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第55回「安定的な資産形成に向けた顧客対応」について

日本資産運用基盤グループのJAMPフィナンシャル・ソリューションズ株式会社は、金融商品取引業者様及びその登録を目指しておられる方々向けに当局の動向などをまとめ、発信しています。
今回は、4月11日付で金融庁から各金融機関に向けて発出された「安定的な資産形成に向けた顧客対応に関する要請」について、ご説明します。

当該要請は、石破内閣総理大臣から関係閣僚への「米国の関税措置について必要な対策に万全を期すとともに、世界の金融・資本市場に不安定な動きが見られるところ、適切に対応するよう」と言う指示を受けて、加藤内閣府特命担当大臣(金融)から「金融機関に対して、個人投資家の方々からの照会や相談に丁寧に対応するよう求めていく」旨の発言があり、これらを踏まえて金融庁から各金融機関に発出されたものですが、経由する各業界団体への要請文に、「顧客の安定的な資産形成のため、(中略)各金融機関においては現場の第一線の職員等に周知・徹底をお願いいたします。」と記載されていることからも、その重要性が伺われます。

(出所:金融庁HP)


安定的な資産形成に向けた顧客対応に関する要請
令和7年4月11日
金融庁
足元の金融資本市場では、世界的にも不安定な動きが見られるところですが、こういった状況においても、個人投資家におかれては、安定的な資産形成に向けて、長期・積立・分散投資の重要性を考慮し、冷静に投資判断を行っていただくことが重要です。
それを踏まえ、金融機関におかれては、特に以下の点に留意して、安定的な資産形成を目指す個人投資家に対し丁寧に対応いただくよう要請します。

1.個人投資家への丁寧な対応
<情報発信・積極的なアプローチ>
金融資本市場が大きく変動する中においても、顧客である個人投資家が安心して長期・積立・分散投資の意義を十分に理解し、資産形成に取り組むことができるよう、顧客の不安を解消するような丁寧かつ積極的な情報発信を行うこと。
具体的には、相場急変時には、顧客の不安に寄り添った上で、投資判断に必要な情報を適時に伝えるとともに、特に、長期・積立・分散投資の意義について伝え、冷静な判断を促すこと。
その際、手段や方法等については、以下について留意すること。
〇相場の分析や、投資家が行動をとる前に留意すべき事項について、適時に具体的な発信を行うこと。
〇電話やウェブサイトのみならず、アプリ通知やSNS、メール、葉書等、様々な経路での発信を行うこと。
〇相談窓口等の顧客にとって必要な問い合わせ先も明記した上で発信を行うこと。
<相談態勢の整備>
上記発信を行うとともに、顧客からの照会や相談があった場合には丁寧な対応を実施できるよう、経営陣による的確な指示の下で態勢を確認し、必要に応じて拡充すること。
相談を受ける際には、顧客のライフステージ、財産の状況、投資目的等を踏まえたニーズを十分に把握するとともに、顧客の知識、経験、投資意向、リスク許容度、顧客のポートフォリオ全体のバランス等に応じて投資判断に必要な情報の提供を行うこと。
上記の顧客に関する情報も踏まえたうえで、顧客の属性や投資の状況等に応じて、顧客からの連絡を待つことなく、金融機関自ら電話やメール送付を行い、顧客の不安に対し、相談の受付や相談窓口を案内するなど、積極的な対応を行うこと。
2.NISA口座を通じた取引に関する状況把握
官民が連携して、個人投資家への情報発信等の対応を検討するためにも、まずは、個人投資家の動向を把握することが重要である。特に、NISA(少額投資非課税制度)は、初めて投資を行う者や若年層など、投資知識・経験の浅い顧客による利用が想定されるため、NISA口座を通じた金融商品の売買状況について、取引量等を踏まえた必要性の程度も勘案しつつ、適時に把握を可能する態勢を確認・整備し、これらの情報に係る実態把握について金融庁に協力すること。


(JAMPコメント)

この金融庁要請文は、昨今の不安定な投資環境を念頭に置いて発出されたものですが、ここに記載された「金融機関が安定的な資産形成を目指す個人投資家に対して特に伝えるべき項目」は次のとおりであり、これらは通常の投資環境下においても必須項目と思われるものばかりです。
〇個人投資家による安定的な資産形成には、長期・積立・分散投資が重要であること
〇投資家が行動をとる前に留意すべき事項
〇顧客のライフステージ・財産の状況・投資目的等を踏まえたニーズの把握
〇顧客の知識・経験・投資意向・リスク許容度・顧客のポートフォリオ全体のバランス等に応じた投資判断に必要な情報の提供
例えば二つ目の「投資家が行動をとる前に留意すべき事項」については様々な内容が想定されますが、特に相場急変時には顧客の不安に寄り添って投資判断に必要な情報を適時・適切に伝え、冷静な判断を促すことが重要であると言う意味かと思われます。
また三つ目には「投資目的等を踏まえたニーズの把握」と記されており、この要請文が前提とする「安定的な資産形成」とは、金融庁が重視している「顧客本位の業務運営」に基づくものであると共に、昨今地域銀行などの預かり資産事業における主要施策となりつつある「ゴールベースアプローチ」の考え方そのものであるように思われます。


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