「JAMPの視線」No.337(2026年6月14日配信)商品をつくるだけでは、市場は育たない
JAMP 大原啓一の視点 2026年6月14日
小学校6年生の長男の中学受験勉強に伴走し始めて、3カ月半ほどが経ちました。自分が子どもの頃は、親の目を盗んでまで勉強するくらい勉強が好きだったので、どこかで息子たちもそういうものだと思っていたのですが、当然ながら子どもは親とは別人格。勉強も楽器の練習も、目を離すと驚くほど自然にフェードアウトしていきます。最近は、受験勉強そのものよりも、机の前に座っているように見えて、実は魂が幽体離脱している状態を見抜く力ばかり鍛えられています。

ETFホワイトレーベル第1号案件の上場
さて、先週前半、日本資産運用基盤グループのETFホワイトレーベルサービスを活用した第1号案件として、日本バリュー・インベスターズ株式会社の投資運用戦略に基づく「日本バリュー・ボトムアップ株式投資戦略アクティブETF」が東京証券取引所に上場しました。JAMPファンド・マネジメントがファンドマネジメントカンパニーとしてETFの組成・設定・上場準備・運用管理等を担い、日本バリュー・インベスターズが長年培ってきた日本株バリュー運用の知見を、国内外の幅広い投資家に届けるための仕組みです。
当日は東京証券取引所で上場セレモニーにも出席し、上場通知書を受領し、日本バリュー・インベスターズの伊藤社長と一緒に打鐘をさせていただきました。数年前から取り組んできた日本版ファンドマネジメントカンパニー機能を活用した資産運用会社の投信ビジネス支援が、私募投信や公募投信のみならず、ETFという上場商品としても具体的な形になったことには、率直に大きな感慨がありました。
一方で、実は少し居心地の悪さもありました。ETFホワイトレーベルサービスにおいて、私たちはETFの組成・運営を支える「基盤」提供者であり、投資運用戦略や当該ETF事業の主役はあくまで日本バリュー・インベスターズです。東京証券取引所の皆さまにもその趣旨をご理解いただき、同社にも上場通知書に代わる記念品をご用意いただきましたが、制度上・市場慣行上は投信委託会社であるJAMPファンド・マネジメントが前面に立つ場面が多くなります。本来は、長年の投資運用事業の実績をETF組成・上場という形で結実させた日本バリュー・インベスターズの皆さまこそが、より大きくスポットライトを浴びるべき舞台です。これは東京証券取引所の対応に何か不平不満があるという話では全くなく、むしろ、既存の枠組みの中でできる限りのご配慮をいただいたと感じています。ただ、ETFホワイトレーベルという新しい分業モデルを日本のETF市場に根付かせていくうえでは、「制度上の顔」と「投資価値の源泉」をどのように見せていくのかについて、今後さらに工夫が必要だと感じました。
ETFは「市場で育てる」商品である
今回、ETFの組成・上場・運用に責任ある立場で関わる中で、公募投信との違いも改めて実感しました。これまで数多くの公募投信の組成や運営に関わってきましたし、ETFと公募投信の制度上の違いも当然しっかりと理解しているつもりでした。しかし、実際に自社グループが運営するETFが上場し、日々の板やそこで変動する取引価格、出来高、基準価額との関係を追うと、頭で理解していたものが、より立体的な実感に変わります。
公募投信は、原則として一日一回、組入資産の時価を積み上げて基準価額が決まります。一方、ETFは取引所で売買され、取引時間中に投資家の需給を反映して価格が形成されます。もちろん、組入資産の価値、すなわち基準価額や推定NAVが価格形成のアンカーになりますが、ETFの市場価格はそれだけで説明できるものではありません。流動性、スプレッド、マーケットメイク、投資家からの認知、商品への理解、運用者への信頼など、ETFという商品を市場の中で育てていくための複数の要素が絡み合いながら、市場の中で価格が形成されていきます。
その意味で、ETFは単に「上場できる投資信託」ではありません。商品を作る力だけでなく、商品を市場で育てる力が求められるビジネスです。前回のメルマガでも書いた通り、日本のETF市場が次の成長段階に入るためには、銘柄数を増やすだけでは不十分です。運用会社、ETFホワイトレーベルプロバイダー、取引所、マーケットメイカー、プロモーションエージェント、そして投資家が、それぞれ合理的なインセンティブを持ち、良質なETFが生まれ、届き、育つためのエコシステムを設計していく必要があります。
ETFの本当の難しさは、上場までではなく、上場後にあります。上場後に投資家に認知され、理解され、取引され、残高が積み上がり、流動性が生まれ、市場の中で存在感を持つ商品に育っていく。そのプロセス全体を支える仕組みこそが、これからの日本のETF市場には必要なのだと思います。
PEITが示す上場型ビークルのもう一つの可能性
今月初めには、もうひとつ大きな案件の発表もさせていただきました。HiJoJo Partners株式会社が当社グループのPEITホワイトレーベルサービスを活用し、グローバル非上場株式を主たる投資対象とする「HiJoJoグローバルユニコーン投資法人」を設立しました。ETFホワイトレーベルサービスと同様に、JAMPファンド・マネジメントがファンドマネジメントカンパニーとして当該PEITの運用管理等を担います。
PEITはETFそのものではありませんが、取引所を通じて多様な投資家に投資機会を提供し得る上場型ビークルという意味では、広義の意味でのETF/ETPと言えるでしょう。これまで個人投資家や一般の国内投資家にとってアクセスが難しかった非上場株式、とりわけグローバルユニコーン企業への投資機会を、法制・税制・情報開示・分散投資の枠組みを備えたビークルとして提供しようとする取り組みです。
もちろん、PEITにはETFとは異なる特徴や課題があります。最大の論点の一つは流動性です。ETFのように日次の設定・交換やマーケットメイカーを前提とした市場構造とは異なり、非上場株式を投資対象とするビークルでは、評価、開示、売買頻度、流動性供給の設計がより難しくなります。
ただし、上場PEITの数が増え、金融機関による上場PEITの活用の幅が広がり、Fund of PEITs公募投信のような形で分散投資の対象として活用されるようになれば、市場の厚みは少しずつ増していく可能性があります。公開市場を主戦場としてきた資産運用会社が、PEITを通じて未公開株投資の世界に入っていくことで、スタートアップ企業の評価、ガバナンス、情報開示、投資家との対話にも、新しい知見や規律が持ち込まれるかもしれません。
日本の未公開株市場が十分に厚くないから国内未公開株対象PEITは難しい、という見方もあります。もちろん、その課題認識は正しいと思います。一方で、投資家資金が流入する器が整うことによって、未公開企業側の資本政策や情報開示、投資家対応が進み、市場そのものが育っていく可能性もあります。市場があるから商品が生まれるのか、商品があるから市場が育つのか。PEITは、その鶏と卵の関係に一石を投じる仕組みになり得ると考えています。
「基盤」は商品ではなく、市場を育てるためにある
ETFホワイトレーベルとPEITホワイトレーベルに共通しているのは、優れた運用者や魅力的な投資機会があっても、それだけでは投資家に届かないという問題意識です。運用戦略、ビークル設計、上場、制度対応、日々の運営管理、投資家への情報提供、流動性、プロモーション。これらがつながって初めて、投資商品は市場の中で機能します。
私たち日本資産運用基盤が取り組んでいるのは、単にETFやPEITを組成することではありません。独自の投資運用力を持つ会社や、新しい投資機会を持つプレイヤーが、自らすべての機能を抱え込まなくても、投資家にアクセスできる市場基盤をつくることです。
将来的には、日本の未公開株を対象とするPEITや、地域の優良未上場企業を支える地域PEITのようなものも出てくるかもしれません。5月24日に配信したメールマガジンで少し触れた北海道のGXプロジェクトに投資する北海道PEITのような構想も、決して空想だけではないと思います。地域の企業やプロジェクトを、地域の金融機関、投資家、上場市場、資産運用会社が支える。そのような資金循環が実現すれば、資産運用ビジネスは単なる金融商品の提供を超えて、産業や地域を支える仕組みにもなり得ます。
ETFもPEITも、日本ではまだ発展途上です。しかし、だからこそ基盤づくりの余地があります。今回のETF上場とPEIT設立は、単に当社グループにとっての第1号案件というだけではなく、日本の資産運用市場において、投資機会を「つくる」「上場させる」「届ける」「育てる」という機能をどう分業し、どう接続していくのかを考えるうえでのひとつの節目だと感じています。
良質な投資機会がより多くの投資家に届き、市場の中で育っていくためには、運用者だけでも、販売会社だけでも、取引所だけでも不十分です。多様なプレイヤーをつなぎ、投資商品が市場の中で機能するための基盤を整えること。そこに、私たち日本資産運用基盤が果たすべき役割があるのだと思います。
JAMPメンバーの採用情報
日本資産運用基盤グループでは、事業拡大に伴い一緒に働くメンバーを募集しています。弊社にご興味のある方、ぜひ働きたいという方はこちらからお申し込みください。
まずはお話だけでも、という方も大歓迎です!
代表の大原とのカジュアル面談でもいいかな、という方ももっとウェルカムです!!
News Picks ダイジェスト
代表取締役 大原啓一 のコメント
【外債「手数料」ようやく開示へ 顧客本位の業務運営へ一歩】
大原のコメント→
念のためですが、外貨建て債券等の金融商品そのものが悪いわけではなく、為替リスクや信用リスクを理解したうえで、ポートフォリオの一部として活用する意義があることは間違いありません。ただ、顧客から見えにくいスプレッドの中に販売側の収益が含まれ、「手数料ゼロ」に見える形で販売されてきたことは、顧客本位の業務運営の観点から大きな問題という整理だと考えています。
今回の参考価格開示の流れは、外債販売の透明性を高めるだけでなく、金融商品仲介業者、いわゆるIFAの事業モデルにも大きな影響を与えるはずです。これまで一部では、仕組み債や外債など、販売時の収益性が高い商品に依存するビジネスモデルが成立してきました。しかし、手数料やスプレッドの透明化が進めば、単に利幅の大きい商品を販売するモデルは持続しにくくなります。
私が期待したいのは、この動きの先にIFAの役割が、金融商品の販売から、アドバイス付加価値の提供へと転換していくことです。投資一任運用サービスや独自ブランド投信/ETF等を活用した事業モデルを活用しながら、顧客の資産形成・資産管理を継続的に支援する方向に進めば、IFAは販売チャネルではなく、顧客に最も近いアドバイス機関として存在感を高められるはずです。
https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_16840430
【富山銀、オーベルジュの開業支援 「寿司」を観光起爆剤に】
大原のコメント→
弊社・日本資産運用基盤が富山銀行様の有価証券運用事業をお手伝いさせていただいている関係で富山には定期的にお邪魔しますが、確かに富山のお寿司は最高です。家族でも食べに行きたいなと思いつつ、なかなか実現しませんが・・・。
https://newspicks.com/user/121187/?ref=user_121187&sidepeek=news_16847696
主任研究員 長澤 敏夫 のコメント
【外債「手数料」ようやく開示へ 編集委員 田村正之 - 日本経済新聞】
長澤のコメント→
仕組み債については、金融審議会での議論を経て内閣府令が改正され、昨年より販売手数料相当額(理論価格と取得価額の差額)の顧客への開示が義務化されましたが、投資利回りに影響を及ぼす手数料について、外債についても開示するというのは他商品との比較可能性の確保という点からも、当然の流れかと思います。
金融庁も手数料を安くすればよいと言っているわけではなく、顧客が受けるサービスの対価として納得感があるものかを判断する材料として開示を求めているわけであり、自社の提供するサービスに自信があれば堂々と手数料を開示すればよいのではないかと思われます。
https://newspicks.com/user/6551307/?ref=user_6551307&sidepeek=news_16873282
【金融庁、「仕組み預金」にメス 誤算の金利上昇で解約トラブル相次ぐ - 日本経済新聞】
長澤のコメント→
金利ある世界となり預金獲得が金融機関の重要な施策となっている現在、顧客に満期日が延長され塩漬けになった仕組み預金があり、苦情に至らずとも十分な説明を受けていないと思っていたとしたら、その他の預金を当該銀行に預けたいと思うでしょうか。銀行としては、「寝た子を起こしたくない」という気持ちもあろうかと思いますが、監督指針の改正を待つことなく、苦情となる前に能動的にアプローチをして、市場環境の変化に伴うリスクの顕在化(期間延長の可能性)について丁寧なフォローアップを行うことが顧客との長期的な取引関係構築に資すると思われます。
https://newspicks.com/user/6551307/?id=6551307&ref=user_6551307&sidepeek=news_16835271
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