフォリオの内容や運用成績を説明すること、あるいは商品を提案・販売することが金融機関の役割の中心でした。しかし、ゴールベース型資産運用サービスの文脈では、金融機関に求められるのは「説明者」ではなく「伴走者」としての役割です。顧客の目標を理解し、現状とのギャップを可視化し、それを埋めるためのプロセスを設計し、継続的に見直していく。この一連の流れに寄り添い続けることこそが、価値の中心になります。
その意味で、地域銀行の営業員は、本来この役割に最も適した存在のひとつだと私たちは考えます。地域に根差し、顧客との長期的な関係性を持ち、ライフイベントや事業の変化を継続的に把握できるという特性は、まさに「伴走」に適しています。
一方で、これまでの地域銀行のビジネスモデルは商品販売に依存しており、この伴走機能は十分に活かされてこなかった側面もあります。今後は、商品提供という役割から一歩進み、顧客の資産形成プロセスを設計し続ける主体へと進化できるかどうかが地域銀行に問われています。
中学受験における「親塾」や家庭教師と同様に、資産運用においても本質は「何を教えるか」ではなく、「どのように伴走するか」にあります。ここにこそ、これからの金融機関の付加価値の源泉があると確信しています。
(追伸)プレスリリースでも公表させていただきましたが、弊社のゴールベース型資産運用ビジネス支援サービス「GBASs」のご支援残高が1,000億円を突破しました。足もと北洋銀行でサービス提供が始まったり、山口フィナンシャルグループ傘下の地銀×3行での取り扱いが決まったりと、日本でもゴールベース型資産運用サービスが少しずつ広がっていることを実感します。まだようやくスタートラインに立ったに過ぎませんので、これからまだまだ頑張りたいと思います。
JAMPメンバーの採用情報
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News Picks ダイジェスト
代表取締役 大原啓一 のコメント
【中小企業マネー450兆円、三井住友銀行やPayPayが崩す地銀・信金の牙城】
大原のコメント→
本記事で取り上げられている動きは、「メガバンクやFinTech企業が地銀の領域に参入している」という話ではなく、中小企業金融の競争軸そのものが「審査力」から「データと設計」へと移行している構造変化と捉えるべきだと考えます。
これまで地域銀行は、対面・関係性・定性情報に基づく審査によって中小企業金融を支えてきており、ここに各地域に根差す地域銀行の優位性がありました。しかし、決済データやAI技術を起点とした与信モデルは、審査プロセスそのものを再設計し、「スピード」と「リアルタイム性」で優位に立ち始めています。ここでは、どれだけ顧客を知っているかではなく、どれだけデータを取得・活用できる構造を持っているかが競争力になっています。
一方で、これは地域銀行の可能性を否定するものではありません。むしろ本質は、地域銀行がデット(融資)主体でリスクマネーを供給するプレイヤーであり続けるのか、それとも企業価値や資本政策、事業承継といったエクイティまで踏み込む「設計主体」へ進化できるのかという点にあります。単純な役割分担の中でデットに留まると、取り得るリスクの小ささも含めて付加価値は相対的に縮小していきます。
従って、地域銀行がいま問われているのは、防衛ではなく役割の再定義と構造転換だと考えます。データ起点の金融が広がる中で、地域銀行がどの領域で価値を発揮するのか。その設計ができるかどうかが、次の競争の分岐点になるのではないでしょうか。
https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_16397396
【中小企業金融、最前線は融資から投資へ 地銀のファンド10年で3倍】
大原のコメント→
この動きは「融資から投資へ」という業務の拡張ではなく、地域金融の役割が「資金供給者」から「企業価値の設計主体」へと移行し始めている構造変化と捉えるべきと考えます。
最近いつも発信させていただいている通り、これまでの地銀モデルはデット(融資)によるリスクマネー供給を中心としていましたが、事業承継や成長投資といった課題に対しては、融資だけでは十分に機能しなくなっています。その結果として、エクイティによってリスクマネーを供給し、経営に関与する動きが出てきている。これは単なる新規事業ではなく、顧客価値の提供領域そのものが拡張していることを意味します。
重要なのは、これが持続的な競争力につながるかどうかです。エクイティ投資は本来、ネットワーク、専門性、案件ソーシングなどを含めた「総合的な投資機能」が求められる領域であり、単にファンドを持つだけでは優位性にはなりません。むしろ、大手金融機関や専業ファンドとの競争が本格化する中で、どの領域で勝つのかという設計が不可欠になります。
その意味で問われているのは、地銀が投資機能を内製化すること自体ではなく、地域に根差した情報や顧客基盤を活かしながら、エクイティを含めた資本政策・事業承継の設計にどう関与するのかという点です。この構造設計ができるかどうかが、今後の地域金融の分岐点になるのではないでしょうか。
https://newspicks.com/user/121187/?id=121187&ref=user_121187&sidepeek=news_16404272
主任研究員 長澤 敏夫 のコメント
【金融庁、仕組み貸出の監視強化 含み損4000億円 地銀に残高など定期徴求】
長澤のコメント→
「仕組み貸出」については、2年以上前から金融庁が問題視して、地域金融機関経営者との意見交換会などで話題に取り上げ、それでも貸出抑制につながらなかったことから、供給元の大手証券会社の蛇口を閉めることで販売停止となった経緯にあります。但し、既存の残高については市場環境によっては長期間にわたり市場金利を大きく下回る運用となり将来に禍根を残す可能性を孕んでいることは変わりません。貸出といっても実需に基づく借入人がいるわけではないので、デリバティブの解約コストや担保となっている債券の売却損益を負担すれば解約は可能と思われるので、足元の預貸スプレッド改善に伴う好調な収益環境が続いているうちに残高を減らすというのも経営判断かと思われます。
https://newspicks.com/user/6551307/?ref=user_6551307&sidepeek=news_16412480
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